image 三菱史紀行シリーズ
行ってみよう、見てみよう。
vol.01 高知県・安芸


彌太郎を育んだ安芸は、冬春なす、ゆず、そして酒どころ

土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線に乗った。全国的にローカル線が廃止される中で、37年かけて平成14年に敢然とデビューした。沿線の20の駅には、漫画家のやなせたかしが駅それぞれのキャラクターを描く。あそび感覚の鉄道だ。アンパンマン列車があればタイガース電車もある。船のようにオープンデッキの車両もある。海と山の間の狭い土地を無理やり走る鉄道なのでほとんどが高架。車窓には太平洋がきらきら輝いてまぶしい。

30分も走ると、山側の視界が広がってビニールハウスがやたらに多くなる。まもなく安芸だ。阪神タイガースのキャンプ地。最近は“冬春なす日本一”の町として有名だ。全国の3割は高知県の産。そのほぼ半分は安芸市からだ。安芸市の職員の名刺には、“キラリン・なすびくん”のイラストが入っている。
岩崎彌太郎生家
岩崎彌太郎生家
土佐くろしお鉄道・ごめん・なはり線・安芸駅より車で10分前後。
年中無休・見学無料。安芸市井ノ口
問い合わせ先:安芸市商工観光課 TEL:0887-35-1011
地図
[アクセス]
高知・龍馬空港までの所要時間は、東京から約1時間10分、大阪から約40分、名古屋から約50分、福岡から約1時間20分。龍馬空港から安芸市までは車で約40分。高知市から、ごめん・なはり線を利用した場合、安芸市までは約50分
「安芸市は冬春なす生産日本一。安芸市に来たらなすを食べてね」 キラリン・なすびくん
今なお、若き彌太郎の志が息づく土地

ごめん・なはり線
ごめん・なはり線
高知駅〜南半利駅まで約42・7kmを走る。1日に2本ある特別車両ではオープンデッキで絶景を満喫できる
安芸市の西北にあるのが妙見山。ふもとの井ノ口地区に岩崎彌太郎の生家がある。かやぶき屋根の家と白壁の蔵。記念館があるわけではない。昔の家が、あったままの姿で今もある。それがいい。少年時代の彌太郎を想起させる。

あたりはタバコ畑が多かったが、最近は、なすのビニールハウスが増えている。「ハウスの中って、ほら、いろんなものがいるんですよ。受粉はね、ミツバチやマルハナバチにやってもらいます。害虫は粘着板を使ったり天敵を入れて駆除します。いうたら、安芸のなすは農薬をほとんど使わないってことなんです」と説明する井ノ口の横山幾夫さん。なすは煮て良し、焼いて良し、漬物にして良し。食卓の名バイプレーヤーである。「安芸ではなすが主役になります。なすのたたき、なすのグラタン。なすカツ、麻婆なす、なすカレー。なすのゼリーもおいしいですよ」と奥さんが笑う。

夜は、国道裏の小料理屋で、安芸市長の松本憲治さんと旧交をあたためる。曲がり角の地方自治だがこの人はめげない。ご多分にもれず若者は高校を出ると都会に出てしまう者が多いが、「若者には、彌太郎さんが故郷を出たときのように志を持てと言ってやります」。

「へい、おまちどう」。まずは新鮮な海の幸だ。酒は文句なく辛口がいい。

「彼らはいずれ戻ってきます。そういう人たちのために市が低価格の宅地を造りました。ざっと70坪で300万円。59区画完売です」。からの徳利が並ぶ。安芸の夜は更ける。「いかがですか、三菱の方も。彌太郎さんの故郷でシルバーライフを楽しむなんていいじゃないですか」
魚里(うをり) 有光酒造場 彌太郎が生まれ育った生家の内部
魚里(うをり) 土居廓中 星神社
魚里(うをり)
季節の素材へのこだわりから、毎日の品書きは仕入れによって決まる。その日の品目と予算の事前確認を。
日祝休み 営業時間17〜22時 
安芸市本町1-14-5 
TEL:0887-34-3334
上・有光酒造場
出来上がった麹を自然放冷。
安芸市赤野甲38-1
TEL:0887-33-2117

下・武家屋敷が安芸城跡を囲う一帯は「土居廓中」と呼ばれ、藩政時代のたたずまいを今に伝える
上・彌太郎が生まれ育った生家の内部

下・安政元年(1854)、江戸遊学を前に彌太郎は、妙見山にある星神社に参拝し、大きな志と強い意志を胸に、江戸に旅立ったという
成田×雄太
取材旅行 道中記
プロフィール 成田誠一(なりた・せいいち)
(財)三菱経済研究所常務理事。専門は三菱史。これまで本誌に『岩崎彌太郎物語』『岩崎彌之助物語』などを連載。朝比奈雄太(あさひな・ゆうた)。フットワーク抜群のフリーランスカメラマン
土佐湾の潮風とゆず畑、今宵は純米吟醸を
成田
雄太、安芸川の上流はゆずの里だ。
雄太
ゆず、ですか?
成田
民家の周りも山の斜面も、ゆず、ゆず、ゆず。海と山間部の間で生じる寒暖の差が、独特の酸味と香りを作りだすというわけだ。
雄太
なるほど。
成田
安芸の米『吟の夢』で造った純米吟醸安芸虎『入河内』も、
うまいぞ。
雄太
いいですね、今晩。
成田
安芸は、戦国の世を生き抜いた山内一豊の家老・五藤為重が治めた土地でもある。
雄太
そういえば、地元の人が4月16日放送のNHK大河ドラマ『功名が辻』で、安芸が紹介されるって言ってました。
文・ 三菱史料館 成 田 誠 一

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