ライフスタイル企画

2023.08.24

スタイリスト川上さやかの仕事服論

オフィスカジュアルは今、どこまで許される?

スタイリストの川上 さやかさんがビジネスパーソンの服装への疑問や迷いを解消し、背中を押すファッションエッセイ。明日の仕事服を選ぶのがラクになり、自信がもてるヒントを教わります。今回は、仕事服が以前よりもカジュアル化しているなか、どれくらいのカジュアル感なら、働く大人として品格を損なわずにいられるのか。その境界線についてです。

夏の「クールビズ」が始まって以来、仕事の場でノーネクタイが許されるようになったことで、オフィススタイルはだいぶカジュアルになってきたように思います。かといって、カジュアルさを前面に出していけるかと言われればそうではなく、一歩間違えば、だらしなく見えてしまう危険性をはらんでいるのも事実。

そこで、ふだんジャケットを着る方におすすめの“オフィスカジュアル”スタイルは、インナーをTシャツにすることです。このときに気をつけたいのはTシャツの素材選び。
コットン100%のTシャツはジャケットとチグハグ感が出てしまいますし、ラフになりすぎるため、ほんのり光沢感のあるきれいめな素材を選ぶことが大事です。休日に着るTシャツを着回そうとせずに、潔く仕事用のきれいめなタイプを手に入れておくのが賢明。
また、首元のリブが細めで、主張しすぎないタイプのほうがジャケットには合わせやすいです。Tシャツの色は、白、ネイビー、黒などベーシックカラーであれば、どんな色でも構いません。ネイビーのジャケットに白Tシャツは抜群に爽やかですし、ネイビーのジャケットにネイビーのTシャツも上品で素敵。ベージュのジャケットに黒のTシャツなら、おしゃれな雰囲気も演出できます。

女性なら、いつも着ているジャケットをジレに変えてみる方法もおすすめします。ジレはジャケットの袖がなくなったようなデザインですが、袖の部分が覆われていないだけで適度なリラックス感を感じさせてくれる便利なアイテム。さらに、ジレのために合わせのアイテムを新しく買う必要もなく、インナーもボトムも、いつもジャケットを着るときに使っているアイテムを活用すればOK。気軽にチャレンジできる魅力があります。

いつものスタイルの足元をスニーカーにしてみるのもひとつの方法です。仕事服の品格を保ちながら程よくカジュアルダウンさせるには、白のレザー調のローテクスニーカーなら失敗がありません。トレンドのハイテクスニーカーやボリュームソールのスニーカー、キャンバス素材のスニーカー、ロゴが目立つスニーカーは、一気に休日モードになってしまうので避けましょう。シンプルなスリッポンはよさそうに思えますが、靴紐があるタイプのスニーカーのほうが、足元がかっちりとした印象に仕上がります。

スラックスの代わりに、きれいめなタイプのチノパンを試してみるのもいいでしょう。ですが、一般的にスラックスよりもシワになりやすいデメリットがあるので、日ごろからスチームアイロンなどでお手入れを怠らない努力は欠かせません。
カジュアルなアイテムは気軽に着られるラクさがありますが、仕事の場では「カジュアルになるほど細かい部分まできちんと気を回しておかなければならない」と考えています。

最後に、「仕事の場にふさわしいきちんと感」と「暑い夏の過ごしやすさ」を両立させるために覚えておいていただきたいのが、「カジュアルなアイテムはコーディネートのなかにひとつまで」にしておくルール。つまり、きれいめのチノパンをはくなら、足元はスニーカーにはしないこと。いくらカジュアルなスタイルが許される世の中になってきたといっても、“相手あっての仕事服”。取引先の方や接客相手に、「だらしがない」「信頼できそうに見えない」と思われては意味がないのです。

プロフィール

写真

川上 さやか(かわかみ・さやか)
スタイリスト

ファッション雑誌『Oggi』(小学館刊)やファッションブランドのウェブコンテンツなどで活動するスタイリスト。大手銀行の社員からこの仕事に転身した異色の経歴の持ち主。シンプルでベーシックな中にもひとワザ効いたおしゃれさが光るスタイリングや、リアルな仕事服のコーディネート提案が人気。著書『おしゃれになりたかったら、トレンドは買わない。』(講談社刊)も好評発売中。
instagram:@sk_120

イラスト/山口 奈津 構成・文/高橋 香奈子