ライフスタイル企画

2023.07.20

健康企画「ビジネスパーソンのためのヘルスケア」

サッカー元日本代表の鈴木啓太さんに聞く「腸活」最前線!

「腸活」ブームもすっかり定着。
今や「健康の鍵は腸にあり」ということは多くの人が知るところです。
免疫細胞の6~7割は腸にあり、腸の不調が全身の不調を引き起こすといわれています。
最近では「脳腸相関」という言葉も広まり、脳と腸の関係に腸内細菌が深く関わっていることが指摘されるようになりました。腸、大事なんです。
疲れやすい、肌が荒れている、最近パフォーマンスが上がらない、という方は、少し腸を意識した生活をしてみませんか。難しく考えなくてもよさそうです。腸活の肝はとっても基本的なことでした。

少し、腸内細菌について説明を。
腸の中には細胞数(37兆個)をはるかに超える約100兆個もの腸内細菌が棲んでいるといわれている。その菌たちは仲間ごとに固まって存在している。顕微鏡で見ると「お花畑」のように見えることから、腸内細菌は「腸内フローラ」ともいわれる。
意外と知られていないが、腸内細菌は善い菌ばかりいればいいというわけでもなく、「多様性」が非常に大事。
善い菌が生かされるためにまた別の菌がいるなど、菌がせめぎ合って存在している状態が理想的なのだ。腸の中も会社組織のようにチームプレーが大切。多種多様な細菌それぞれが、各自の特徴(個性)を生かしながら働いてこそ「腸内フローラ」という良いチームが生まれる。

腸内細菌の研究をベースに腸ケア商品を開発・販売するAuB株式会社が昨秋、「正しい腸活に関する意識調査」(対象:全国の20~50代の男女)を行ったところ、腸内細菌の役割を知らずに腸活を行っている人が8割以上いたことが判明した。

創業者で、代表取締役の鈴木 啓太(元プロサッカー選手)さんはこう説く。
「AuBが提唱する腸活のメソッドは『菌を摂る。育てる。守る』です。具体的には、食物繊維を意識したバランスのよい食事をとる。たとえばもし昼食が蕎麦一杯だけだったとしても夜に野菜や食物繊維を積極的にとったり、2、3日の間に調整したりすればいい。神経質になりすぎるのもよくないからです。お酒もほどほどに。大事なのは、睡眠をしっかりとって、疲れもストレスも溜めないようにすること。体を冷やさないことも大切です。」
今の腸内環境を自分でチェックする最も簡単な方法は便を観察することだ。チェックポイントは、「見た目」「臭い」「頻度」の3つ。便秘や下痢の診断の際に使われる「ブリストル便性状スケール」でいうタイプ4が理想だが、3~5ぐらいでも正常。タイプ4は、「表面がなめらかで軟らかいソーセージ状、またはとぐろを巻く便」。
腸内環境が良ければ、臭いも強くない。回数は週に3日以上、定期的に出ていればよいといわれているが、回数だけで判断せず、やはり「うんちを見なさい」といったところだろう。

「ブリストル便性状スケール」

アジア最終予選で
下痢にならなかった

幼少の頃から腸が大事と育てられた鈴木さんは、知らず知らずの内に「腸活」に繋がる生活をしていたという。今でもティーバッグを持ち歩き、食後に温かい緑茶を飲む。自家製の梅干しを持ち歩くのも欠かさない。
こんなことがあった。
アテネ五輪アジア最終予選(2004年)で選手の多くが下痢になってしまったのだ。23人中、鈴木さんを含む5人を除いたメンバーが、試合5分前になってもトイレに駆け込む事態だ。スタジアムのトイレには列ができていた。
「今思えばあれは危機的状況でした。下痢になれば脱水状態になりますし。でも私がお腹を壊さなかったのは日ごろから腸活をしていたからだと思います。」
日常の食事が変われば、ダイレクトに便は変わる。それも知っていた。
「2007年以降に腸内細菌の研究は盛んになり、2013年ぐらいの論文で腸内細菌のデブ菌やヤセ菌が注目されるようになりました。2015年にコンディショニングのトレーナーと話をしていた時に、うんちの記録のアプリを作っている人がいると聞き、会いに行き、特徴的な被験者を調べることで大きな発見に繋がると知り、自分の周囲にアスリートがたくさんいるということからこのAuBの立ち上げに至りました」

そしてコンディショニングのプロであるアスリートの腸の研究をするようになった。大学や企業と研究開発に取り組む一方で、オリジナルのサプリメントやプロテインを販売する。
「アスリートの便検体はより理想的であるという仮説をもって研究してはや4年。便を見たらどういうアスリートなのかおおよそ分かります。」

下痢が怖くて特急に乗れない

腸は脳とも深く結びついている。
プレゼンテーション前は、緊張してお腹を下す人もいるかもしれない。便秘もあるだろう。
澤田肝臓・消化器内科クリニックには、下痢や腹痛、腹部痛を訴えるビジネスパーソンが駆け込む。院長の澤田 幸男さんはこう話す。

澤田肝臓・消化器内科クリニック
澤田 幸男院長(本人提供)

「過敏性腸症候群で特急に乗れないとか、そういう人が増えている印象があります。ストレスなのでしょうか。腸内細菌の問題もあると思います」
ストレスが腸内フローラを乱すのだ。まさに脳腸相関だ。

そんな人には整腸剤や下痢止めとか、便が固かったら軟らかく、軟らかかったら硬くするという両方兼ね備えた薬があり、それを処方する。澤田さんは「腸の不調には胃の問題も潜んでいることもあるので、ともに考えたほうがいい」と言う。
「いつも腸の調子が悪い方であれば、予防的に整腸剤を飲んでも良い。市販薬でもいいですよ」

「最近はいろんな種類のヨーグルトがありますから、まずは同じものを2週間ぐらい続けて食べましょう。便通が出ているか、下痢とか便秘にもならず、日常生活を快適に過ごせていれば、そのヨーグルトはあっているということ。できれば夕食後に食べましょう。寝ている間に乳酸菌やビフィズス菌といったヨーグルトに入っている菌が働いて腸の運動を活性化するからです」

一人一人の腸内に棲みつく細菌の種類も量も全く異なる。腸活は難しく考えず、できるだけ野菜を多くバランスのよい3食をとって、悩みすぎずゆるっとした気持ちで過ごそう。最後にひとつだけ。ビフィズス菌を積極的にとろう。ビフィズス菌入りのヨーグルトやドリンクなどでいい。できるだけ継続的に。というのも腸内細菌の中でも有用な選手である(善玉菌)ビフィズス菌は大腸内で酢酸を産生し免疫調整作用に大きく関わるからだ。まずはここから腸活を始めてみるのもよいだろう。
そして、朝は菓子パンをやめて、和食に。
これだけでも続けていけば大きな変化がみられることだろう。さぁ明日から、ゆっくりとやってみよう。腸から健康を立て直す生活を。

プロフィール

鈴木 啓太さん
すずき・けいた AuB株式会社代表取締役
元プロサッカー選手。選手時代は、浦和レッズに所属。サッカー元日本代表メンバー。16年間の選手生活を経て起業。

https://aub.co.jp/about

澤田 幸男さん
さわだ・ゆきお 澤田肝臓・消化器内科クリニック院長
『腸がすべて:世界中で話題!アダムスキー式「最高の腸活」メソッド』(東洋経済新報社)を監修。著書(共著)に『腸が寿命を決める』(集英社新書)がある。腸と免疫の関係を研究。