2022年、丸ビルは開業20周年、新丸ビルは開業15周年を迎えた。
そのアニバーサリーリニューアルとして段階的に行われていた改修工事がまもなく終わる。
この春、丸の内が変わる――。

丸ビル・新丸ビルのリニューアルのコンセプトは「Your Palette ―明日を彩る、わたしを選ぼう。―」。丸の内の街をパレットに見立て、訪れる方々がこの街の要素から好きな色を選び、人生を自らデザインしていく。そんな街にしたいという想いが込められている。

両ビルは三菱地所グループの象徴とも言うべき存在だ。多くの先輩がこれまで築いてきた伝統を受け継ぎ、刷新していくことはただならぬプレッシャーであるに違いない。テナントからもエリア関係者からも、もちろんお客様からも期待がかかる。プロジェクトは2019年に計画が持ち上がり、2020年から本格的にスタートした。

すべてが順調というわけではなかった。新型コロナウイルスが影を落とした。オフィスビルや商業施設の運営管理を行う三菱地所プロパティマネジメント株式会社で飲食・食物販店の誘致を担当した田中 藍さん、物販区画の店舗誘致を行った福田祥子さんは次のように語る。

「市況感も伴い、厳しい業務となりました。コロナ禍で出勤率が回復しきらない中、今後どのような集客施策を取っていくのか、たくさんのテナント様からご質問を受けました。今までとは異なった視点で新しい魅力を発信し、新しいお客様に来ていただくことが重要だと考え、業務を行いました。思わぬ出店キャンセルも発生しましたが、上司や同僚ときめ細かに相談しつつ、新しいテナントの誘致をチーム力でリカバーできたことはとても心強かったです」（田中藍さん）

「過去最大規模のリニューアルのため、会社の想いや大型投資のプレッシャーもある中、コロナ禍により出店のための投資をする企業が少なく、交渉は難航しました。出店予定企業の事業悪化や工事費高騰による出店キャンセルなど想定外のできごとが多くありましたが、関係者一丸となり乗り越えました。目玉となる『TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI』は好評で客数が増え、ビル全体に大きな変化が生まれて、既存テナントからも喜ばれたためうれしかったです」（福田さん）

こうした数々の困難を乗り越えられたのは、チームの根底に丸の内への愛情、思い入れがあるから。田中政志さんは、新丸ビル7階「丸の内ハウス」を中心に、飲食店舗が出店するまでの営業・店舗運営管理面をサポートした。

「丸の内ハウスのゾーンコンセプトは『リアルなつながり&カルチャーの発信』。丸の内に出店するテナントは、売り上げももちろん大切ですが、それ以上に『文化を発信したい』という気持ちが強い。リニューアルを機にその想いを伝えられる場をもっと作っていきたい」（田中政志さん）

大王愛子さんは丸ビルの物販店舗の営業・店舗運営管理とアニバーサリープロモーション担当を兼務。やはり一般的な商業施設の枠組みに留まらない、新たな価値を提供することをめざした。

「コロナ禍で街も変化を求められています。オフィスワーカーの方だけでなく、多様な人々が丸の内に集い、ショッピングや飲食に留まらず、『TSUTAYA』内のシェアラウンジの活用など、それぞれの新しい過ごし方、楽しみ方を見つけていただけるビルであったらいいですね」（大王さん）

服部哲志さんは、丸ビル・新丸ビルがファミリー層も含めて幅広い人々が「来たい」と思う魅力ある場に生まれ変わったという手応えをしっかりと感じている。服部さんは、丸ビルの営繕担当として、施工会社との調整を行い、この大規模工事を進めた。

「共用部の雰囲気がかなり変わったと思います。特にトイレ周りは壁の一部を木調に変更し、あたたかみを感じられる空間に仕上げていますし、ベビールームも拡大。デジタルサイネージを多数配置し、お客様にフロアをわかりやすくご案内しています」（服部さん）

山科宏人さん、志村 翼さんはコロナ禍での就活を経て入社2年目。共用部に係る清掃・警備などビル運営管理に携わる協力会社からの意見を吸い上げ、安全にお客様を迎え入れられるように対応。「リニューアル後『雰囲気が変わったね』とお客様から感想をいただきうれしく思っています」（山科さん）、「就活時から丸の内仲通りが好き。自分が担当した新丸ビル側の仲通りに面した外構部にテラスができ、よりにぎわいを作れたことがうれしかったです」（志村さん）と語る。

丸の内の顔である丸ビル、新丸ビルのリニューアルによって人の流れが変わり、街が変わる。このビッグプロジェクトに携わった社員は100人超という。


「丸ビル・新丸ビルを愛する諸先輩たちにたくさんアドバイスをいただき、100人よりもずっとたくさんの社員、協力会社によって完成できたという感覚です」（田中藍さん）

さまざまな思いがパレットを彩る。そこにいるだけで気持ちが華やぐ、丸の内はそんな街だ。