幕府の学問所湯島聖堂があったり、春日局の墓のある麟祥院があったり、湯島には江戸時代の風情がある。“湯島通れば思い出す”新派の舞台や歌謡曲、映画でおなじみの明治時代の風情もある。昔から粋な街である。お屋敷がある。料亭がある。和服の女性とすれ違う。男坂、女坂、妻恋坂…。白梅の咲くころには合格祈願の受験生が湯島天神に詣でる。
春日通の北にある広大な屋敷が旧岩崎邸。江戸時代は高田藩の屋敷だったが、明治11年(1878)に岩崎彌太郎が買い取った。現在ある洋館は、三代目三菱社長の久彌が29年にジョサイア・コンドルの設計で建てた。なんと木造だ。「久彌さまはペンシルベニア大学に5年あまり留学された方ですので、アメリカ東部のカントリーハウスのイメージを求められたのかもしれませんね」と、管理事務所の日野さんはいう。関東大震災でも東京空襲でも、緑に囲まれたここだけは焼けず、近隣の人たちの避難場所になった。戦後岩崎家の手を離れ、敷地は往時の3分の1になった。現在は東京都の「旧岩崎邸庭園」として一般に公開されている。
その岩崎邸の北側の無縁坂を登りきって、左に曲がった所に三菱史料館がある。大きなケヤキの木に囲まれた茶色の3階建て。三菱の創業以来の史料が保管、展示されている。彌太郎が母に書いた毛筆の手紙、三菱が丸の内を購入した際の領収書…。
湯島の夜。居酒屋なら天神下の「シンスケ」で決まり。古き良き時代、帝大や芸大の学生には出世払いで飲ませたともいう伝説の店。お客はちょっと気取ったサラリーマンやキャリアウーマンが多いが、土地柄、学者や芸人、それに岩崎家ご用達だったことから三菱関係者も少なくない。ネギヌタやイワシの岩石揚げなどの小料理は、秋田から取り寄せた樽酒「両関」にぴったり。ねじり鉢巻の亭主矢部さんの人柄も含めて、小粋でいなせな店という表現がぴったりの店だ。
おすすめレストランは「ビストロ・タントマリー」。天神様の鳥居に近い、路地裏という感じの静かな一角。小さなフレンチレストラン。料理はプロバンス風。野菜が多く、オリーブオイルやトマトの味が絶妙。メニューを見て迷ったら食前酒を飲みながらシェフの赤城さんにアドバイスを求めよう。アットホームな雰囲気。ついつい長居してしまう。
ケーキならビストロの姉妹店「アトリエ・タントマリー」のチーズケーキ。最近丸の内オアゾにも出店ができた。和菓子なら「つる瀬」の“ふく梅”
。なんと小さな梅干しがちょこんとのっている。熱い煎茶があう。「ゆしま花月」のかりんとうは上白糖の飴をからめたもの。歯ごたえも快適でやみつきになる。みんなみんなひっくるめて、味な街です湯島は。 |
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旧岩崎邸庭園 一般入場料400円。年末年始は休園。
台東区池之端1-3-45 TEL:03・3823・8340 |
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| [アクセス]旧岩崎邸庭園へは地下鉄千代田線・湯島C1出口より3分、地下鉄銀座線・上野広小路G15出口または地下鉄大江戸線・上野御徒町E9出口より10分、JR山手線・御徒町より徒歩15分。三菱史料館は旧岩崎邸庭園の左手。地下鉄千代田線・湯島C1出口より6分 |
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名物・ゆしま花月のかりんとう
風呂敷包み680円
(200g/税込み)
文京区湯島3-39-6
TEL:03・3831・9762 |
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三菱史料館
三菱創業以来の歴史を分かりやすく解説してくれる 土日祝と年末年始は休館。文京区湯島4-10-14 TEL:03・5802・8670 |
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湯島天神
創建は古く南北朝時代。
祭られている菅原道真は
学問の神様。
文京区湯島3-30-1
TEL:03・3836・0753 |
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| 旧岩崎邸洋館のベランダから望む庭。東京の町にもまだ静かな時が流れる場所がある。ときには都会の雑踏を離れ、庭園を訪れてみるのもいい |
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| 1874 |
岩崎彌太郎、三菱商会本拠東京移転に伴い湯島梅園町に居住 |
| 1878 |
彌太郎、茅町本邸を購入 |
| 1896 |
岩崎久彌、ジョサイア・コンドルの設計で洋館新築 |
| 1945 |
GHQ接収 |
| 1953 |
政府の所有に |
| 1961 |
洋館、国の重要文化財 |
| 2001 |
東京都の管理となり「旧岩崎邸庭園」として一般公開 |
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