虫歯がないのは当たり前。できればスターのようにいつまでも美しい、白く輝く歯でありたいもの。それにはホワイトニングと呼ばれる施術が効果的だが、一昨年、画期的に安全性の高い製品が登場した。
ホワイトニング先進国は言わずと知れたアメリカ。歯を削り、人工物で覆うなどの処置も行われていますが、これでは歯が傷んでしまいます。そこで、現在は日本でも過酸化水素を使って漂白する施術が主流になっていますが、
「従来のホワイトニングは20〜35%の過酸化水素で歯の着色を落とすものでしたが、これほど高濃度だと表面のエナメル質を傷つけたり、施術中および施術後に知覚過敏を起こすことがありました」
と語るのは機能化学品カンパニー、企画開発部・機能製品グループの主査、長隆博(ちょう・たかひろ)さん。パルプ漂白用の過酸化水素を10年以上も研究してきた専門家です。
「けれど、ここに二酸化チタンという光触媒を加えると、比較にならないほどの低濃度(1、2液を混合後
機能化学品カンパニー
企画開発部
機能製品グループ  主査
長 隆博さん
東京研究所
主任研究員
倉田浩志さん
3.5%)で、今までと同等以上の漂白効果を得られることが分かりました(下の図版参照)。このふたつの優れた物質をうまく組み合わせることによって、歯科用漂白材『ピレーネ』は誕生したんです」
数字だけではぴんと来ないでしょうが、歯科医が口の中に使用する消毒用のオキシドール(過酸化水素水)が約3%ですから、いかに低濃度かお分かりいただけるでしょう。おかげで、
「高濃度だと歯茎全体を保護剤で厳重にガードしなければなりませんが、『ピレーネ』は簡単な歯肉保護剤を塗布するだけ。施術希望者だけでなく、歯科医の負担も大幅に軽減できました」
と東京研究所の主任研究員、倉田浩志(くらた・ひろし)さんはちょっと胸を張りました。
前例のない製品の開発には定款の変更まで必要だった
こう書くと、開発がすんなり進んだように聞こえますが、実際は、
「最適な二酸化チタンの選定が難関でした。結晶の形、粒状性などがほんの少し違うだけで、最終製品の能力に差が出てきてしまうんです」
また、今までとはまったく異なる顧客=歯科医と協力しあっていくのも初めての経験でしたし、
「営業や販売促進の際には、薬事法に配慮しなければなりません。そもそもこの製品を開発するにあたり、会社の定款から書き換えなければならなかったそうですよ」
と驚くべき事実を語ってくれたのは大阪支店、無機化学品事業部営業部の東秀右(あづま・しゅうすけ)さん。3年ぶりに戻った営業職での担当は、こんな前例のない商品でした。
大阪支店
無機化学品事業部
営業部
東 秀右さん
東京研究所
熊谷ユキさん
「それでも、臨床試験にて知覚過敏の発生はゼロであったことは素晴らしいこと。歯科医の先生方からも、ずいぶん反響が寄せられているんですよ」
と語るのはただひとり、歯科医助手を経験している東京研究所の熊谷ユキ(くまがい・ゆき)さん。
これまで主に企業向け製品を開発、供給してきた会社です。一般消費者には縁遠く感じられるかもしれませんが、おなじみの脱酸素剤『エージレス』は三菱ガス化学の自信作。このたびの『ピレーネ』も、そうとは知らずに大勢の人がお世話になる日も、もうすぐやって来そうです。


●プロフィール
一押し太郎(いちおし・たろう)1981年3月3日生まれ。うお座。『マンスリーみつびし』新米記者。
2005年4月号から「わが社の一押し」を担当。まだまだ未熟でドジな面もあるが好奇心とヤル気だけは旺盛。ただ今、恋人募集中。
上手に使えば効果抜群の過酸化水素なのに、ここまで低濃度にこだわった理由は、安全性の問題でした。まず、知覚過敏の心配を少なくするよう低濃度の過酸化水素にすること。そして、歯へのダメージを抑えるために、ほぼ中性にすること。こうすることで施術を受ける人の負担が軽減します。低濃度なら歯肉保護のためのセットアップも短時間で済み、より多くの希望者に施術ができますから、医院経営にもやさしい製品といえます。短時間になることは、もちろん施術を希望する人にも朗報ですね。
紅一点の熊谷さんは入社2年目。学生時代の専門は光触媒で、アルバイトで歯科助手をやっていたとか。『ピレーネ』のために入社したようなものですね