image 三菱史紀行シリーズ
行ってみよう、見てみよう。
vol.04 岡山県・倉敷


白壁に柳がゆれる情緒あふれる美観地区

倉敷川に沿って白壁の古い街並み、柳の緑に映える、ギリシャ神殿風の大原美術館。エル・グレコの「受胎告知」を始め、ゴーギャンやモネほかの傑作が展示されている。

この美術館を作った大原孫三郎は倉敷紡績の創業者で、一般市民も使える倉紡中央病院(現倉敷中央病院)や働く者のための夜学・倉敷商業補修学校(現倉敷商業高校)などを創設、さらにはクリスチャンの石井十次が営む岡山孤児院への支援を惜しまなかった。

倉敷紡績の工場跡地は、ホテルや博物館のあるアイビー・スクエアとして再開発された。古い部分も生かされており、ツタのからまるホテルは落ち着く。外に出て、すぐ近くの居酒屋「新粋」。瀬戸内海の幸を味わいながら、サラリーマンやOL、観光客がわいわいがやがや。ここだけの話、山田錦大吟醸「吟粋」は絶品ですぞ。お向かいの森田酒造の限定品である。

倉敷の南部に広がる水島地区は三菱重工の水島航空機製作所だった。戦後は航空機用のジュラルミンを活用して、鍋や釜を作ることから再出発した。その後、オート三輪「みずしま」を経て、軽四輪を生産するようになる。労働組合水島支部の執行委員長だった三宅将善(しょうぜん)さんは、「昭和28年(1953)に15歳で養成工として三菱に入ったときは、メンソレータムの容器を100万個作った話をよく聞かされました」と、当時を回想する。「まあ、大変な時代でしたね。星野仙一のお母さんは三菱の寮母をやって彼を倉敷商業に通わせたそうですよ」。

昭和30年代には三菱石油(現新日本石油)の製油所を中核にした石油コンビナートが建設され、川崎製鉄(現JFE)の鉄鋼コンビナートも出来た。三菱系では、三菱化学や三菱ガス化学の工場もある。
水島コンビナートの全景
鷲羽山から望む水島コンビナートの全景
倉敷美観地区
倉敷美観地区
白壁と柳のコントラストが美しい。渡し舟もまた情緒豊か
地図 [アクセス]
JR東海道・山陽新幹線のぞみを利用して、東京−岡山間3時間12分、岡山−倉敷間はJR山陽本線で約15分。山陽自動車道を利用する場合は、倉敷ICを降りて、倉敷市街方面へ。美観地区までの所要時間は約15分
倉敷アイビースクエア
左上・レンガ造りと緑が独特の雰囲気を奏でる
倉敷アイビースクエア
倉敷市本町7-2
TEL:086-422-0011

右上・西洋と東洋の出会いと文化の源流が漂う
大原美術館 
倉敷市中央1-1-15
TEL:086-422-0005

右下・地元の人々や観光客でにぎわう
居酒屋「新粋」
倉敷市本町11-35
TEL:086-422-5171
大原美術館
居酒屋「新粋」
クラシックカーの名車“三菱500”
昭和45年に三菱自動車になった水島製作所は、現在は「i(アイ)」などの生産に追われる。所長の松本伸(おさむ)さんは昭和47年に入社して以来ずっと生産の現場に生きてきた。何でも話せる気さくな人柄が水島の従業員をひきつけてやまない。

児島港に近い下津井地区のレストラン「ワーゲン」、ハンバーグのうまい店。オーナーは片山章一さん。名刺には“三菱500オーナーズクラブ会長”とある。三菱500は全国で19台が現役で、昭和37年のものを2台持っている片山さんは「メーカー自身、もっともっと誇っていい名車ですよ」と言い切る。三菱500オーナーズクラブは、この秋、安芸市の岩崎彌太郎の生家までのパレードを企画しているという。
三菱500
i 上・片山さん所有の三菱500。
レストラン「ワーゲン」は
倉敷市児島小川4-3-8 
TEL:086-472-1480

左・ “i”は三菱自動車水島製作所で現在6時30分am〜翌日2時45分amまで2交代で生産されている
関連三菱史 1943 三菱重工水島航空機製作所発足
1961 三菱石油(現新日本石油)水島製油所竣工
1945 水島機器製作所に
1970 三菱自動車水島自動車製作所に
成田×雄太
取材旅行 道中記
プロフィール 成田誠一(なりた・せいいち)
(財)三菱経済研究所常務理事。専門は三菱史。これまで本誌に『岩崎彌太郎物語』『岩崎彌之助物語』などを連載。朝比奈雄太(あさひな・ゆうた)。フットワーク抜群のフリーランスカメラマン
ノスタルジーと未来志向が同居する旅
成田
三菱自動車の展示ルームに“みずしま”が“ i ”と並んでいたのが、なかなか良かった。
雄太
戦後復興の象徴だったんですね、オート三輪って。
成田
当時は、マツダとか、くろがねとか、ダイハツとか、いろいろな車が、町にあふれていた…。
雄太
でも成田さん、ボクとしては、「ノスタルジーより、未来志向で“ i ”に愛を!」という気持ちです。
成田
そうか、それを聞いたら三菱自動車水島製作所の皆さんはうれしいだろうな。日も暮れてきたな。そろそろ居酒屋の時間だ。
雄太
風に柳がゆれます。情緒たっぷりで行きましょう。
成田×雄太
文・ 三菱史料館 成 田 誠 一