ライフスタイル企画

2023.07.13

旅企画「目的旅のススメ」

ワイナリー、酒蔵、ビール醸造所を訪ねる大人の夏旅

旅先ではその土地ならではの郷土食やお酒に出会うのも醍醐味のひとつ。ビール、ワイン、日本酒など、普段、何気なく口にしている1杯も、風土、土地の歴史によって大きく変わる。向かう目的地に、ワイナリーや酒蔵、醸造所があれば、少し足を延ばしてみるのもいい。完成するまでの工程や、土地の食材を活かした料理とのペアリングなど、飲むだけでない“知る”楽しさもたくさんあるからだ。心身ともにリフレッシュできる、今夏最高の暑気払いの旅をナビゲート。

日本ワインの“聖地”『カーブドッチワイナリー』でぶどう畑に囲まれて眠る

新潟市街地から車で南西部へ走ること約30分。日本海に面した角田浜は、ワイン好きの間では“新潟ワインコースト”と呼ばれ、ワイナリー巡りをするのにピッタリのデスティネーションだ。

近年、日本ワインの存在感は高まるばかりだが、草分けとも言えるのがこの“新潟ワインコースト”の中心にある『カーブドッチワイナリー』だ。

1992年、この地の土壌がワイン用のぶどう栽培に適していることに注目し、「国産ぶどうを100%使った自家醸造の日本ワイン」を目指し創業。

これまでに40種以上、現在でも19種のぶどうが植えられ、泡から白、ロゼ、赤まで多くのワインを生み出している。

ワイナリーツアーはもちろん、敷地内にはワインショップからレストラン、カフェ、宿泊施設、スパまで揃い、充実した滞在時間を過ごすことができる。

2022年春には温泉施設『Cave d'Occi VineSpa(カーブドッチ ヴィネスパ)』がブックラウンジとしてリニューアル。ブックディレクター幅允孝氏による10の選書テーマに沿って構成されたラインアップも興味深い。

ワイナリーツアーを満喫し、本格フレンチでワインとのマリアージュにうっとりし、非日常感たっぷりの『WineryStay TRAVIGNE(ワイナリーステイ トラヴィーニュ)』のゲストルームに戻る。そして、夕暮れに染まるぶどう畑を眺めながら、部屋でグラスを傾ければ、もう夢心地。

ワイン好きにとって、これ以上の幸福はないはずだ。

チェックアウト後は自宅用にワインを購入し、幸せの余韻を抱えて帰路につこう。

『カーブドッチワイナリー』

施設写真

〒953-0011 新潟県新潟市西蒲区角田浜1661
☎ 0256・77・2288
http://www.docci.com/

『Cave d'Occi VineSpa(カーブドッチ ヴィネスパ)』
☎ 0256・77・2226
営業時間7時〜22時(木曜日のみ10時〜22時)
温泉入浴料1,000円/平日17時〜22時800円/土日祝・繁忙日1,500円
カフェ入館料1,000円/平日17時〜22時800円 ※いずれもワンドリンク付き

『WineryStay TRAVIGNE(ワイナリーステイ トラヴィーニュ)』
☎ 0256・77・5460
客室数10室
平日1泊2食付き1名3万8,500円~(税サ込)

明治創業の歴史ある酒蔵で日本酒三昧! 『NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち』

海外から訪れるゲストをはじめ、日本人にとっても郷愁を誘う古民家や街並み。時とともに消えゆくばかりだったそれらをリノベーションし、地域に息づく文化体験ができる宿泊施設として新たな価値を提供するムーブメントがここ数年、盛り上がっている。

「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らし」をコンセプトに掲げる『NIPPONIA』もそのひとつだ。

北海道から九州、沖縄まで日本全国で展開しているが、そのロケーションは中心地から離れているケースも多い。だが、それがまた旅情を誘う。

門前町や商人の町、城下町など、その地が持つ歴史を活かした宿泊体験が『NIPPONIA』の特徴だが、なかには歴史ある酒蔵をリノベーションした施設もある。

それが2018年にオープンした『NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち』だ。
明治創業の豊澤酒造の元酒蔵を活かしたホテルは、空間の随所に日本家屋の美しさや意匠が息づく。

足を一歩踏み入れた瞬間から、タイムスリップした錯覚に陥るはずだ。

かつての土間はカウンタースタイルのレストランに。3m近い天井高を誇り、その開放感は抜群。

レストランでは豊澤酒造直送の搾りたての酒や季節の限定酒とフレンチのマリアージュが楽しめる。

実は奈良は日本酒造り発祥の地。春日大社からの豊かな水脈が生み出される酒は、清らかな味わいで、体にじんわりと染み渡る。

現代の名工にも選ばれた杜氏、藤沢忠治氏が手がける豊澤酒造の日本酒もまた、やわらかさと清らかさが旅人をやさしく癒してくれる。

翌朝はいつもよりゆっくり起きて、滋味深い和朝食で胃袋を満たせば、パワーチャージ完了だ。

『NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち』

施設写真

〒630-8345 奈良県奈良市西城戸町4
☎ 0120・210・289
客室数7室
平日1泊2食付き1名3万7,510円~(税サ込み・2名1室利用の場合)
https://www.naramachistay.com/

運河の夜景を眺めながら『小樽倉庫No.1』の本格ドイツビールで喉を潤す

日中の暑さをきれいさっぱり洗い流してくれるお酒といえば、やはりビール。ビアガーデンをはじめ、今年は各地でビアフェスが久しぶりに開催されるとあり、近場での“お祭り”を楽しみにしている人も多いだろう。

でももっと本格的にビールを楽しみたいなら、醸造所を訪れるのが一番。

北海道、小樽運河沿いにある1923年に作られた旧倉庫街。ショップやカフェが建ち並び、小樽観光の中心地でもある人気スポットだが、お酒好きならば醸造所が併設されたビアパブ『小樽倉庫No.1』を訪れずには帰れない。

ドイツのビアパブの雰囲気をそのまま再現した店内の中央には、現役で稼働している仕込み釜が設置され、迫力は十分。

せっかくなら、約20分の醸造所見学(無料)に参加して、ビール造りに触れてからテーブルにつこう。

もちろん、お目当ては出来立てのビールだ。水、麦芽、ホップのみを使用した本格ドイツビールは、ピルスナー、ドンケル、ヴァイスに加え、季節ごとの限定ビールがラインアップ。

地元の食材を使ったソーセージやプレッツェルといった料理もまた、杯を進ませる。

毎週、木曜日と土曜日は“プロスト!の日”と題し、3時間2,200円でビールが飲み放題になるというから、たまらない。

ちなみに“プロスト”とは、ドイツ語で乾杯という意味。旅の締めくくりに最高の“プロスト”を。

『小樽倉庫No.1』

〒047-0007 北海道小樽市港町5-4
☎ 0134・21・2323
営業時間11時~22時
https://otarubeer.com/jp/?page_id=357

構成・文/一寸木芳枝