ライフスタイル企画

2023.10.19

旅企画「目的旅のススメ」

脳にも心にも心地いい刺激を! “アート”な旅へ出かけよう

「南瓜」草間 彌生 2022年 ©YAYOI KUSAMA(写真/山本 糾)

深まる秋、全国各地でアートイベントが盛況だ。地域によっては街が丸ごと舞台となり、演劇やマルシェも開催される芸術祭を企画しているところもある。また、現代アートをはじめ、建築、デザイン、空間まで含めたインスタレーションなど、日本のアートスポットは海外ゲストからの注目度が高く、近年増えている“体験型の旅”のひとつとしても人気だ。何度も訪れた旅先でも、アートを目的にプランニングしてみれば、また新たな魅力に出会えるかもしれない。

自然の美しさと調和する現代美術に触れるなら『ベネッセアートサイト直島』

1992年、美術館とホテルの機能を兼ね備えた『ベネッセハウス』のオープン以降、次々とプロジェクトを成功させ、日本を代表する“アートな島”として知られるようになった直島。

写真/渡邉 修

香川県高松市の北約13km、岡山県玉野市の南約3kmに位置する小さな島だが、島内にはいくつものアートスポットが点在する。

中でも最も代表的な『ベネッセハウス』は、“自然・建築・アートの共生”をコンセプトに建築家・安藤 忠雄が設計を担当。島の南の高台に瀬戸内海を望んで建つそれは、外に向かって大きく開かれた構造を持つ。

ベネッセハウス ミュージアム 写真/大林 直治

ここではアーティストたちがその場所のために制作した作品を恒久展示。また、周辺には島のアイコン的存在として知られる草間 彌生の「南瓜」(2022)をはじめ、大竹 伸朗の「シップヤード・ワークス 船尾と穴」(1990)など、施設の内外で様々なアートに触れることができる。

「南瓜」草間 彌生 2022年 ©YAYOI KUSAMA(写真/山本 糾)

花崗岩とその風化土に覆われる丘陵性の島は、平地が少なく、曲折の多い海岸線に よって内海特有の白砂青松の自然美が形づくられている。そんな場所を背景に点在するアートは、異彩を放ちながらも不思議と調和しているから面白い。

大竹 伸朗「シップヤード・ワークス 船尾と穴」 写真/村上 宏治

ゲストルームは「ミュージアム」からモノレールで移動する高台にある「オーバル」、海辺に開けた「パーク」、「ビーチ」の4棟からなる全65室。

中でも6室限定の「オーバル」は、瀬戸内の自然と安藤建築が融合した建物で、室内の床から天井までの大開口部からは瀬戸内海を一望できる。

ベネッセハウス オーバル 写真/渡邉 修

また、一部のゲストルームの壁には、アーティスト自身がドローイングを制作。いずれもその部屋のためだけに制作され、宿泊しないと見ることができないと聞けば、年間を通して人気の客室なのもうなずける。

直島に数泊し、ゆっくり過ごす旅もいいが、せっかくここまで足を伸ばしたなら、“アートアイランドホッピング”をおすすめしたい。

豊島美術館 写真/鈴木 研一

直島からフェリーで約30分の距離にある豊島。人口約760人という小島だが、ここにも注目すべきアートスポットが複数ある。

たとえば、アーティスト・内藤 礼と建築家・西沢 立衛による『豊島美術館』。瀬戸内海を望む小高い丘の上に建設されたこの美術館は、一滴の雨が地上に最初に落ちた瞬間のような形の建物が特徴だ。

豊島横尾館 写真/山本 糾

他にも、家浦地区の集落にある古い民家を改修してつくられた、アーティスト・横尾 忠則と建築家・永山 祐子による『豊島横尾館』など、見どころは複数。

“現代美術入門”の旅としてもおすすめだ。

『ベネッセハウス ミュージアム』

〒761-3110 香川県香川郡直島町琴弾地
☎ 087・892・3223
開館時間8時〜21時(最終入館20時)
年中無休
鑑賞料大人1,300円(15歳以下無料)

宿泊予約問い合わせ
☎ 087・892・3223(受付時間9時〜20時)
総客室数:65室
※宿泊料金はシーズンで変動あり。公式サイト参照。

『豊島美術館』
〒761-4662 香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607
☎ 087・968・3555
開館時間10時〜17時(最終入館16時30分)/3月1日〜9月30日、10時〜16時(最終入館15時30分)/10月1日〜2月末日
休館日 火曜日(3月1日〜11月30日)、火・水・木曜日((12月1日〜2月末日)
※祝日の場合は開館、翌日休館。ただし、月曜日が祝日の場合は火曜日開館、翌水曜日休館
鑑賞料1,570円(オンラインによる事前予約制)

『豊島横尾館』
開館時間10時〜17時(最終入館16時30分)/3月1日〜10月31日、10時〜16時(最終入館15時30分)/11月1日〜2月末日
休館日火(3月1日〜11月30日)、火・水・木((12月1日〜2月末日)
※祝日の場合は開館、翌日休館。ただし、月曜日が祝日の場合は火曜日開館、翌水曜休館
鑑賞料520円

古都を舞台に新旧の日本のアート、工芸が彩る『エースホテル京都』

1999年にアメリカ・シアトルで若いクリエイター集団によってスタートしたクリエイティブスタジオ『アトリエエース』。開発・運営を手がける系列ホテルは、『エースホテル』を含めアメリカ国内7か所、カナダ、オーストラリア各1か所、そして京都と10か所に及ぶ。

世界中から訪れる旅人たちを瞬時に虜にするのは、アートや音楽を軸に、クリエイティビティあふれるインテリアデザインやコミュニティと結びついた、これまでにないホテルの形だ。

©️Yoshihiro Makino

ゲストルームには、日本を代表する染色アーティスト・柚木 沙弥郎によるアートワークを筆頭に、和紙フロアランプはイサム・ノグチ作、ソファはコミューンデザインほか、笠間焼の湯呑は額賀 章夫、益子焼の小皿は伊藤 丈浩の作品を採用するなど、国内の作家の作品も多い。

©️Yoshihiro Makino

建築家・隈 研吾による外装デザインの監修と内装を手掛けた長年のパートナーであるコミューンデザインとのコラボレーションは、掲げる「East Meets West」というコンセプトを、京都を舞台に見事に具現化。

©️Yoshihiro Makino

今夏からは、新進気鋭のアーティストの発掘・支援を目的とした「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」を開催。世界8か所の『エースホテル』で同時にスタートしたこのプログラムは、世界的現代美術家の村上 隆が率いる『カイカイキキ』による新人アーティストアインキュベーションイベントで「エースホテル京都賞」を受賞した4名が、それぞれ約3か月間の展示期間を設け、作品をお披露目するというもの。

©️Showgo Westfield

「『エースホテル』のこのユニークな伝統では、私たちが活動する都市の多様性を反映し、幅広い分野と視点からアーティストを紹介しています。ドローイング、ペインティングから彫刻、ダンス、体験型サウンドまで、各アーティストが滞在先のホテルのスペースでどのように自分の技術を探求し、私たちの周りのコミュニティが体験できる作品を創作するのか、ぜひ楽しみにしてください」(エースホテル本社 プログラミング&パートナーシップ・マネージャー/トコタ・アシュクラフト)

©Yoshihiro Makino

また、中二階と二階にあるバー&タコスラウンジの『PIOPIKO(ピオピコ)』には、銅で造られたアイコニックなDJブースや『叢-QUSAMURA-』の観葉植物、 陶芸家・浜名 一憲によって造られたセラミックアートなど、アートやアクセントがあちこちに。

アートと音楽を存分に体感することも可能だ。

©Yoshihiro Makino

8月には待望のメインダイニング『KŌSA(コウサ)』もオープン。その名の通り、『エースホテル京都』のコンセプトからヒントを得た“EastとWestが交差(コウサ)する”、“人と人が交差(コウサ)する”、賑わいと交流のある空間を意味しているとか。

食材のすべてを使い切るというサスティナブルなダイニングスタイルで、 京都を中心に関西の農家や生産者から直接取り寄せた食材を使用し、この地でファーム・トゥ・テーブルを実現している。

各国の系列ホテルを泊まり渡る“エースホテルラバー”からも、「京都はスペシャルな場所」と絶賛される『エースホテル京都』。

見知った京都がまた違う魅力を見せてくれるに違いない。

『エースホテル京都』

〒604-8185 京都府京都市中京区車屋町245-2 新風館内
☎︎ 075・229・9000
総客室数:213室
スタンダードキングルーム5万5,935円(税サ込み)〜
「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」
開催期間:2024年7月28日まで
入場料:無料

『PIOPIKO(ピオピコ)』
営業時間12時〜24時(金・土曜日・祝前日〜25時)

『KŌSA(コウサ)』
営業時間18時〜22時

構成・文/一寸木 芳枝