全国の工場で使われずに捨てられてしまう排熱という名のエネルギーを回収、生産活動に利用できる蒸気や温水を製造するシステムが完成した。これが普及すれば二酸化炭素の排出量削減にも大きな力となるだろう。
例えば、食品工場や化学工場では、思いのほか大量の蒸気や温水を殺菌、洗浄、加熱の工程で使います。けれど、それはボイラーで重油を燃やして生み出したもの。このままでは二酸化炭素の排出を減らせません。
「そこで、使用後の温度の下がった温水から排熱を回収し、化石燃料に頼らず電力で、利用価値の高い高温に戻すのがこのヒートポンプシステム『Mr.エコ スチーム』です」と口火を切ったのはエンジニアリングカンパニー企画管理部 次長の坂口正友(さかぐち・まさとも)さん。
ヒートポンプシステムと言われてもぴんと来ませんが、「熱を汲み上げるポンプだと思ってください。身近な例では暖房運転時のエアコンがそうです。
エンジニアリングカンパニー
企画管理部 次長
坂口正友さん
  エンジニアリングカンパニー
環境試験・冷熱ユニット
岩瀬卓光さん
冬のエアコンは冷たい外気から、わずかな熱を取り込み、圧縮機にかけることで高温・高圧を生み出します。対象が水でも熱でも、汲み上げることに変わりはありませんから、ポンプと呼んでいるんですよ」と解説してくれたのが環境試験・冷熱ユニットの課長代理、岩瀬卓光(いわせ・たかみつ)さんだ。
ということは、少々大がかりなエアコンを工場に持ち込んで、暖房運転をするようなイメージが近いでしょうか。でも、エアコンの圧縮機を動かすには電気を消費します。それで省エネになるのでしょうか?
「システムを動かすために必要な電力(入力)を分母とし、これに対しどれだけの熱エネルギー(出力)が見込めるかを分子にしたものを成績係数(下の図中のCOP)と呼びますが、『Mr.エコ スチーム』はこの数値が6・7と好成績を挙げています」
ちなみに一般的なエアコンの成績係数は約4、投入したエネルギーの数倍大きいエネルギーを作り出していたなんて。ふむふむ、実はエアコンとは非常に効率のいい空調機器だったのですね。
「ところが、蒸気や温水を加熱する熱媒体は、高温にすると他の物質と同様に圧力が高まります。高温・高圧に耐えるシステムには堅牢性が欠かせず、どうしてもコストを押し上げます」と技術的困難を振り返るのが技術センター研究開発部の部長、平野功(ひらの・いさお)さんだ。
そこで、今までエアコンや冷凍サイクルに使用例のない、新しい熱媒体HFCを採用。同時に加熱効果を向上させた熱交換器を開発し、ヒートポンプシステムとしては前例のないハイパワーを実現しました。
技術センター
研究開発部
プラント研究開発課
二宮達さん
技術センター
研究開発部 部長
平野功さん
「高温下でも高圧にならない熱媒体に出合えたおかげで、システム全体をリーズナブルな予算で構築できます」と胸を張るのは技術センター研究開発部 プラント研究開発課の主任、二宮達(にのみや・とおる)さんだ。「しかも、エネルギー効率の高い『Mr.エコ スチーム』はボイラーなどの燃焼系装置に比べ、同じだけの熱量を生み出しても、二酸化炭素の排出はわずか20%に過ぎず、地球温暖化への影響がきわめて小さいシステムに仕上がりました」
いいことずくめのこの画期的ヒートポンプシステムは今、開発者の予想を超えた業種、産業から反響と問い合わせが寄せられているそうです。


●プロフィール
一押し太郎(いちおし・たろう)1981年3月3日生まれ。うお座。『マンスリーみつびし』新米記者。
2005年4月号から「わが社の一押し」を担当。まだまだ未熟でドジな面もあるが好奇心とヤル気だけは旺盛。ただ今、恋人募集中。
今まで捨てられていた工場の排熱から高温を生み出す魔法を現実化した東洋製作所にとって、この『Mr.エコ スチーム』は前例のない商品です。というのも東洋製作所は本来、冷やすことが専門。昭和27年の会社設立時には、早くも冷凍機ユニットの製造と設置を始めていましたし、昭和36年には空調機材(今でいうエアコン)の生産を開始しています。けれど、1台のエアコンが同じ原理とメカニズムを反転させることで暖房と冷房をこなすように、この魔法使いは温めにも際立った手腕を見せてくれたのです。拍手!
『Mr.エコ スチーム』の進化・発展に向け新たな一歩を踏み出す一行の右端は、取材の準備をしていただいた総務部次長の佐藤信介さん。お世話になりました