開発を担当した深井さん。「これまで、水をはじく素材を作ってきたので、保水性のある素材の開発は初めて」
同じく開発を担当した安田さん。「屋上緑化に用いれば、建物表面温度上昇を抑えることもできます」
営業を担当する浦橋さん。「この商品は、丸洗いできます。カビが生えにくいタイプのものも近日発売予定です」
化学製品や電子材料などを作ってきた三菱ガス化学が、新たに生産を始めたのは、なんと癒し系の園芸用樹脂。廃材から生まれた、優れた性質をもつ樹脂です。
花や観葉植物を育てるのに苦労したことはありませんか? 水をあげるのを忘れたり逆にあげすぎてダメにしてしまったなんていうこともあるかもしれません。それに、面倒という方もいらっしゃるかもしれません。もしも、もっと手軽に、植物を長く楽しめる方法があれば…。
それが、あるんです。三菱ガス化学の『メモリーグリーンクリスタル』という園芸用樹脂土壌材がそれ。詳しくお話を伺うため、東京・葛飾区にある工場を訪ねました。
この工場では、もともと電子材料などを生産していました。その電子材料のひとつを生産する過程で、廃棄物が出ていたそうです。それを何かに使えないかそう思ったのが、この商品が生まれるきっかけだったそうです。
「材質はアルミシートに親水性の樹脂をつけたもの。この樹脂の親水性を生かせば、地球温暖化防止のための緑化に役立つものができるのではないか、とひらめいたんです」と、環境技術部長・安田英紀(やすだ・ひでき)さん。
毎日の水やりが不要
卓上用の小さな観葉植物も、こうして飾れば癒し度アップ。
では、具体的にどんな商品なのでしょうか。
「土や軽石と混ぜて植物の土壌として使用したり、グラスなどにそのまま入れてハイドロカルチャー(水耕栽培)の培地として使用します。非常に保水性の高い樹脂なので、水分を長く保つことができます。例えば、屋外の緑地の場合、毎日水をやらなくてはいけませんね。ところが、これを使うと、適度に雨が降ればその水分を保つことができるため、ほとんど水やりをしなくても大丈夫なんです」と、環境技術部の深井孝彰(ふかい・たかあき)さん。
公共施設やビルの屋上などの緑地にはまさにうってつけ。だから、緑化計画にも一役買うというわけです。実際に、東京有楽町にある交通会館の雨水の当たるところが少ないテラスや、丸の内歩道のプランター緑地などに、この商品が使われています。
もちろん、家庭でガーデニングを楽しむ際にも便利。実験では、鉢植えの植物に1カ月半、水をやらずに放置しても、イキイキとした状態が続いたとか。
インテリア性も高い
工場内では、『メモリーグリーンクリスタル』と観葉植物を組み合わせた家庭用の完成品も作っている。園芸店、雑貨店などで販売中。
では、この樹脂がそんなに水分を保てるワケとは?
「以前にも、他メーカーから同様の商品が出ていました。それには、おむつや生理用品に使われるプラスチック樹脂が用いられていたのですが、その樹脂は土中のカルシウムや塩分に触れると水を吐き出して縮むという難点がありました。ところが、『メモリーグリーンクリスタル』は、非イオン性ポリマーなので、塩分・カルシウムに触れても水を吐き出すことはありません。これは、樹脂の構造上の違いによるものです。また、吸水速度にも優れています」(深井さん)
逆に、一定の水分を保つという特性もあるため、水をやりすぎて根腐れを起こす心配もありません。
「非常に軽いので、マンションのベランダでのガーデニングにもおすすめです。また、ハイドロカルチャー用の商品は、全12色の展開。単品でもお楽しみいただけますし、複数色を組み合わせて楽しむこともできます。病院やレストランでも、空間が明るくなるとご好評をいただいています」とは、エムジーシーエコファシリィテイー(株)の浦橋亘(うらはし・わたる)さん。カラフルな色展開で、部屋の雰囲気や気分に合わせて選ぶこともできます。水は、少なくなったら足すだけと、本当に手軽。この商品の登場で、グリーンの楽しみ方のバリエーションが増えていきそうです。
まりんの取材日誌
社名から、ガスに関するものを作っている会社だろうというイメージを持っていましたが、実際には違っていました。三菱ガス化学は、コンピュータの部品や、漂白剤・塗料などの原料など、さまざまな素材を作っている会社です。『メモリーグリーンクリスタル』のような、癒し系の商品、そして直接消費者が手に取る商品を開発したのはこれが初めてということで、いろいろとご苦労もあったようです。工場内には、これを使った緑地や鉢植えがあり、社員の方々を和ませているようでした。リサイクル、環境に配慮する、というのは、世界の課題。この商品は、その両方に応えています。