宅配便やコンビニへの納品などに活躍する小型トラックは最も多く使われる運搬用車両。需要が多いだけに優れた次世代車の開発は重要なテーマです。では、どんなトラックが次世代の名に値するでしょうか。
小型トラックは街の中で使われ、人々の生活の近くにあるものなので、「騒音や排ガスは極力抑えなければなりません。そうでないと、お客さまに使っていただけません」と開発の経緯を語るのはパワートレーン開発本部、HEVシステム開発部長の近藤勉(こんどう・つとむ)さん。
「トラックを購入する顧客の環境意識は、10年前とは比べものにならないほど高まっています。ディーゼル車に対する排出ガス規制も、欧米に一歩もひけをとらない厳しいものになってきました。だから、次世代の名に値するトラックとは、まずクリーンでなければなりません」
パワートレーン開発本部
HEVシステム開発部 
部長
近藤勉さん
  パワートレーン開発本部
HEVシステム開発部 
スペシャリスト
本岡明さん
この点を重視した《キャンター エコ ハイブリッド》は粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOχ)のそれぞれに対し、専用の回収・浄化システムを搭載し、小型ディーゼルトラックとしては日本で初めて新長期排出ガス規制の厳しい基準をクリアしました。
「そうはいっても、燃費・維持費を始め、コストパフォーマンスがよくなければ買っていただけません。そして、ドライバーには運転に専念してもらえるように、操作性は徹底して簡単、快適を目指しました」
ところが、燃費の改善は一筋縄ではいかなかったそうです。
「もともとディーゼルエンジンはガソリンエンジンより燃費がいいので、これを改善するのが大変でした」
そこで、小排気量のインタークーラーターボエンジンと低ギヤ比の駆動系を採用し、低速時のトルク不足を解決するための、補助動力としてモーターも使うハイブリッドシステムとしました。
「実はこれに先立って7年間、次世代の究極の低公害車を作るため、ハイブリッドの研究をしてきたことが役立ちましたよ」と語るのは設計にあたったHEVシステム開発部のスペシャリスト、本岡明(もとおか・あきら)さん。ただし、問題はモーターを積むだけでは済みません。
「どういう状況でモーターを動かすかとか、ブレーキ時のエネルギー回生(かいせい)量(発電量)をどう設定するかなど、細かいさじ加減も重要なんです。例えば、回生エネルギーが大きすぎると、制動力が大きくなり、スリップしやすくなりますし」
左前輪の直後に見える白い箱が96個のリチウムイオン電池と管理システム、冷却システムを内蔵した高電圧バッテリーボックス。他の車にぶつけられるなど、万一の可能性も見越して、徹底的に堅牢な設計になっている
パワートレーン開発本部
HEVシステム開発部
主任
ここまで低減に成功!
新短期排出ガス規制(平成15/16年排出ガス規制)に適合した従来のディーゼル車から大幅に改善したうえ、最新車はPM排出量をさらに10%も低減。平成17年からの新長期排出ガス規制を小型ディーゼルトラックとしては初めてクリアした
小型消防車のポンプを駆動するユニットが入っていたわずか110mmの部分に、三菱重工が開発した新型モーターを組み込んだ
また、発電した電力は多数のリチウムイオン電池に蓄えますが、この電池一つ一つの電力残量、電圧や温度などをきちんと管理しないと、電池本来の性能は発揮できませんから、「専用の管理システムを搭載しました。いわば知能を持った電池ですよ」と分析するのはHEVシステム開発部の主任、(やなせ・たかし)さん。この管理システムがあればこそ10年間、走行距離で30万kmもの間、交換不要なバッテリーができたのです。これもコストパフォーマンスの向上にひと役買っています。
ちなみに、操作性を考えて変速システムは5速オートマチック。増え続けている女性ドライバーの熱い視線も集めそうです。人に環境にやさしい《キャンター エコ ハイブリッド》は、地域社会のよき一員として活躍してくれることでしょう。


●プロフィール
一押し太郎(いちおし・たろう)1981年3月3日生まれ。うお座。『マンスリーみつびし』新米記者。
2005年4月号から「わが社の一押し」を担当。まだまだ未熟でドジな面もあるが好奇心とヤル気だけは旺盛。ただ今、恋人募集中。
文字に書けばオートマチックですが、《キャンター エコ ハイブリッド》に搭載されているシステムは、既存のものとは根本的に違います。メカの構造は通常のマニュアル車とまったく同じで、シフト選択とクラッチ操作をコンピューターで制御しているのです。だから、オートマ車の泣き所、燃費も格段に向上しています。燃費がネックになって、トラックにはなかなか普及しなかったオートマですが、《キャンター エコ ハイ ブリッド》の登場でぐんと身近なものになることでしょう。半クラッチの苦手な人にも朗報ですね。
手塩にかけた一台が、かわいくて仕方ない皆さんでしたが、その目は早くも次のテーマを見据えていました。皆さん、頑張ってください