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わが社の一押しシリーズ
vol.35 三菱レイヨン 「ベントクール」


通気性をコントロールする 画期的な繊維の登場

今回の訪問先は、三菱レイヨン。なんでも乾燥状態では縮み、湿潤状態だと瞬時に伸びる繊維を開発したそうです。その性質から“動く繊維”とも呼ばれているとか。いったい『ベントクール』とは何物なんでしょうか。

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「自在に伸縮するという発想のコンセプトから、実際の製品化まで2年以上かかった」と柳田さん


ベントは、通気を意味するventilation。クールは涼しい。今回はこのあたりに開発のヒントがありそうです。

「いいところに気づきましたね」

と褒めてくださったのが、三菱レイヨン・テキスタイル取締役加工技術部長の柳田雅幸(やなぎだ・まさゆき)さん。発想のスタートは、数年前にさかのぼると言います。

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「1本の糸にできた時ですね、これで実用化のメドが立ったと感じたのは」と話す黒田さん

「暑くなると、人は衣服の胸元を開けたり、ボタンを外します。また、衣服を脱いでしまう人もいるでしょう。これを人為的ではなく、衣服の繊維自身が自動的に行ってくれないか。そこが、発想のスタートになっています。肌と衣服の間を気流ととらえ、その気流を衣服の素材すなわち繊維でコントロールし、涼しくできないか。それを体現してくれたのが、『ベントクール』なのです」

肌に汗をかいたり、湿気を感じると『ベントクール』の編目が開く。逆に乾燥すれば、瞬時にその編目が小さくなる。なるほど、“動く繊維”と呼ばれる由縁です。そんな夢のような繊維を、どうやって開発したんでしょう。

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三菱レイヨン富山事業所の副主任研究員・黒田久(くろだ・ひさし)さんに聞きました。 「『ベントクール』は2種類のアセテートの糸を接合させた複合繊維。そのふたつの糸を1本の糸にするのが、最も苦労した点です」

さらに出来上がった複合繊維に特殊な化学処理を施して、片側は水分を吸収しやすい性質に改善。これで、湿気に合わせて伸びたり縮んだりする特性を持たせたそうです。でも、越えなければならない山は、いっぱいあったという黒田さん。

「『ベントクール』だけで布にすると、伸縮が特長だけにサイズが変わってしまう。汗をかけばLサイズ、乾けばSサイズでは困ります。そこで、水分には伸縮しないポリエステルを使い、『ベントクール』の編目にポリエステルを組み込ませたのです。いわばポリエステルは『ベントクール』の制御役になっているのです」

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『ベントクール』が肌に近い側に編み込んである。その『ベントクール』の編目にポリエステルが絡み、制御役を果たす。左図の乾燥時では、『ベントクール』の繊維が下の写真のように、コイル状に縮み、その結果、編目の穴が小さくなり熱を逃がさない。右図の発汗多湿時では、汗もしくは湿気に素早く反応した『ベントクール』の繊維が、下の写真のように真っすぐ伸びる。その結果、編目が開き、熱を外に出す。こうした伸縮を、『ベントクール』は何度となく繰り返す(左のイラスト・写真提供/三菱レイヨン)

*アセテート : 酢酸(さくさん)セルロースを主成分とした半合成繊維。光沢、発色性が良く、柔らかい

用途を拡大し、 いずれ世界市場へ

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三菱レイヨン・テキスタイル、機能テキスタイルグループのリーダーを務める宇野さん

通気性を繊維自身がコントロールしてくれるとなれば、その用途は無限にあるように思えるけど…?

「まず、最適なのはスポーツウエアです。実際、ミズノ(株)さんから『ダイナミックエアリー』というブランド名で製品化されています」

というのは、三菱レイヨン・テキスタイルの営業課長・宇野隆治(うの・りゅうじ)さん。さらに、肌着メーカーのグンゼ(株)さんや(株)ワコールさんからも『ベントクール』を使用した製品が続々登場しているとか。

「今後の展開としては、ユニホーム。たとえば、ファストフード店での制服などです。また、婦人アウターへの利用もスタートします」

でも、ひとつ心配なのは、スポーツウエアは素材も大事だけど色とか見た目も大事。そのへんのところは…?

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写真は、上からグンゼの紳士肌着『クールブレス』、ミズノの『スーパースター』と『ミズノ ゴルフ』。モデルは、三菱レイヨン・テキスタイルの北中繭奈(きたなか・まゆな)さん

「まったく問題ありませんよ。『ベントクール』は、どのような色にも染まりますし、通常の使用では色落ちすることはありません。また、紫外線にも強い。それに何度、洗濯されても繊維の伸縮という『ベントクール』の特長が失われることはありません。これらは、製品化にあたり完全にクリアされています」

『ベントクール』の太さ、あるいはポリエステルを編目にどう組み込ませるかで、何十種類の布地が生産可能だとか。その用途は衣服だけではありません。シューズなどの副資材関係にも応用できそうです。

前出の柳田さんが、熱を込めて語ってくれました。

「今は国内市場だけにとどまってますが、いずれ世界市場に打って出ます。快適なウエアの需要は、日本に限りませんからね」

ボクもさっそく、スポーツウエアを買ってみようかなあ。
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(問)三菱レイヨン広報