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2023.11.09

キリンホールディングス

キリンビール仙台工場が操業100周年! 地元に愛され、東日本大震災を乗り越えて次の100年へ

おなじみの「キリン一番搾り生ビール」のほか、「本麒麟」「氷結」を製造し、東北6県および新潟県に出荷しているキリンビール仙台工場。1923年に仙台市小田原で製造を開始し、1983年に現在の仙台港エリアに移転。2023年、操業開始から100周年を迎えた。これを記念して4月4日から12月17日まで「操業100周年記念 感謝イベント」を開催している。

イベントは、「100周年の歴史紹介コーナー」や「キリンビール仙台工場100周年写真館」、「100周年記念撮影パネル」の設置、「SNSキャンペーン」など多岐にわたる。100周年を記念するロゴマークは、宮城県宮城野高等学校の生徒によるデザインコンペを行い、仙台工場の従業員の投票によって決定。工場見学「キリン一番搾りおいしさ実感ツアー」の入口には、仙台の一大イベント「仙台七夕まつり」を象徴する大きな吹き流しが飾られた。これは、従業員一同で心を込めて制作したものだ。



工場見学ガイドの上野 紗央里さんは仙台出身。工場見学の案内業務の傍ら、新人ガイドやスタッフに対し接遇マナーや話し方の指導・アドバイスをするトレーナー業務も担う。

「地元の方や旅行でいらっしゃる方、いつもたくさんの方にご来場いただいています。見学後には『ふだん手に取っているビールがこんなにも時間をかけて、さまざまな人が心を込めて造っているのか』と皆さま驚かれますね。私は製造に携わっている従業員の思いを受け取ってお客さまにお伝えすることが使命であると日々感じながら、ご案内させていただいています」(上野さん)



小学校から高校まで仙台に住んだ経験のある曽山 剛さんは総務広報担当(取材時)。100周年記念式典、七夕飾り、記念品制作、人文字企画、100周年記念誌など、100周年事業のプロジェクト全体を指揮し取りまとめた。

「100年に一回しかない貴重な節目に従業員の総意を形にできる仕事ができたことは大きなやりがいになりました。プロジェクトはただ我々だけで祝うのではなく、100年にわたって1本1本、お客さまに買い支えられていて今があることをしっかりと認識し、その感謝の気持ちをお示しすることを軸に考えました。お客さまには、地元感、安心感、一体感を感じていただきたい。一体感についてはお客さまだけでなく社内の従業員にも持ってもらいたいと考え、忙しくてもちょっとしたことでいいので全員がこのプロジェクトに参加できるように工夫しました」(曽山さん)

100周年委員会メンバーは曽山さんを含めて12人。さまざまな部署から集められた。商品の保管・管理、出荷指示を行う寺田 珠美さんもその一人。メンバーは従業員へ参加を働きかけることもあるため、リーダーシップを見込まれて上長から推薦された。

「生まれ育った仙台ならではの『地元感』を伝えたいと、吹き流しの企画から制作までを担当しました。私を含めて3人のメンバーが中心となり、従業員全員に少しずつ花を作ってもらって全員参加で成し遂げられました。吹き流し作りは初めて。正直、こんなにうまくいくとは思っていなかったので、できあがったときはもう感激でした。家族からも『これ本当に作ったの? 買ったんじゃないの?』と驚かれました(笑)」(寺田さん)

東北のお客様に最も愛され 働きがいのあるCSV先進工場
~皆様との100年の歩み これまでも これからも~

2011年3月11日、仙台工場のある宮城野区は震度6強を観測した。品質保証室に在籍し、工程ごとに化学分析や微生物分析を行っている名生 明美さんは、仙台工場内で被災した。震災前から「津波避難ビル」に指定されていた仙台工場の屋上には、従業員のほか近隣住民も含めて500人近くが避難。日頃の訓練の成果で幸い被災者はいなかったが、揺れの影響で貯蔵タンクが倒壊し、2.5mほどの津波が押し寄せ、工場設備は使用不能になった。

「その日は工場内で一晩を過ごしました。津波に襲われたときはあまりにも非現実的で、ショックというよりも現実を受け入れられない不思議な感覚。あたりが停電で真っ暗になり、ただただ星がきれいで。その中で『みんなでがんばろう』と励まし合いながら過ごしたことが心に残っています。工場の駐車場は一面ビール浸しになり、商品約1700万缶が散乱。もう工場はなくなってしまうのではないかと不安になりましたが、従業員みんなで1缶ずつ拾って清掃し、設備を建て直して、その年の11月に復旧後の初出荷を迎えられたときには涙を流しながらトラックを見送りました」(名生さん)

工場長の末武 将信さんは、横浜工場、名古屋工場、岡山工場や中国広東省の工場での勤務経験もあり、2019年に仙台工場副工場長に着任。2022年に工場長となった。新入社員にも「工場長」ではなく「さん」付けで慕われ、100周年記念撮影パネルにもノリよく登場している。仙台工場の従業員について「しっかりと仕事をするが、アピールが控えめ。地域とともにいろいろとよい取り組みを行っているのだから、もっと発信していきたい」と語る。

「100周年のイベントを通して、『我々は地元の皆さまに支えていただいている』と感じる機会がたくさんありました。仙台工場の歴史を振り返りながら、宮城県知事をはじめ多くの方にお会いしましたが、『キリンさんとは昔こんなことがありましたよ』と逆に教えていただいたり、『あのときはありがとう、これからもよろしく』と言っていただいたりすることがよくありました。100年間という年月の積み重ねにくわえ、震災復興支援を通して、皆さまから『キリンビール仙台工場は地域になくてはならない工場だ』と思っていただけたのではないかと感じています。我々は全国展開している企業ではありますが、一工場ながら地元の会社のように親しまれ、あたたかく固い絆を築いてこられたことは本当にうれしいです」(末武さん)

流した涙が着実に地を固めていった仙台工場。もうこれからの100年に向けて歩み始めている。

キリンアンドコミュニケーションズ株式会社 仙台事業所
上野 紗央里
SAORI UENO

総務広報担当
曽山 剛
TAKESHI SOYAMA

キリングループロジスティクス株式会社 東日本支社 物流管理部 仙台支店
寺田 珠美
TAMAMI TERADA

品質保証室
名生 明美
AKEMI MYO

仙台工場 工場長
末武 将信
MASANOBU SUETAKE

キリンビール仙台工場
100周年実行委員会メンバー

キリンビール株式会社
品質保証室 名生 明美
品質保証室 奥津 夏実
パッケージング課 加藤 真弓
メンテナンス課 町田 純久
醸造エネルギー課 髙橋 直行
総務広報担当 曽山 剛
総務広報担当 木﨑 和之
総務広報担当 成沢 まゆみ
総務広報担当 山田 祥子
工場長 末武 将信
副工場長 木口 秀幸


キリングループロジスティクス株式会社
仙台支店 寺田 珠美


キリンアンドコミュニケーションズ株式会社
仙台事業所 千葉 はる香
仙台事業所 前川 春菜