三菱広報委員会

協力/三菱史料館

   三菱総合研究所に地球温暖化問題のオーソリティーがいる。西村邦幸だ。入社は1984年。エネルギー関連を担当していたが、91年に創設された地球環境研究センター(現環境・エネルギー事業本部)に参画する。
「センター設立の背景には、今後の社会的課題を見据えた際、地球規模の環境問題が大きくなるだろうという認識があった。その中心は、地球温暖化問題。背景には、エネルギー問題。端的に言えば、石炭・石油を燃やして CO2が発生することが課題。つまり、地球温暖化問題とエネルギーは表裏一体」
   95年には、第1回の気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催。西村はCOP3、いわゆる京都議定書が策定された会議に参加。以降も、10回、COPの会場に足を運ぶ。
「京都議定書ではEU、米国、日本にCO2 の削減目標が定められた(その後、米国は離脱)。一方、途上国はCO2を排出することで経済成長してきた先進国こそCO2を削減すべきと主張し、削減目標を持たなかった。それより、経済援助をしてほしいと。以後、毎年開催されるCOPを傍聴してきたが、この先進国と途上国の溝は、なかなか埋まらない。ただし、実際の会議の場で各国が、どのようなスタンスを取り、発言しているのか。また、関連する企業が行うイベントを見ると、 どの方向を目指しているのかは把握できる。COPへの出席はとても有意義だった」


1997年、京都で開催されたCOP3。京都議定書が採択された


今、そこにある壁

   西村のもとには、エネルギー業界からの講演や、関係省庁から調査や分析依頼が相次ぐようになる。だが、今でも進まない課題があ る。再生可能エネルギーの普及だ。
「ここ数年の間に世界は激変し、エネルギーの大変革期にある。先進国、途上国とも海外では太陽光発電、風力発電が急速に普及。日本は大きく引き離されている。送電線の空き容量の問題などさまざまなことが原因だ。当初、日本の固定価格買い取り制度は価格がかなり高く決められた。そのため市場原理がうまく働かず、太陽光の価格が高止まりしていることも大きい。実は、日本の3メガバンクが世界の再生可能エネルギーの主幹事を務めた実績を金額でみると、世界の1、2、4位を占める。合計で90憶ドル(約1兆円)にのぼる。日本ではなく海外に大きな再生可能エネルギーのビジネスチャンスを見たのだろう。早く官民一体となってエネルギーの大変革期に向けた舵を切らないと、CO2削減に向けて世界との差は遠のくばかり」
   2015年12月、COP21でパリ協定が採択され、途上国にも削減目標が設定された。ただ、17年に米国が離脱を表明している。
「正式に離脱できるのは、早くても20年の大統領選挙の最中。民主党が政権を取れば、おそらく復帰するだろう」(敬称略)