Challenges for the Future:
助成者インタビュー

地球生命の起源と進化を解明するため、JAMSTECの有人潜水船「しんかい6500」に50回以上乗船し、深海微生物の研究に取り組んできた高井 研氏は、独自の実験装置を開発しながら世界初、太古の地球を模した「隕石-海水衝突」の実験にも挑戦し、有機物の関与を探っています。生命の誕生という誰もが好奇心をかきたてられる疑問の解明に向かう研究の最前線のお話しを聞かせていただきました。

地球の海から宇宙の海へ、生命の起源を求める探究者の旅は続く高井 研氏/国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門 部門長

2400年前のアリストテレスの時代から、人類は生命の起源を追い続けてきました。さまざまな所説が出るなかで、ユーリー・ミラーが1953年に原始地球の大気の組成に似た元素を紫外線や放電で化学反応させ、生命に不可欠な有機物の合成に成功したことは大きなターニング・ポイントになりました。近年では、原始海洋の「熱水噴出孔」から生命が誕生したという説が有力視されています。また宇宙から飛来した隕石にも有機物が含まれており、原始海洋への隕石衝突が生命の起源につながったという根強い説もあります。そこで今回は、三菱財団が助成を通じてお手伝いさせていただいた「生命の起源と進化のカギは地球外天体の海洋衝突にあったのか?」という疑問に答える画期的な実験を中心に、国立研究開発法人 海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)の高井 研氏【写真1】にお話を伺いました。

【写真1】国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門 部門長 高井 研氏と写真左手研究推進部研究推進第1課 野中 裕子氏
【写真1】国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門 部門長 高井 研氏と写真左手研究推進部研究推進第1課 野中 裕子氏

最も古い生物の共通祖先“LUCA”を求め、何千里の深海で探査が続く

JAMSTECの高井 研氏は深海における微生物研究の第一人者ですが、京都大学の学生時代から「超好熱菌」の研究に没頭してきました。超好熱菌とは、80℃以上の高温熱水環境で育成される微生物のこと。実は卒業論文のテーマ選びで迷っていたときに、友人から「これが地球生命の誕生ストーリーに関係しているのではないか?」とアドバイスをもらったことがきっかけで、超好熱菌の研究にのめり込んでいったそうです。

高井氏は「そこから研究テーマを生命の起源に絞りました。とはいえ、アリストテレスの時代から探究されてきた生命の起源が、そう簡単に解けるものではないことは、よくわかっていました。この問題は、あくまで研究者の最終的な目標として漠然に考えていたのです」と振り返ります。

“生命の起源”という壮大な研究テーマが現実的なものになり始めたのは、国立研究開発法人 海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)に入所してからのことでした。

「ただ当初は、生命の起源というよりも、最も古い生物の共通祖先“LUCA”(Last Universal Common Ancestor)が、40億年前の深海熱水噴出孔に存在していたのか? という点を中心に研究していました」(高井氏)

深海熱水周辺の地産地消で生命が誕生したという「JAMSTECモデル」

深海熱水噴出孔とは、海底から浸み込んだ海水が地中熱で温められ、熱水が噴き出す場所。熱水には多くの元素が溶け込んでおり、海中に放出されて冷やされた金属が鉱物として沈殿して堆積します。この堆積物が円柱状になったものが「チムニー」【写真2】です。

2002年には、高井氏らのグループは、JAMSTECが誇る有人潜水船「しんかい6500」【写真3】によって、「インド洋かいれいフィールド」と呼ばれる海嶺(海洋プレートが両側に引っ張られ、海洋底が新たに生み出される場所)を調査し、深海のチムニーで超好熱菌を発見し、その深海熱水環境で太古地球と同様の「ハイパースライム」と呼ばれる生態系が存在することを突き止めていました。

【写真2】深海熱水噴出孔から噴き出す熱水が冷やされ、熱水に含まれる金属が鉱物として沈殿し、円柱状に堆積した「チムニー」が形成される。チムニーは性能の良い燃料電池の役割を果たし、化学反応や代謝を促す(提供:JAMSTEC)。
【写真2】深海熱水噴出孔から噴き出す熱水が冷やされ、熱水に含まれる金属が鉱物として沈殿し、円柱状に堆積した「チムニー」が形成される。チムニーは性能の良い燃料電池の役割を果たし、化学反応や代謝を促す(提供:JAMSTEC)。

このチムニー周辺に棲む超好熱菌は、太陽光が届かない深海の極限環境下でも、熱水に含まれた水素やメタンなどをエネルギー源として、化学合成された栄養素(有機物)を作り出します。それを食べる微生物、さらにその微生物を食べる微生物が集まり、地球内部の物質だけの独立したエコシステムとして、ハイパースライムを構成していくのです。

高井氏らは独自の装置などを考案し、さまざまな実験を積み重ねながら研究を続け、最終的に2015年に「生命誕生と最終的な生命製造の場は深海熱水活動域である」という「JAMSTECモデル」を発表し、世界的に支持されるようになりました。

「JAMSTECモデルは、生命材料が地産地消で作られる伝統的な地球起源説を強力に裏付けるものです。地球の生命は地球の有機物を使って、深海熱水の周辺で誕生したという説ですが、もしかすると少しだけ宇宙由来の有機物が使われた可能性があるかもしれません」(高井氏)。

そこでJAMSTECモデルの「生命材料の地産地消論」を強化するために、高井氏らのグループは反証実験を2016年から始めました。

【写真3】有人潜水船「しんかい6500」による深海探査。支援船の「よこすか」で深海付近の海に運ばれる。しんかい6500は文字通り、水深6500mまで潜れる。高井氏は50回以上も、この潜水船に搭乗した(提供:JAMSTEC/NHK)。
【写真3】有人潜水船「しんかい6500」による深海探査。支援船の「よこすか」で深海付近の海に運ばれる。しんかい6500は文字通り、水深6500mまで潜れる。高井氏は50回以上も、この潜水船に搭乗した(提供:JAMSTEC/NHK)。

世界初! 太古の地球を模した「隕石-海水衝突」で有機物の関与を探る

それが、三菱財団が助成した「隕石-海水衝突再現実験による有機物化学編成の解明と生命誕生の“宇宙有機物起源説”の検証」という研究でした。研究タイトルは非常に難しいのですが、ごく簡単に言うならば「原始の海洋に隕石が落ちたとき、その衝突が生命の起源と進化のカギになるのか?」という根源的なもの。宇宙飛来の有機物が、生命誕生にどんな影響を与えるのかを探る研究です。

これまでの研究から、海洋への隕石衝突が生命の起源や絶滅に関わったと唱える研究者も多くいます。生命の起源という点では、38~40億年前の地質から最古の生命活動の痕跡が発見されていますが、なぜその頃に生命が誕生したか、正確なことまではわかっていません。大量の隕石が地球に降り注ぎ、その隕石に含まれる有機物が生命の材料になったという説もあります。

こういった説を検証するために、多くの大学や研究機関で既に衝突実験が行われてきました。では、なぜ敢えてJAMSTECが再実験を行ったのでしょうか? 実は従来の実験は“固体-固体”の衝突を検証したものでした。つまり隕石が地球の陸地に衝突するということが前提です。しかし高井氏は次のように説きます。

「40億年前の地球は、ほとんど海に覆われて陸地は少なかったはず。だからこそ、海に隕石が落ちることが前提の“固体-液体”の衝突実験を行って、物理化学的な現象を調査することに意味があるのです。従来までは宇宙科学研究者が、“固体-固体”の衝突実験しか行っていませんでした。そこで我々が世界で初めて、この実験を試みたわけです」(高井氏)

JAXA・ISASの「垂直型超高速衝突実験装置」で、隕石を海水に衝突させる共同実験を敢行

とはいえ、海を前提にした実験を行うには、弾を高速で水面に衝突させる特殊な装置が必要でした。国内の実験装置は、横から弾を標的に当てる水平型の銃を採用していました。しかし今回の実験は水が標的。水を水平に置くことはできません。そこで縦型の銃で、上から下に向かって弾を当てる垂直式の銃を設置した実験装置が求められました。

高井氏は「垂直型の実験設備で超高速な実験ができるのは、NASAの研究センターなど世界でも数えるほどで、日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)にしかありません。そのため同研究所の共用設備の垂直型超高速衝突実験装置を使わせてもらって、共同実験を行うことになりました」と実験の経緯を振り返ります【写真4】。

【写真4】JAXA宇宙科学研究所の共用設備「垂直型超高速衝突実験装置」の外観と構成図。秒速5~6kmという超高速で垂直に発射できるのは国内でこの装置だけ。本物の隕石を弾にした衝突実験も世界初。
【写真4】JAXA宇宙科学研究所の共用設備「垂直型超高速衝突実験装置」の外観と構成図。秒速5~6kmという超高速で垂直に発射できるのは国内でこの装置だけ。本物の隕石を弾にした衝突実験も世界初。

この衝突実験装置の水素ガス銃は、秒速5~6kmという超高速で弾を発射できます。東京-大阪間を80秒で走り抜ける速さです。一般的な銃弾が秒速500mなので、いかに高速なのか理解できるでしょう。ちなみに隕石が地球の海洋に衝突する際の速度は、秒速1km以上、平均秒速10km~20kmほどです。

前出の通り、陸上に比べて海洋への隕石衝突は高頻度に起きたと予測されています。これが、地球外有機物の運命を決めてしまう可能性があるのです。どういう物質が水に溶けるか、分解するか、あるいは気化して大気に出るのかで、その命運が分かれます。そこで本研究では、小惑星を模擬した直径2mmの弾を水面に衝突させました。

高井氏は「ただし地球に来るものは隕石だけとは限りません。宇宙塵にも有機物が多く含まれており、実際に隕石より高頻度で飛来しています。しかし、いくら有機物の量が多くても、これらは質的にはタールやススのようなものばかりで、生命の材料としては使いやすいものとは言えません」と付け加えます。

そのため、ここでは隕石に絞って実験を行い、隕石を加工した弾を使用しているのです。こういった本物の隕石を弾にした衝突実験も、いままで実施されたことがない初の試みでした。ただJAMSTECでは、このような実験準備を進めると同時に、前段階として模擬海洋衝突用の特殊水槽の開発も必要でした。

1年ほど試行錯誤を重ねながら三菱財団の助成金で、模擬海洋衝突実験用の回収装置を開発

もう少し実験装置を詳しく見てみましょう。図のように発射装置の下側には、真空チェンバー(容器)があり、その内部に模擬海水を入れて、水中に弾を打ち込む形になります。衝突実験を真空で行うのは、そうでないと衝突時に爆発してしまうためです。ただJAXAの設備は、液体標的には対応していませんでした。そこでJAMSTECは、1年ほど試行錯誤を重ねながら三菱財団の助成金を活用して、模擬海洋衝突実験ができる特殊水槽も開発することに成功しました【写真5】。

具体的にはゲートバルブ(弁)を有した自動開閉式容器で、弾が衝突して蒸気雲が膨張するのに十分な空間をもつステンレス製とし、容器上部に自動/手動のゲートバルブを装着。その下にマイラー(膜)を置き、さらにその下に海水と鉄板入りの容器が設置されました。

「この状態で海水と鉄板に向けて弾を発射します。自動開閉式容器を通過した瞬間にゲートバルブが閉じ、衝突で飛散した水や有機物が外に逃げないようになっています。また真空チェンバーの外側の窓に100万分の1秒間隔で撮影できる超高速カメラを付け、弾の挙動をリアルタイムで撮影・計測しました」(高井氏)

【写真5】垂直型超高速衝突実験装置の全体図(左)と、真空チャンバー内部に設置された、模擬海洋衝突実験用の特殊水槽(右)。自動開閉バルブ(ゲートバルブ)が装備され、容器に弾(隕石)が通過した瞬間にゲートバルブが閉じて、飛散した水や有機物が外に逃げないようにする仕組み(提供:JAMSTEC)。
【写真5】垂直型超高速衝突実験装置の全体図(左)と、真空チャンバー内部に設置された、模擬海洋衝突実験用の特殊水槽(右)。自動開閉バルブ(ゲートバルブ)が装備され、容器に弾(隕石)が通過した瞬間にゲートバルブが閉じて、飛散した水や有機物が外に逃げないようにする仕組み(提供:JAMSTEC)。

隕石の海洋衝突によって、宇宙からの有機物が生命材料になりえるという意外な結果へ

従来の“固体-固体”での衝突では、瞬間的に高エネルギーが発生し、超高温・高圧になるため隕石の有機物は木端微塵になってしまいます。しかし、この実験から判明したことは“固体-液体”の衝突の場合、水がクッションとなり、粉々にはならずに、有機物が生命材料として使えそうという意外な結果でした。

たとえば、水底の鉄板に直径2mmの隕石を毎秒5.5km付近の速度で衝突させたとき、水深による超高速カメラの弾痕は次のようになったそうです【写真6】。水なしの場合は鉄板に弾が貫通しますが、水深が10mmのときは、弾は鉄板までは辿りつかず、細かい欠片の痕跡が付く程度になりました【写真7】。

「水中に衝突した瞬間に、弾の周りにカプセルのような衝撃波が広がります。その後、弾が飛び散りますが、重要な点は弾が装置の底の鉄板に届かず、衝突が起きないこと。ある程度の水深になると隕石は海底には届かないことを示しています。隕石中に有機物があったら、それが海底に広く拡散することになります」(高井氏)

ただし、この衝突によって隕石の有機物が水にすぐに溶けるという意味ではありません。とはいえ、隕石と水が衝突する瞬間に、水は高温高圧下で液体でも蒸気でもない「超臨界水」になり、水と有機物の化学反応が起きやすくなります。

「そのため水質変容について着目する必要があります。これによりタールのような宇宙有機物が、丁度良い感じに細かく分解されて水に溶解し、生命材料として使いやすい品質の改善がみられる可能性はあります。これらの詳細な分析は、これから進めていく予定です」(高井氏)

このプロジェクトが始まって4年が経ちましたが、まだ研究は道半ばであり、これからも続いていきます。今回の論文のアクセプトにも約1年間の時間がかかったそうです。

高井氏は「これまで誰もやったことのない初めての実験や研究は、1~2年で達成できるものではなく、それなりに時間がかかります。こういった長い時間を要する研究の支援を得るのはなかなか難しいので、三菱財団に助成してもらい本当に助かりました。そして、ちょうど論文がアクセプトされたタイミングで、こうしてご報告できる機会を与えて頂いたことも大変嬉しく、改めて、三菱財団、三菱グループの皆様には感謝申し上げたいと思います。今後は、隕石の中にあった有機物の何%が窒素になって大気にまぎれてしまったのか、また何%がアンモニアになったのか、何%が水に溶ける有機物になったのかを、定量的に検証していきます。アンモニアならば微生物が糧にできます。宇宙由来の有機物を食べていないことを証明するためにも、量論を明らかにしたいと考えています」と力強く語ります。

【写真6】水深の違いによる超高速カメラの弾痕を比較したもの。左上の1の写真では毎秒5.5km前後のとき、水なし(No water)では弾は鉄板に貫通する。左下の5の写真ではH/d=5、すなわち弾の5倍の水深で、弾は鉄板までは辿りつかず、細かい欠片の痕跡が付く程度となる(提供:JAMSTEC)。
【写真6】水深の違いによる超高速カメラの弾痕を比較したもの。左上の1の写真では毎秒5.5km前後のとき、水なし(No water)では弾は鉄板に貫通する。左下の5の写真ではH/d=5、すなわち弾の5倍の水深で、弾は鉄板までは辿りつかず、細かい欠片の痕跡が付く程度となる(提供:JAMSTEC)。
【写真7】実験結果の弾痕。水なしの場合は鉄板に弾(隕石)が貫通しているが、水がある場合は弾が鉄板まで届かないことがわかる。弾の大きさの5倍の水深では、隕石は鉄板にほとんど届いていない(写真左)(提供:JAMSTEC)。
【写真7】実験結果の弾痕。水なしの場合は鉄板に弾(隕石)が貫通しているが、水がある場合は弾が鉄板まで届かないことがわかる。弾の大きさの5倍の水深では、隕石は鉄板にほとんど届いていない(写真左)(提供:JAMSTEC)。

さらなる生命の起源を求めて、宇宙の海の探索を日本の力で実現したい

現在、高井氏らの研究グループは、生命の誕生の謎を他の惑星の海にも求めています。これまで生命の起源が解けなかったのは、その検証ができなかったからです。いま地球上に人間は存在していますが、たまたま1回だけ生命が出現し、現在まで進化してきただけなのか、あるいは地球のような深海熱水噴出孔が他の惑星にあり、そこから同様の生命が生まれているのか?その興味は尽きません。

「生命の誕生が必然か?偶然の賜物か?ということがわかって、初めて生命の起源を解き明かすことができます。我々の研究から、共通祖先が深海熱水噴出孔の周辺に暮らしており、無機質から生命誕生へのステップが熱水活動域で起きた可能性が高いことはわかってきました。これは条件が整えば、どこでも生命が誕生するという必然説です」(高井氏)。

実は、いま地球外生命の期待が高まっている有力な惑星があります。土星の衛星・エンケラドスや、木星の衛星・エウロパなどです。特にエンケラドスは、NASA/ESAが打ち上げた惑星探査機「カッシーニ」が近づき、厚い氷の地殻の下に、大規模な地下海があることが判明しています。エンケラドスの表面には巨大な間欠泉があり、水蒸気と氷の粒子を地下海から宇宙空間に噴出している様子も撮影されました。

さらにカッシーニから送られてきたデータから、エンケラドスで複雑な有機物が生まれていることもわかったそうです。つまりエンケラドスにある地下海は生命に適した条件、熱水噴出孔がある可能性が示唆されているのです。高井氏は、日本自身の手で、エンケラドスまで行って、惑星の有機物をサンプルリターンできないかと期待を寄せています。

「自分が現役中に実現することは難しいかもしれませんが、若手研究者が実現してくれるかもしれません。数千億円という資金がかかる巨大プロジェクトですが、人類の悲願だと思っています。いつか企業や個人の力を借りて、オールジャパンで実現できることを願っています」と抱負を語ってくれました。


プロフィール

国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門 部門長
高井 研氏(たかい けん)氏

1969年京都府生まれ。京都大学大学院農学研究科水産学専攻博士課程修了、博士(農学)。2000年、海洋科学技術センター(現海洋研究開発機構)入所。以後、JAMSTECにて主に深海の微生物について研究を推進。これまで50回以上も有人潜水調査船での潜航調査を実施してきた。専門は微生物学。超好熱菌の微生物学、極限環境の微生物生態学、深海・地殻内生命圏における地球微生物学を経て、地球生命の起源・初期進化における地球微生物学、太陽系内地球外生命探査に向けた宇宙生物学の研究などを行っている。

本件の研究論文

詳細はこちら。オープンアクセスで誰でも閲覧できます。

【コラム】隕石が海洋と衝突する際にできるクレータリング

隕石が海洋に衝突する際には、「クレータリング」と呼ばれる海底掘削が起きることがあります。高井氏らのグループでは、今回の研究で、このクレータリングができるための条件式も導出しています。ここでは詳細の式は割愛しますが(上記、論文を参照のこと)、たとえば水深3000mの海洋に毎秒20kmの隕石が衝突するときは、直径500m以上の大きさの隕石でなければクレータリングが起きないことがわかりました。これは従来の通説よりも大きい値です。

実際に深海でクレータリングができるほどの大きな隕石衝突の痕跡は、これまで1例しか発見されていないそうです。ただし、直径が小さい隕石ほど地球に衝突する頻度が高くなるため、もし500m以内の小さな隕石が海洋に落ちた場合には、良い感じで隕石が小さく砕け散って海水と混ざりあい、水質変容を起こす可能性はあります。生命が誕生する材料ができる要因の1つになるかもしれないため、本研究で引き続き定量的な分析を行っていくそうです。

天体(隕石)が海洋に衝突すると 「クレータリング」と呼ばれる海底掘削が起きることがある。ただし現時点では、浅い沿岸域で掘削の痕跡はあるが、深海でのクレータリングはほとんど発見されていない(提供:JAMSTEC)。
天体(隕石)が海洋に衝突すると 「クレータリング」と呼ばれる海底掘削が起きることがある。ただし現時点では、浅い沿岸域で掘削の痕跡はあるが、深海でのクレータリングはほとんど発見されていない(提供:JAMSTEC)。

取材を終えて…

今回のインタビューは2回目の緊急事態宣言下、オンラインで行わざるを得ませんでしたが、画面越しにもかかわらず、高井先生のお話は大変面白く、また、研究に向けられた情熱も強く伝わってきました。「生命の起源」というミクロの存在に「宇宙」というマクロの視点を織り交ぜ、時空を超えて展開する先生のお話を伺い、学術研究の素晴らしさ、奥深さを感じさせるエキサイティングな時間を過ごしました。

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