みつびし みてきた!

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vol.13 旧岩崎家茅町本邸

こんにちは! 事務局のカラットです。東京都内にある庭園・公園の中に、「都立9庭園」と呼ばれ、国や都の文化財となっている名園が9つあります。そしてその9庭園のうち実に4つは、もとは三菱を創業した岩崎家が所有していたものなんです。今回はその庭園のひとつ、旧岩崎邸庭園、またの名を旧岩崎家茅町本邸をご紹介いたします!

「三菱紳士」が暮らした邸宅

洋館・和館からなる旧岩崎家茅町本邸。門から入るとまず洋館の威厳のある姿が目に飛び込んでくる。
洋館・和館からなる旧岩崎家茅町本邸。門から入るとまず洋館の威厳のある姿が目に飛び込んでくる。

事前アンケートでは「知らない」と回答された方も多かった「旧岩崎家茅町本邸」ですが、「旧岩崎邸庭園」の名称の方になじみがある方もいらっしゃるかもしれません。「茅町(かやちょう)」とは、現在の東京都台東区池之端あたりの旧地名です。高田藩榊原家の江戸屋敷だったものを、明治11年に初代社長の岩崎彌太郎が購入して住まいとし、「茅町本邸」と呼ばれるようになりました。そして彌太郎没後の明治29年、長男で三代社長の久彌が洋館・和館からなる邸宅に建て替え、現在の姿の礎となっています。

現在の旧岩崎邸庭園の土地は、実際に岩崎家が邸宅として使用していた敷地のごく一部に過ぎず、かつての庭にはテニスコートや茶室、厩舎、ランの温室などもあったと言いますから、とてつもない広さだったことがうかがい知れますね。

久彌はこの屋敷に50年にわたり暮らしていました。第二次大戦後のGHQへの接収を経て邸宅は国の財産となり、現在は重要文化財として一般に公開されています。そこで、「三菱紳士」と呼ばれた久彌の人柄や、明治期の日本政財界の空気感に触れられる茅町本邸に、現代の三菱庶民のわたくしがお邪魔してまいりました!

「社長」の洋館と「家長」の和館

大きな袖塀(重要文化財)とそこに刻まれた岩崎家の家紋「重ね三階菱」。
大きな袖塀(重要文化財)とそこに刻まれた岩崎家の家紋「重ね三階菱」。

正門を通り、緩やかで長いアプローチを歩いていくと、まず見えてくるのが大きな袖塀。ここにはスリーダイヤの基となった岩崎家の家紋「重ね三階菱」が刻まれ、岩崎家のお屋敷に来たぞ!という気分が盛り上がります。表玄関で靴を脱ぎ、「おじゃまします」と洋館から見学スタートです。

洋館を設計したのは三菱とゆかりの深い日本近代建築の父、ジョサイア・コンドル。この「みてきた!」シリーズでも、「三菱一号館」の回にすでに登場しています。玄関のステンドグラスに始まり、大理石の暖炉、装飾の美しい飾り柱、エキゾチックなベランダタイル、花型の傘が可憐なライト、各所に設置されたスチーム暖房器に至るまで、どこを見ても繊細な意匠で彩られ、まるで館全体が美術館のようです。西洋式のデザインや調度が多い中にも、日本刺繍が施された布張りの天井や、日本独自の金唐革紙(きんからかわし)の壁紙など、日本が生んだ美しさも取り入れられています。

飾り柱、タイル、ライトと金唐革紙の壁紙、スチーム暖房器のレリーフ。館の随所に美しさがちりばめられている。
飾り柱、タイル、ライトと金唐革紙の壁紙、スチーム暖房器のレリーフ。館の随所に美しさがちりばめられている。

洋館の傍らには、可愛らしい山小屋のような建物が一棟。こちらは「撞球室(どうきゅうしつ)」。撞球とはビリヤードのことで、つまりここはビリヤードのための小屋なのです。しかも、本館とは地下通路でつながっているというから驚きです! 雨の日も濡れることなくお客様をこちらへ案内し、ビリヤードに興じながらさまざまな話をしていたのでしょうね。撞球室は通常非公開ですが、毎月第2木曜日には特別ガイドツアーが実施されているそうです。毎回先着順とのことなので、ご興味のある方はお早めに現地まで!(※8月はガイドツアーはお休み)

洋館と地下通路でつながれた撞球室。スイスの山小屋をイメージして建てられた。
洋館と地下通路でつながれた撞球室。スイスの山小屋をイメージして建てられた。

さて、洋館がおもてなしを主目的に作られていることはわかりましたが、ではここに50年住んだ久彌とその家族は一体どこで生活を?というと、洋館の奥に一本の渡り廊下が。ここから世界はがらりと変わり、その先には純和風の邸宅が待ち構えていました。こちらが岩崎家の生活スペースで、現存しているのは残念ながら三部屋のみですが、節目ひとつない桐を使った欄間や、近代日本画の育ての親ともいわれる橋本雅邦の絵などで彩られ、洋館の華やかさとは異なる落ち着いた静粛さの中にも、凛とした品格を感じます。

(左)洋館と和館をつなぐ、舟底天井の渡り廊下。この先は家族のプライベートスペースだった。(右)欄間や襖の引手など、あちこちに重ね三階菱をモチーフにした菱紋が。
(左)洋館と和館をつなぐ、舟底天井の渡り廊下。この先は家族のプライベートスペースだった。(右)欄間や襖の引手など、あちこちに重ね三階菱をモチーフにした菱紋が。

そして和館にはひとつのお楽しみがあります。題して「菱紋を探せ!」。岩崎家の家紋「重ね三階菱」を基調にした装飾が、欄間に、ふすまに、柱にと、あちらこちらに施されているのです。ぐるっと見回して探してみましょう! 和館の中にはちょっとした喫茶もあり、抹茶やコーヒーのほか、久彌が愛した小岩井農場のチーズケーキも楽しめますよ。岩崎家の和室で一服なんて、贅沢なひとときですよね。

和館から日本庭園へ降りて進むと、そこは広々とした芝生の庭。かつてこの地からは富士山まで見えたのだとか。庭は家族の憩いの場所であり、ここで撮られた岩崎家の写真も多いのだそうです。戦争を経たため当時のままの姿ではないものの、空襲や関東大震災の際には、久彌はこの庭を近隣の人々に解放して炊き出しをおこなったという逸話が残っています。

旧岩崎家茅町本邸

庭に面した洋館のサンルームには久彌社長を中心とした家族写真が飾られています。三菱ゆかりの施設には様々なものが残されていますが、岩崎久彌という人物を、いちばん深く、そして近くに感じられるのが、ここ茅町本邸ではないかと思いました。ぜひお時間のあるときに、ゆったりとこのお屋敷の空気を感じに訪れてみてください。

東京都台東区池之端一丁目

開園時間:午前9時~午後5時(入園は午後4時30分まで)
休園日:年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
入園料:一般400円/65歳以上200円/小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料
お問い合わせ:03-3823-8340(旧岩崎邸庭園サービスセンター)

注:本文中の情報等はいずれも2017年7月現在のものです。