かつて小樽は北海道の玄関であり経済の中心だった。金融機関が軒を並べ「北のウォール街」ともいわれた。今は街のあちこちに残る古い建物が過ぎし日の栄華をしのばせる。運河沿いの石造りの倉庫群は、夜になるとガス灯がともり、まるで映画の回想シーンのようだ。
旧日本郵船小樽支店の建物は天井の高い石造り2階建て、明治39年(1906)に完成したコリント様式のどっしりとした建物。北海道の物流の基点だった。国の重要文化財、ジョサイア・コンドル門下の佐立七次郎の設計だ。「外壁は厚さ75cmの小樽天狗山の軟石、他は登別の中硬石です。窓はすべて二重ガラス、北海道のきびしい冬を考えた設計になっています」。ボランティアガイドの斉藤さんが身ぶり手ぶりで熱心に説明してくれた。
旧日銀小樽支店はルネッサンス様式。辰野金吾の設計。彼もコンドル門下生だ。今は金融資料館として公開されている。単に日銀の活動紹介だけでなく北海道経済史的な側面もあるのがいい。近くには大正11年(1922)に完成した旧三菱銀行小樽支店(現北海道中央バスビル)もある。
北一硝子のある堺町本通、石造りの倉庫を改装した六花亭の小樽運河店。1階には「六花亭」の売り場が、2階にはギャラリーとシューショップがある。取材時、展示されていたのは、六花亭の包装紙のイラストにも使われている坂本直行の作品。大自然のスケッチが北海道的だ。北大農学部を卒業し、昭和5年(1930)に十勝の原野の開拓に入った農民画家である。
小樽郊外を意欲的に見たいなら車を借りよう。交通量が少ないのでしばらく運転から遠ざかっていた人でも大丈夫。まずは海岸伝いに祝津の岬へ。北大や小樽商大のヨットが帆走している。丘の上には鰊御殿と灯台。目いっぱいに広がる石狩湾、はるかに霞むのは暑寒別岳だ。
シャコタン・ブルーの海を見ながら、積丹半島を北西へ。かつてはニシン漁で栄えた静かな港で休んだりしながら、神威(かむい)岬まで走ってUターン、余市へ戻る。ニッカウヰスキーの工場がある。スコットランドのような光景。森の中の石倉で原酒が熟成中だ。昭和15年に余市工場から初荷の馬車を送り出すまでの創業の記録を見て外へ出れば、もう夕方、風が心地よい。
小樽の夜は、昭和12年創業のすし屋、大和家(やまとや)へ。小樽の話ならこの人と、三菱商事OBの有田さんが連れてきてくれたのが井草さん。新鮮なウニに「北の誉」の熱燗。井草さん、次第に冗舌になる。牧師兼女子大教授をしながら、札幌や小樽を舞台に純愛小説を50年書いてきた。渡辺淳一とは大分違う。若いころ椎名麟三に師事し、72歳の今も愛とは何ぞやをテーマに同人誌に書いているという。「すしはね、ぼくは昔からこの大和家。鮭児(けいじ)、どうですか」と、勧めてくれた。うまい!「ま、ま、どうぞ」と井草さんにお銚子を傾むける。永遠の青年、実においしそう。こっちもつられて、つい…。小樽の夜はふける。
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余市蒸留所
小樽市街地から西へ車で30〜40分にあるニッカウヰスキー発祥の地。貯蔵庫の赤い屋根が印象的だ。
余市町黒川町7-6
TEL:0135・23・3131 |
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小樽運河
小樽といえば小樽運河の光景が思い浮かぶ。見慣れているとはいえ、やっぱり美しい |
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上・旧日本郵船小樽支店
格調高い建物が小樽の街並みに見事に溶け込んでいる。
色内3-7-8
TEL:0134・22・3316 |
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| 右・門には日本郵船のロゴマーク「二引」が |
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[アクセス]
JR新千歳空港からJR快速エアポートを利用し、JR札幌まで約30分。JR札幌からJR小樽までは約30分。レンタカーを利用する場合は、石狩街道(国道5号)を北上、札幌北I.C.より高速道に入り、終点の小樽I.C.から約3kmで小樽の市街地へ
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祝津の海
小樽の市街地から北西へ車で15〜20分。丘の上からは高島岬の白い灯台や真っ青な石狩湾が一望できる |
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おたる大和家
昭和12年創業。小樽ならではの新鮮なネタ。仕上げに北海生寿し(2,520円)がおすすめ。
稲穂3-4-11
TEL:0134・23・1540 |
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小樽名物・アラジンの秘密
「七日食べたら鏡をごらん!」がキャッチの粉末昆布。みそ汁に入れてお肌ツルツル
「利尻屋みのや」
堺町4-6
TEL:0134・25・4060 |
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