国際社会では環境問題が、国内では少子高齢化が深刻化しています。こうした難問と取り組む企業への投資を、利益の見込めるファンドにすれば、自らの社会的責任をも果たせるだろうと三菱UFJ信託銀行は考えました。
堅苦しく響く言葉ですが社会的責任投資、それがSRIの意味するところ。事業の成長性や収益性といった従来の指標だけでなく、環境問題や法令順守への取り組みなど、企業の社会的な側面も判断基準とする新しい投資スタイルです。
「こうした基準の中に、少子高齢化への取り組みを盛り込んだ個人向け商品がこのSRIファンド、“ファミリー・フレンドリー”です」と話すのはリテール営業推進部の田中真由美(たなか・まゆみ)さん。三菱UFJ投信と共同で、自ら商品開発にあたりました。
「産休や育児・介護休業制度などが充実した企業では、子を産んで育てる気になるでしょう。そんな企業を厳選して投資対象にすれば、少子高齢化の改善に役立つはずです」
リテール営業推進部
営業企画グループ
主任推進役
田中真由美さん
  受託財産企画部
戦略グループ
調査役
菅田理恵さん
「ファミリー・フレンドリー」が
企業に求める評価ポイント
  各種制度の
整備・運用状況
産休、育児、介護休業の制度内容・運用実績・施策の多様性などを評価
多様な労働条件の整備・
運用状況
雇用・就業形態の多様性、時間のゆとりなどを評価
その他の両立対応 仕事と家庭の両立のための独自施策、キャリアサポート、健康や安全への配慮などを評価
社会への支援活動 子育て、介護に関する社会支援活動、学生への支援状況などを評価
日本初の社会責任投資専門の独立系投資顧問会社であるグッドバンカー社の調査を元に、このような条件をどれだけ満たしているか独自の手法で分析していきます


従業員や従業員の家庭を大切にする企業には優れた人材が集まるもの。長期的にはそれが業績に好影響を及ぼすでしょう。だから、こうした企業への投資は、顧客に利益をもたらす可能性が高いといえます。
「とりわけ女性にとって重要なテーマを商品の目的に設定したことにより、お客さまの中に今までより若く、働く女性が目立つのも特徴です」
子育てを支援したい国民の意思を取り込む仕組みそのものをデザインした個人向けSRIファンド、“ファミリー・フレンドリー”。その着眼のよさは高く評価され、2005年度の「グッドデザイン賞(新領域デザイン部門)」を受賞。
「投資という形をとった支援の輪が広がれば、きっと世の中はいい方向に変わっていくと思います。 “ファミリー・フレンドリー”がそのきっかけになればうれしいですね」
「ファミリー・フレンドリー」の基準価額推移
※1純資産総額 ※2基準価額 ※3基準価額(分配金再投資 課税前) ※4参考指数(TOPIX 東証株価指数)
家庭を大切にする企業への投資は、一般優良企業への投資よりも好リターンが得られました
一方、同じSRIファンドでも三菱UFJ信託銀行が企業年金を顧客とするものも2006年6月にスタートしました。
こちらは数あるCSR活動のうち、将来的に業績にプラスに寄与するであろうCSR活動に取り組む企業を厳選。さらに、その企業が成長局面にあるかどうかなどを見極め、投資対象を絞り込みます。
「最重視するのは投資対象の経済的価値です。単に善良な企業を探しているわけではありません。けれど、ささいな不祥事でもあれば株価が大きく下落する時代です。ですから、例えばガバナンス(企業統治)への対応もしっかり見ます、という意味なんです」
と説明するのは受託財産企画部の菅田理恵(すがた・りえ)さん。
また、ひと口に社会や環境への貢献といっても、それが企業業績の向上に寄与することを重んじます。
「例えば、省エネルギーの新商品を開発し、社会に広く受け入れられれば、社会や環境へ貢献できると同時に、企業業績の向上も期待できるわけです。このSRIファンドはこうした取り組みを評価いたします」
これまでの運用実績では2006年末時点で東証株価指数(TOPIX)を2.6%ほど上回っています。
 
企業業績への影響の大きいCSR活動に着目
本業の業績向上に結びつく取り組みを非財務要素としてとらえ、企業への投資判断に活用します
国連「責任投資原則」への署名
三菱UFJ信託銀行上原社長(右)と
英国雇用年金省Plaskitt政務次官
(写真提供:国連環境計画・金融イニシアティブ、
撮影:J・Pettina氏)


●プロフィール
一押し太郎(いちおし・たろう)1981年3月3日生まれ。うお座。『マンスリーみつびし』新米記者。
2005年4月号から「わが社の一押し」を担当。まだまだ未熟でドジな面もあるが好奇心とヤル気だけは旺盛。ただ今、恋人募集中。
SRIファンドの商品化を進めてきた三菱UFJ信託銀行ですが、昨年5月には国連事務総長によるイニシアティブ「責任投資原則」に署名(上の写真)。海外先進国の株式市場では、持続可能な社会の実現を目指すSRIが存在感を増しつつあります。そして、日本の市場もこの流れに合流し、SRIの投資が拡大していくでしょう。今はまだ珍しく見えるSRIファンドですが、海外では一投資スタイルとして既に認識されつつあります。どんな企業に投資してでも、もうかりさえすればよいという時代は終わったのですね。
右端は取材の準備をしていただいた経営企画部広報室の小林麻貴さん。それにしてもすてきで知的な女性の多いことには驚かされました