鹿児島湾は、桜島を中心にまるで箱庭のようにまとまっている。薩摩の人たちが、郷土を誇りに思い、仲間意識を持つのも、分からないでもない。
明治維新の17年前、島津斉彬は西洋の専門書を翻訳させ製鉄や造船、紡績などを起こした。島津久光は、薩英戦争で痛い目に遭うと洋学校を設立、さらにあのグラバーの仲介で森有礼ら15名の留学生と五代友厚ら視察員をひそかにイギリスに派遣した。そういう進取の気性に満ちた薩摩だからこそ、長州とともに日本の近代化の原動力になれたのだ。
三菱と鹿児島のかかわりは、明治8年(1875)、琉球航路開設に合わせて鹿児島支店を開設したときからだ。たまたま10年1月末、私学校の生徒たちが政府の弾薬庫を襲い騒然としていたときに、三菱の太平丸が琉球から入港し、出港差し止めとなってしまった。結局は解放されたのだが、西南戦争における政府軍の輸送は三菱が一手に引き受けたので、鹿児島支店は三菱の最前線ということになってしまい微妙な立場だった。
そもそも西南戦争は時代の変革についていけない旧武士層を代弁して西郷が重い腰をあげたものといわれるが、戦い我に利あらず、7カ月にわたって九州各地を転戦したのち故郷の城山にたどりついた。そして9月24日の早暁、終焉を迎える。三菱の鹿児島支店から、配船の指揮を執っていた神戸支店にあてて、歴史的第一報が発信された。
「サイゴウキリノムラタノシガイヲミタリ…」
初めて鹿児島を訪ねて、市内観光だけで帰る手はない。桜島は観光バスが便利。フェリーで渡り、無機質な溶岩の島をぐるりと回る。50km。噴火に出会うこともあるかもしれないが、火山灰に埋没してしまってわずかにてっぺんしか見えない鳥居を見ると、自然の力の大きさに鳥肌が立つ思いがする。
この際、知覧の特攻平和会館にも足を延ばそう。祖国と、愛する人たちのために命を捨てた多くの若者たちの、写真や遺書が展示されている。関係者だろうか、あちこちですすり泣く声が聞こえる。平和の尊さと戦争の愚かさをもう一度意識したい。
指宿スカイラインから見下ろす白っぽいタンク群は新日本石油の喜入(きいれ)原油基地だ。正式には新日本石油基地株式会社という。遠浅の海岸の先はいきなり深いという理想的な場所に建設された。昭和44年に操業開始、貯油能力735万キロリットルは世界最大である。
鹿児島のホテルは城山観光ホテルがお勧め。眺めがピカ一というだけでなく、従業員の対応がいい。朝食のバイキングも文句なくいい。市内中心部との間には夜遅くまでシャトルバスがあって気が楽だ。鹿児島料理を焼酎でという人は三菱商事鹿児島支店長の田中さんお勧めの「吾愛人(わかな)」本店に行ってみよう。赤岩料理長の包丁さばきや配膳の指示は達人の域。首折り鯖の刺し身や、黒豚のなんとやら、かんとやら…。次々に出来上がる料理をカウンターで見ているだけで焼酎がうまくなる。
桜島
城山観光ホテルから望む夜明け前の桜島。
城山観光ホテル:新照院町41-1    TEL:099・224・2211
西郷隆盛終焉の地の碑
島津家別邸
「名勝 仙巌園(磯庭園)」の反射炉跡と150ポンド砲 19代島津光久が築いた別邸。門をくぐると反射炉跡がある。
吉野町9700-1
TEL:099・247・1551
[アクセス]
鹿児島へは飛行機を利用して東京から1時間40分、大阪から1時間5分、福岡からは40分。空港バスを利用して市内の中央駅まで45分、鹿児島本港まで50分。市内から知覧町までは路線バスで約1時間。鹿児島本港から桜島港までは15分
特攻平和会館
犠牲となった若き隊員たちの遺品や記録など貴重な資料がある。
知覧町郡17881
TEL:0993・83・2525
新日本石油基地株式会社
鹿児島の豊かな自然との調和を図りつつ、社会情勢の変化や不測の事態に備えるため石油備蓄を行っている

関連三菱史
1877 郵便汽船三菱会社、西南戦争において軍事輸送拝命
1967 新日本石油喜入基地創業


成田×雄太
●プロフィール
成田誠一(なりた・せいいち)三菱史アナリスト。これまで本誌に『岩崎彌太郎物語』『岩崎彌之助物語』などを連載。朝比奈雄太(あさひな・ゆうた)。 フットワーク抜群のフリーランスカメラマン

西郷亡き後、薩摩志士の行く末は…

雄太
成田
雄太
成田
雄太
成田

夏に北海道に行ったとき「網走監獄」を見学しました。
急にどうしたんだい。
西南戦争で敗れて囚人となった薩摩の人たちが…。
そう、極寒の地の道路建設に動員された。
200人以上の人が過労と寒さで亡くなったそうですね。
痛ましい歴史だ。一方、刑を終えて役人になった人も多い。

文・成 田 誠 一
  これまでの連載をホームページでご覧いただけます。
http://www.mitsubishi.com/j/history/series/『岩崎彌太郎物語』『岩崎彌之助物語』
『岩崎久彌物語』『岩崎小彌太物語』『ゆかりの人シリーズ』

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