ライフスタイル企画

2023.10.26

スタイリスト川上さやかの仕事服論

スーツのシルエットは永遠に不滅だと思っていませんか?

スタイリストの川上 さやかさんがビジネスパーソンの服装への疑問や迷いを解消し、背中を押すファッションエッセイ。明日の仕事服を選ぶのがラクになり、自信がもてるヒントを教わります。今回は、ジャケットとボトムのセットアップスーツのサイズ選びの正解について教わります。

実は、スーツのサイズ選びには、トレンドが大きく反映されます。ジャケットとボトムという永遠の定番的なアイテムなので、一度買えば消耗するまでずっと着られると思ってしまいがちですが、そんなことはないんです。

特に、女性のスーツの場合は、トレンドが顕著に反映され、何年も前に買ったスーツを着ていると、“古くさく”見えてしまうことも……。
たとえば、以前はやっていたスーツのジャケットは、ウエストがしっかりとシェイプされ、体のラインがしっかりと出るくらいピタピタ感のあるサイズで、袖丈も着丈も短め。ボトムも膝上丈で台形やピタッとしたタイトスカート、パンツなら細身で股上が浅いものが主流。でも、今お店に並んでいるスーツのジャケットは、ウエストのシェイプはほぼなく、ジャケットの肩のラインが自分の肩よりも内に入ることはなく、体のラインがあまり出ない、ボックスシルエットのものがほとんど。袖や着丈も以前よりも長めになっています。
ボトムはスカートの場合、膝下丈であることがほとんどで、パンツもストレートやワイドなど、脚やヒップの形があらわになりすぎないものに変わっています。

つまり、いわゆる“ジャストサイズ”を選ぶことが今のスーツ選びの正解。コンパクトなスーツはサイズが合っていないと判断される要因になってしまうのです。

これは女性だけでなく、男性も同じです。全員ではありませんが、一般的に若い世代の方は体のラインがしっかりと出るシルエットのスーツを選ぶ傾向にあります。これは、細身でコンパクトなスーツがかっこいいという風潮があったからです。一方、年齢を重ねた方は、肩パッドのしっかり入った大きめのダブルブレストのジャケットを愛用している人もいるでしょう。これは、過去にこのようなデザインがはやったからです。また、ゆとりのあるサイズのスーツのほうが肩が凝らなくてラクだから、大きめを選んでいる方もいるでしょう。

ここまで読まれて、「スーツも今のトレンドに合わせる必要がある」と理解された方、もしくは「仕事服にトレンドは必要ないから、自分の場合は気にしなくてよい」と感じた方もいるかもしれません。

今回私が伝えたいのは、ただのトレンドの話ではないんです。“トレンド”と言うと、おしゃれに熱量がある人のものというイメージがあるかもしれませんので、“今の時代の流れ”と言葉を置き換えてみましょう。
「仕事服とは、その場の雰囲気になじみ、誰の目にも感じがよく、きちんと見えること」が最大の優先事項ですよね。今の時代の流れとして、ジャストサイズのスーツが一般的になったところに、ピタピタなスーツを着ていたり、大きすぎるサイズのスーツを着ていたりすると、悪目立ちして、仕事とは関係のないところで人の目を引いてしまいます。おしゃれすぎるモードな服を着ていると、仕事なのに自分の我を出しすぎていると思われてしまうのと同じように。また、体のラインが出すぎるスーツはビジネスマナーとして仕事の場にふさわしくない、大きすぎるスーツはだらしないと思われることもあるでしょう。

だからこそ「今の時代に合ったサイズのスーツ選び」がとても大事なのです。“人は見た目が9割”というのはビジネスの場でも同じです。

これを叶えるための方法は、スーツを定期的に買い替えることです。試着するときは、必ず3サイズ(自分のサイズだと思っているサイズ、ひとつ小さめ、ひとつ大きめ)を持ち込み、着比べましょう。これまで小さめサイズを着ていた人は、こんなに快適になっているのかと驚くでしょうし、大きめサイズを着ていた人は、これまでよりすっきりと見えるはずです。

袖が長すぎることはだらしなく見えるいちばんの要因なので、特に注意して選びます。自分で見えにくい後ろ姿は、お店の方にチェックしてもらいましょう。

プロフィール

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川上 さやか(かわかみ・さやか)
スタイリスト

ファッション雑誌『Oggi』(小学館刊)やファッションブランドのウェブコンテンツなどで活動するスタイリスト。大手銀行の社員からこの仕事に転身した異色の経歴の持ち主。シンプルでベーシックな中にもひとワザ効いたおしゃれさが光るスタイリングや、リアルな仕事服のコーディネート提案が人気。著書『おしゃれになりたかったら、トレンドは買わない。』(講談社刊)も好評発売中。
instagram:@sk_120

イラスト/山口 奈津 構成・文/高橋 香奈子