みにきて! みつびし
重要文化財の建造物群と小岩井の歴史を紹介するギャラリー
小岩井農場重要文化財ギャラリー
施設DATA
- ウェブサイト:小岩井農場重要文化財ギャラリー
- 所在地:岩手県岩手郡雫石町丸谷地36-1 小岩井農場まきば園内、入場口より徒歩3分
- 開館時間・入館料等
- お問い合わせ:019-692-4321(小岩井農場まきば園)
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まずは小岩井農場と三菱の関係のおさらいから。小岩井農場は1891(明治24)年、日本鉄道会社副社長の小野義眞、三菱社第二代社長の岩崎彌之助、鉄道庁長官の井上勝の三人によって開設されました。「小岩井」の名前はこの三人の頭文字をとってつけられたものです。不毛の原野であったこの地で農場経営の試行錯誤が繰り返され、1899(明治32)年に三菱第三代社長の岩崎久彌へと経営が継承されます。以降久彌は経営基盤の強化をはかり、小岩井農場の礎を築いたのみならず、日本の近代酪農業を発展へと繋げました。現在の小岩井農場は酪農や種鶏、山林、環境緑化、食品、レストラン、そして観光と、さまざまな分野で事業を展開しながら、持続型・循環型農業で環境との共生に取り組んでいます。
●農場をご紹介した前回の訪問記事はこちら
味のある書体の看板に旅気分もアップ。重文の建造物をはじめ小岩井農場の建物は赤い屋根が目印。雪の積もる冬でも映える鮮やかな色ながら、赤くした理由は不明だそう。
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観光施設「まきば園」に入園すると目の前に広がる、遊び心地満点の広大な「のびのび広場」。この日は薄曇りながら、遠足などで訪れていた多くの子供たちの姿が。
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2017年2月、小岩井農場の施設21棟が国の重要文化財に指定されました。21棟すべてが明治期から昭和初期にかけての建築で、築後100年ほどを経た現在もその多くが現役で使用されているという「生きた文化財(リビングヘリテージ)」であることが大きな特徴です。これらの貴重な建物群、そして小岩井農場の歴史を、最新のデジタル技術を通じて楽しく知ることができるのが、2021年4月にオープンした「小岩井農場重要文化財ギャラリー」です。
※国指定重要文化財「小岩井農場施設」および「小岩井農場重要文化財ギャラリー」は、公益財団法人小岩井農場財団が所有・管理しています。
小岩井農場重要文化財ギャラリーの外観。すぐそばには広大な広場や、農場産の小麦粉を使ったピザが楽しめるレストランも。
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ギャラリーの扉をよく見ると、なんと取っ手がひつじの顔に! 牛バージョンもあるのでお見逃しなく。
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農場入り口からほど近いギャラリーに入ると、照明を落とした館内には様々な展示が並んでいます。まず目を引くのが幅8メートルの巨大スクリーンに投影された小岩井農場の美しい景色です。ドローンを使って撮影されたという映像は、空を飛ぶ鷹の目線で、あるいは地面を走るリスの目線でと、なかなか見られない角度から農場の姿を楽しむことができます。スクリーン前に置かれたベンチに座り、じっくりと、そしてのんびりと眺めるのがおすすめです!
幅8メートルの巨大スクリーンで広い小岩井農場の風景を陸から空から楽しめる「アドベンチャー・シアター」。リスの目線で取られた映像では牛舎の牛たちを床から見上げるなんてびっくりシーンも!
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壁一面を使って紹介されているのは小岩井農場開墾の歴史。時代ごとの数々のトピックが読めるのはもちろん、ぜひ見ていただきたいのが昭和初期の映像資料です。現在は園内アクティビティとして楽しめる「トロ馬車」(農場内を走っていた馬車鉄道)が実際に使用されている様子や、今とはやや体格の異なる当時の牛たち、そして今や資料でしか確認できない競走馬の姿までも見ることができます。実は、第二次世界大戦後に終息してしまったものの、小岩井農場ではかつて育馬事業が行われており、日本競馬史上初の三冠馬・セントライトなど、優れた駿馬がここで生まれているんです。酪農・畜産のイメージが強い小岩井農場ですが、ギャラリーを訪れたらぜひ、馬たちの歴史も辿ってみてくださいね。
壁一面に展示された小岩井農場の歴史年表。数台設置されたモニターでは昭和初期の映像資料が見られる。
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昭和16年に小岩井農場創業50周年を記念して作られた着色写真帖の写真。貴重な小岩井農場の競走馬や、品種改良により今のプロポーションになる前の牛の写真も。
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最新のインタラクティブな仕掛けで小岩井農場を深く学べる
巨大スクリーンと背中合わせになるよう設置されているのは「ヘリテージ・ウォール」。21棟の重要文化財群が描かれていますが、ここにはある仕掛けが……。
【※音が出ます】「ヘリテージ・ウォール」に描かれた重文建造物のイラストに手をかざすとアニメーションが浮かび上がり、その施設はどのように使用されていたかがわかる。
各建物の絵に手をかざすとアニメーションがあらわれ、音とともにその建物がどのように使用されていたかなどが表示されるのです。アニメーションの可愛らしいタッチとインタラクティブな楽しさに、全制覇したくなること請け合い! ぜひあちこち手を伸ばしてみてくださいね。
幅6メートルを超える「ヘリテージ・ウォール」。岩手山をバックに農場の重要文化財群が描かれているほか、農場を訪れる詩人・宮沢賢治の姿なども投影され、いつまでも見飽きない。
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さらにこのギャラリーでは多言語対応の公式アプリが用意されており、重要文化財21棟の歴史と概要、機能などは、アプリでQRコードを読み込むと音声での解説を聞くことができます(館内にはフリーWi-Fiも完備)。それだけでなく、一部の建物については通常入ることができない内部を360°ビューで見学することができたり、牛舎内の半日をタイムラプス映像で楽しめたりと、ギャラリー、そして小岩井農場がもっと楽しくなるコンテンツが提供されています。QRコードはギャラリー内だけでなく、実際の各施設の前にも掲示されていますので、解説を聞きながら見学することもできます。小岩井農場を訪れる際にはアプリのインストールをお忘れなく!
21棟の重要文化財の紹介パネル。それぞれに付されたQRコードを専用アプリで読み込むと、音声解説の他、動画なども楽しむことができる。
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こちらは現役の施設のひとつ「三号牛舎」。この場所でも看板のQRコードで解説が聞けるほか、アプリ内では牛舎での牛と飼育員さんたちの半日をタイムラプスで覗ける。
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ギャラリーでは他にも施設の精密模型や、岩崎久彌の想いを紹介するパネルなど、盛りだくさんの展示が楽しめます。カラットのおすすめは、ギャラリーを見てから実際の施設の見学に回るルートです。ガイド付きバスツアーなども開催される場合もあるので、お出かけの前には小岩井農場の公式サイトをチェックしておきましょう。
三菱第三代社長の岩崎久彌は、明治32年に農場の経営を継承し、以降この地で日本の酪農・畜産の発展に貢献。彼の想いは現在の小岩井農場にも受け継がれている。
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ユニークなデザインの館内照明は、なんと飼料用トウモロコシ製! 思わず「粒は落ちてこないんですか?」とお聞きしたら「大丈夫です!」とのこと。
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農場主だった岩崎久彌の「30年後でも恥ずかしくない牛舎を」との命で建てられたのが、昭和9(1934)年建設の「一号牛舎」(重文)でした。それから30年の3倍を超える月日を経て、各牛舎では今も多くの牛たちが暮らしています。小岩井農場重要文化財ギャラリーは、長い歴史を見つめ、そしてこれからも歴史を歩む小岩井農場の姿を、貴重な資料と最新技術で楽しめる場所でした。
【※音が出ます】昭和10年建設の重文「三号牛舎」は子牛と種牡牛の育成用の施設。現在もたくさんの子牛たちが元気に育っており、月齢別の飼育室や、牛舎前の広い運動場など、さながら子牛の保育園のよう。子牛でも大きな鳴き声は一人前!
春夏秋冬、どの季節に行っても折々の美しさが楽しめる小岩井農場。まきば園では多彩なイベントも目白押しです。お好きな季節にぜひお出かけしてみてください!
訪問したらぜひとも味わいたいのが農場グルメ! 手ぶらでBBQが楽しめる「炭火焼BBQガーデン」では小岩井牛食べ比べや、運が良ければ貴重な小岩井農場産羊肉が食べられることも。
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お土産もお忘れなく。乳製品やデリカテッセンはもちろん、オリジナル雑貨も楽しさいっぱい。こちらはモフモフから「ツヤァ」になるまでが可愛い「ひつじの毛刈り」マスキングテープ。
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注:本文中の情報等はいずれも2022年9月現在のものです。
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こんにちは&お久しぶりです! 事務局のカラットです。三菱ゆかりの地やグループ各社の公開施設を訪問する当コーナー、コロナ禍により休止となっておりましたが、このたびついに再始動することとなりました! 引き続きさまざまなスポットをご紹介していきますので、どうぞお楽しみに。そして気になる施設を見つけたら、ぜひ皆さんも「みてきて」くださいね。
記念すべき再始動第1回目は、2016年に訪問した「小岩井農場」です。前回は農場の施設が重要文化財に指定されるというニュースが聞こえてきた直後でしたが、この重要文化財を紹介する施設がオープンしたと聞き、東北新幹線に飛び乗って行ってまいりました!