みにきて! みつびし

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首都圏のエネルギーを担う「グリーンファクトリー」

JXTGエネルギー(現:ENEOS) 根岸製油所

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こんにちは! 事務局のカラットです。2011年の東日本大震災では、直後から首都圏でもガソリン不足が問題となりました。そんなとき、「ENEOS」マークのタンクローリーが力強く走る姿を目にして、「頼もしい!」と思ったことをよく覚えています。今回は首都圏のエネルギー需要に日々力強く応えている、JXTGエネルギーの根岸製油所におじゃましました!

根岸駅ホームにずらりとならぶ「ENEOS」マークのタンク車群。線路の向こう側に製油所がある。
根岸駅ホームにずらりとならぶ「ENEOS」マークのタンク車群。線路の向こう側に製油所がある。

1964年に創設された根岸製油所の特徴のひとつは、住宅地との距離が非常に近いことです。神奈川県横浜市内のJR根岸駅を挟んですぐ向こう側には店舗やマンションが立ち並ぶという立地条件から、安全・環境に極めて強く配慮した、「都市型製油所」となっています。そんな根岸製油所では関係企業や官公庁などのほか、地域の小学生も対象に見学会を実施されており、今回はそちらに参加させていただきました。

乗車したJR根岸線が根岸駅構内に入ると、駅と並行して線路が何本も並び、そこには何両もの「ENEOS」マークのタンク貨車が。さっそくわくわくしてきました。駅を降り、住宅街を抜け、高架下をくぐればすぐに、「JXTGエネルギー根岸製油所」が見えてきます。

見学ツアーではまず、ホールで製油所の紹介映像を観覧し、その後さらに丁寧な解説をお聞きして施設や使われている装置への理解を深めます。原油から石油やガソリンなどの石油製品ができるまで…遠い昔に授業で習ったはずのことがすっかり頭から抜けていた私は、「そうだったのか!」とさっそく賢くなった気分になりました。

根岸製油所は「グリーンファクトリー」として安全・防災面や環境への配慮に力を入れています。大気汚染対策や防音などあらゆる取り組みが評価され、環境マネジメントシステムに関する規格「ISO 14001」を石油業界では日本で初めて取得したことからも、その意識の高さがわかりますね。

こうして基礎知識を学んだところで、マイクロバスに乗り込んでいよいよ実際の構内見学へと向かいます!

すべてが巨大! 大迫力の製油所見学ツアー

JXTGエネルギーは北海道、宮城、茨城、千葉、神奈川、愛知、和歌山、大阪、岡山、山口、大分の各所に、全16カ所の製油所・製造所を保有しています。この中にあって横浜市にある都市型製油所と聞くとコンパクトな敷地なのでは?と想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。それどころか、日本で第2位の規模を誇る製油所なのです。開設以降2回の拡張を経て、現在は220万平方メートルという広大な敷地となり、1日24時間体制で、ガスからアスファルトまで幅広く製造しています。

そんな広い敷地なので、見学者が安全のためにもバスに乗るのはもちろん、職員の方も構内の移動手段は車やバイク。見学中もたくさんのバイクとすれ違いました。

中央の塔が高さ50メートルの常圧蒸留装置。この中で原油を沸点別に分留する。根岸製油所の「顔」とも言えるベテラン設備。
中央の塔が高さ50メートルの常圧蒸留装置。この中で原油を沸点別に分留する。根岸製油所の「顔」とも言えるベテラン設備。

出発したバスが最初に向かうのは、敷地に入ったときから正面に見えていた背の高い設備。こちらは「常圧蒸留装置」と呼ばれます。タンカーで海から運ばれてきた原油は、太さ1メートルのパイプを通ってまず原油タンクに貯蔵され、それからこちらの装置内で350℃以上の高温で熱します。原油には様々な成分が含まれており、その沸点の違いを利用してガス、ガソリン、灯油、軽油、残油に分けて取り出され、それぞれをさらに別の装置で加工することにより、最終的にLPガス、車や飛行機の燃料、重油、潤滑油、アスファルトなどに姿を変えていきます。

この常圧蒸留装置は根岸製油所の創設当時からの古株。製油所の巨大な装置群は簡単に製造、交換できるものではないため、メンテナンスを重ねて大切に使用されているのだそうです。錆びた外観にも、その歴史とたくましさを感じます。

メンテナンス中の原油タンク。細かい紗のように見えるのは足場。タンクの大きさがうかがえる。
メンテナンス中の原油タンク。細かい紗のように見えるのは足場。タンクの大きさがうかがえる。

続いて見学したのは原油タンク群。敷地内には全部でなんと335個ものタンクがあり、そのうち原油タンクは一番大きいものだと野球場のグラウンドがすっぽり入るほどの規模になります。タンク火災など万が一の有事の際には、すぐに泡消火システムが稼働して鎮火にあたり、またその熱で周囲のタンクに拡大するのを防ぐため、周辺タンクも散水栓が開き冷却されるシステムになっているのだそうです。写真のタンクはちょうどメンテナンスの最中のもので、壁が赤く見えるのは防錆塗料の色です。こうしたメンテナンスに加えて施設内には自営の消防団もあり、万一のときにも迅速に対応するための訓練が日々おこなわれているとのこと。頼もしいですね!

原油を運んできたタンカーが停泊中(さらに偶然にも日本郵船所有の船でした)! タンカーの全長は東京タワーの高さとほぼ同じ。
原油を運んできたタンカーが停泊中(さらに偶然にも日本郵船所有の船でした)! タンカーの全長は東京タワーの高さとほぼ同じ。

さらに施設内を走り、今度は海側へ。すると桟橋に停泊する巨大タンカーの姿が! 幸運にもタンカーが停泊して原油をおろす作業を見学することができました。タンカーに大きなアームを接続し、パイプを通して原油をさきほどのタンクまで運びます。作業中はもしもに備え、船の周りに「オイルフェンス」と呼ばれる防油のための太いリボンのようなものを張り巡らせ、さらに消防艇が周囲を航行しています。なお「真っ最中」と書きましたが、この作業、何しろ膨大な量の原油をおろすわけですから、不休で作業を続けて2泊3日かかるのだそうです。

同時に28台のタンクローリーに積み込みが可能。ここから街のサービスステーションなどへ運ばれていく。
同時に28台のタンクローリーに積み込みが可能。ここから街のサービスステーションなどへ運ばれていく。

硫黄の匂いが漂う脱硫装置のそばを抜け、見えてきたのは大きな大きな給油所のような設備。こちらはサービスステーションなどに届けるガソリンや軽油、灯油などをタンクローリーに積み込むところです。機械化により運転手さん一人ですべての作業を行なえるそうで、セルフ式給油所の親分といった具合でしょうか。

そして最後に見学したのが、根岸駅から見えたタンク車群。突然ですが問題です。このタンク車一両で、タンクローリーと比べてどのぐらいの量のガソリンを運べるでしょうか? 私は一両でタンクローリー一台と同じ?と思っていたのですが、なんと3台分に相当するのだそうです。あまり間近では見られないタンク車ですが、何両も連なって走る貨物列車には、大変な量の燃料油が積まれていたのですね。根岸製油所からは、主に関東一円へと出荷しているそうです。

錆びた配管が複雑に入り組んだ巨大装置の数々。「工場萌え」にはたまらない?!
錆びた配管が複雑に入り組んだ巨大装置の数々。「工場萌え」にはたまらない?!

製油所には、広さから装置の大きさ、一つ一つの物事の単位に至るまで、すべてが「大きい!」が詰まっていました。いつも遠くから「あれは何の設備なのだろう?」と思うだけだった製油所内の巨大装置ひとつひとつが、私たちの暮らしと社会を支え、そのひとつひとつに安全への細心の配慮が払われていることを知ることができた見学会でした。



注:本文中の情報等はいずれも2018年5月現在のものです。

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