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「マンスリーみつびし」創業150周年関連記事

特集
三菱創業150年

三菱広報委員会「マンスリーみつびし」より 撮影/松尾成美 人物撮影/大内香織 写真提供/三菱史料館、明治安田生命保険、三菱地所

2020年は、三菱創業150年の節目の年となる。それを機に、三菱創業150周年記念事業委員会が発足。
各方面にさまざまな事業・支援が行われる。その目的、方針、事業・支援内容などを紹介する。

三菱創業150周年記念事業委員会事務局の専任メンバー

山口啓示さんやまぐち・けいじ●1991年、三菱銀行入社。融資企画部・審査部・秘書室・財務企画部などを経て、2017年、同委員会事務局に。19年より同副事務局長
加藤 勲さんかとう・いさお●1989年、三菱総合研究所入社。社会基盤に関する調査研究、事業企画・営業などに従事。2017年、同委員会事務局に。同事務局長代理
佐野 淳さんさの・じゅん●1981年、三菱商事入社。国内外で営業・新規事業などに従事。直近は東日本大震災復興支援部局を経て、2019年10月より同委員会事務局長代理
渡辺吉倫さんわたなべ・よしのり●1992年、三菱重工業入社。総務部門を中心に営業・新規事業に従事。2017年10月より同委員会事務局のメンバーに。19年4月より同事務局長

座談会は2020年1月20日、三菱広報委員会の会議室で開催された。

――

三菱創業150周年記念事業委員会(以下、委員会)が発足したのは?

渡辺

2017年5月に正式に発足し、第1回の委員会が開催されています。委員長には、三菱重工業の宮永俊一・取締役会長が就任しており、三菱グループ各社の役員の方26名と金曜会事務局長が委員として参加されています。

山口

150周年を迎える年に、何か事業を行おうということで委員会が発足し、具体的な事業内容や予算などを決定してきました。

加藤

発足前から専任の事務局員として、山口さんと私の2名で準備を進めてきました。その後、事業検討の進捗に合わせ、現在の4名体制になっています。

佐野

150周年を記念して各種の事業を行うにあたり、事務局の業務としては①委員会で議論される材料の提供、②事業アイデア・方向性・予算などに関する各委員の意見集約、③委員会で決定した事業方針に基づく事業案の具体化などがあります。

――

現在の事業内容に決まるまでの委員会での議論の内容は?

加藤

100周年事業の内容を参考にしながら、今の時代にふさわしい社会貢献事業にしようということになりました。例えば、何らかの施設や記念館を建てるといったことではなく、違う形での社会貢献を模索してきました。

渡辺

今の時代にふさわしい、ということで言えば、ひとつは、スピード感を重視することです。限られた予算を長期にわたって振り分けるよりも、効果のありそうなところへ集中的に支援・助成することで、成長や変化を早めたいという思いがありました。

加藤

背景には、果たして20年以降も、これまでのように日本が先進国として継続できるのかという危機感があります。また、委員会が実施する予定の助成や支援は、三菱グループが今まで事業を継続できたことへの社会に対する恩返しの意味合いもあります。それを三菱グループ各社が1社別々で行うよりは、グループでまとまった方が、効率的かつ貢献度も高くなります。

今の時代にふさわしい社会貢献事業を選び、スピード感を重視し、集中的に投資・支援
――

資金の規模や運用、振り分けは?

佐野

19年から各委員会社に資金を負担していただき、約150億円の総事業費を見積もっています。その内訳は、メインの事業に約100億円、その他の事業に約50億円といったところです。

山口

メイン事業では、人材育成に関わる一般財団法人を設立しました。次世代の人材育成に支援を行う「三菱みらい育成財団」です。それを決定するまでは、財団の法人格や資金の使い方について、相当な議論がなされました。特に資金運用については、効果のスピード感を重視して資金運用利回りで助成する方法は採用しませんでした。現状では利率が低く、利息はわずかですから。例えば100億円の資金が集まったとして、運用利回りで助成金を捻出するなら、年率1%として年間1億円の助成金。そうするよりは、集めた資金を10年で使い切るという方向で検討しました。

――

150周年を迎え、どのようなことに注力していきますか。

渡辺

3つあります。①各種の事業を当初のもくろみどおりに実行・運営すること。②各種の事業に込められた理念を、私たちだけでなく三菱グループ内外の方々にも各種の媒体を通じ、発信していくこと。③三菱グループが共有する理念である「三綱領」を、この機会に再認識していただくこと、です。

三菱グループの共通の理念「三綱領」は、現代にも通用します
三菱の四代社長・岩崎小彌太筆の「三綱領」。意味するところを解説すると
所期奉公
期するところは社会への貢献。事業を通じ、豊かな社会の実現に努力すると同時に地球環境の維持にも貢献する。
処事光明
競争はフェアプレーに徹する。公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。
立業貿易
グローバルな視野に立つ。世界的、さらには宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。
――

「三菱みらい育成財団」の狙いは?

山口

詳細は本誌2020年11月号の「トップインタビュー」で、同財団の平野信行理事長(三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)が解説される予定で、未来を担う若い人たちを支援していくことが主眼となっています。

可能性を秘めた若者の輝きを育てる

――

具体的に、どういう人たちに支援を?

山口

18年の春に、さまざまな教育に関連する団体(株式会社、NPO、学校など)約60団体にヒアリングを実施しました。そこで多く聞かれたことは、「優等生は多いのですが、新しい領域にチャレンジする生徒が少ない」ということでした。ならば、独特の才能を見いだす事業を支援していければと思っています。

佐野

財団の支援は、高校生が中心となります。その理由としては、過去に有識者へのヒアリングの結果として、国内の小・中学生の学力レベルは世界でトップレベルなのに、高校・大学で落ちてくる傾向が否めないとのこと。そこで、初年度は主に高校生を対象とした教育プログラムに助成・支援しようということになりました。

渡辺

助成先は財団が公募して決定します。対象は学校をはじめ、NPO、教育事業を行う機関など幅広く募ります。

佐野

生徒の心のエンジンを駆動させたい。計り知れない可能性を秘めた若者の輝きを育てることが、日本さらには世界の将来に希望をもたらすものと考えています。

生徒の心のエンジンを駆動させ、埋もれた才能を発掘したい
「三菱みらい育成財団」を設立し、高校生を中心に支援し、未来を託す
――

150周年事業の事務局業務を通じ「三綱領」について、どのように感じましたか。

加藤

三菱グループ共通の理念として、現代に通用するものであることを再認識しました。150周年事業を検討し始めたときに、国連総会で採択された持続可能な開発目標であるSDGsをよりどころのひとつとしました。一方で、三菱らしさとは何なのかという議論が沸き上がり、それは「三綱領」に他ならないという結論に至りました。その議論の中、「三綱領」とSDGsは関連する部分が多いと改めて認識しました。

渡辺

現代にも通じる経営理念を、大正から昭和期にかけての三菱四代社長・岩崎小彌太が提唱していたのですから、実に先見の明があったということに他なりません。

三菱らしさとは何なのか。委員会で、議論が交わされました
山口

ただ、150周年を機に先祖返りをしようということではありません。今後の50年を見据えたとき、事業を継続しつつ社会貢献をしていく際に、私たちのようなグループの皆さまが「三綱領」を胸に刻むきっかけになればと思います。

三菱グループ内でも歴史を学ぶ必要性

――

「三綱領」に限らず、三菱の歴史を知らない人が増えていませんか。②とも関連しますが、まず、歴史を知ることでは…。

佐野

そうした側面もあるかもしれません。創業者の岩崎彌太郎の活躍を詳しく知らない人が少なくないと聞いています。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』で、初めて知ったと。

渡辺

本誌2月号で三菱誕生の経緯、同3月号で4人の社長と三綱領の特集記事を掲載しましたが、初めて知った事柄が少なくなかったという声は届いています。「三綱領」と併せて、このように三菱の歴史に触れる機会を提供することも、それなりの意義はあるのではないかと思います。

加藤

三菱グループ各社は、時代のニーズに呼応して統合・合併を繰り返し、進化してきました。途中から三菱グループに加わった会社では、三菱の創業時から四代社長に至る経緯については、あまりなじみがない人も少なくないと思います。

山口

恥ずかしながら、私もよく知らなかった一人です。二代、三代、四代社長が、どのような視野に立ち、事業を推進または拡大していったのか、初めて知ったことが多々ありました。

三菱グループの歴史を知ることは、次の50年につながると思います
――

そこから学ぶべきことは?

佐野

過去の歴史があって、いま現在の三菱グループがあります。歴史を振り返ることで、今後の50年に成すべきものが見えてくるかもしれません。

渡辺

よく、組織の三菱といわれます。150周年を機にグループ全体でできることをする。それ自体が三菱グループ結束の表れだと思います。

――

続いて、メインの事業以外の助成や支援について、詳しく教えてください。

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Marunouchi丸の内に「静嘉堂文庫美術館」が移転。新たな文化スポットが誕生する

渡辺吉倫さん。三菱創業150周年記念事業委員会事務局、事務局長

公益財団法人静嘉堂は、美術館開館30周年を迎える2022(令和4)年に、東京・丸の内にある明治生命館1階に「静嘉堂文庫美術館」の展示ギャラリーを移転する予定である。
「この移転は、三菱創業150周年記念事業の一環として行われるものです」
と話すのは、前出の渡辺吉倫さん。現在、東京都世田谷区岡本にある静嘉堂には、国宝7点、重要文化財84点を含む約20万冊の古典籍と6500余点の東洋古美術品が収蔵されている。
「ただ、移転施設は美術館の展示ギャラリーのみです。美術品の保管管理・研究閲覧業務、ならびに静嘉堂文庫(書庫)、敷地・庭園の管理業務は、現在の東京都世田谷区岡本にて継続して行っていきます」

それでも、展示ギャラリーの移転は相当大掛かりなものとなり、委員会は全面的に支援していく。
一方、移転先の明治生命館は、1934(昭和9)年に竣工。ネオルネサンス古典主義様式をとり入れ、昭和の建造物では初めて国の重要文化財に指定されたもの。
「丸の内は、そもそも三菱とともに発展した地でもあります。その丸の内で、歴史的建造物である明治生命館の中で静嘉堂の数々の名品がご覧いただけるようになります」

岩崎家ゆかりの静嘉堂、東洋文庫の文化財が一堂にそろう展覧会

移転に先立つ、20年7月8日からは、三菱一号館美術館で、「静嘉堂文庫美術館」と「東洋文庫」の貴重な所蔵品が一堂にそろう共同主催の展覧会『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』が開催される。「静嘉堂文庫美術館」からは、前述の国宝や重要文化財が、「東洋文庫」からも、国宝や重要文化財が、また三菱経済研究所からも貴重な所蔵品が出品される。
「これも、三菱創業150周年記念事業の一環として行われます。共同主催の展覧会の詳細は分かり次第お知らせしますので、多くの方に来場していただければと思います。そして2年後には、明治生命館と静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー、三菱一号館美術館と、丸の内に新たな文化スポットが誕生します」

上/明治生命館。1階に「静嘉堂文庫美術館」の展示ギャラリーが移転
下/2010年に開館した三菱一号館美術館。20年7月から、静嘉堂と東洋文庫の合同展が開催される
左/明治生命館。1階に「静嘉堂文庫美術館」の展示ギャラリーが移転 右/2010年に開館した三菱一号館美術館。20年7月から、静嘉堂と東洋文庫の合同展が開催される
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The Historically Related Regions地方にある三菱ゆかりの地にも支援・協力し、三菱の歴史を肌で感じる

山口啓示さん。三菱創業150周年記念事業委員会事務局、副事務局長

三菱ゆかりの地のひとつ小岩井農場には、重要文化財に指定された21棟の歴史的建造物が存在する。この重要文化財「小岩井農場施設」の管理、学術的調査研究および公開普及、学術・文化の振興を目的に、2019年12月、公益財団法人小岩井農場財団が認定された。
「その財団法人の発足に、委員会も貢献しました」
と話すのは、前出の山口啓示さん。同財団は、文化財建造物の修復・管理・保存環境の整備を図ることで後世に残すことに寄与していく。
小岩井農場では、三菱創業150周年を機に、三菱グループ各社向けに2種類の研修プログラムを用意。そのひとつが、「歴史探訪」である。重要文化財を紹介する中で、一般非公開の農場の迎賓館「倶楽部」を特別公開。この「倶楽部」は、皇族をお迎えし岩崎家の方々も宿泊した由緒ある建物である。

そして、もうひとつが、「森林体験」である。循環型・持続型を実現する小岩井農場ならではの森林施業を見学できる。
「荒野に1本の木を植えるところから始まり、100年を超える時を経て形成された生態系豊かな森をご覧いただけるそうです。三菱の歴史を知るとともに、大自然を満喫できます。ご家族や三菱グループの友人、知人たちと訪れてはいかがでしょう」

創業者・岩崎彌太郎の功績を後世に残す

 もうひとつ、三菱ゆかりの地である岩崎彌太郎生家。高知県安芸市にあり、観光名所のひとつとなっている。その生家から車で数分の距離にある「安芸観光情報センター」が、20年3月28日に全面リニューアルオープンした。同センターの愛称は、「彌太郎こころざし社中」。「このリニューアルオープンに際しても、委員会は協力しています」
センター内では、岩崎彌太郎を主人公にしたVR(バーチャルリアリティー)が見られるほか、生い立ちを紹介した資料などが展示されている。
「安芸市の方々は、岩崎彌太郎を郷土が生んだ偉人と捉え、その功績を後世に残したいと思われているようです。岩崎彌太郎生家を見学された後に、センターにもお立ち寄りください」

上/二号牛舎とサイロ
下/日本最古のレンガサイロ。どちらも国指定の重要文化財。
左/二号牛舎とサイロ 右/日本最古のレンガサイロ。どちらも国指定の重要文化財。
研修プログラムの問い合わせ先:小岩井農場まきば園 TEL.019-692-4321
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