みつびし みてきた!

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vol.28 旧岩崎家深川別邸・都立清澄庭園

こんにちは! 事務局のカラットです。東京都の9つの都立庭園のうち、実に4つは三菱ゆかりの庭園です。当「みつびし みてきた!」ではこれまで、旧岩崎邸庭園(旧岩崎家茅町本邸)六義園(旧岩崎家駒込別邸)の2か所をご紹介しました。今回は都立庭園シリーズ第3弾として、旧岩崎家深川別邸、現在の清澄庭園へ行ってまいりました!

国賓接待や社員親睦に使用された迎賓館

三菱創業者・岩崎彌太郎は、「他に特別の趣味もないが、これが余の唯一の趣味である」(『岩崎彌太郎伝(下)』)と述べたほどの庭好きでした。その彌太郎が1878(明治11)年に六義園、茅町本邸とともに購入したのが清澄庭園です。現在の清澄庭園の面積は約3.7万平米ですが、購入当時は約10万平米(3万坪)の広さだったそうです。ここに彌太郎は全国から名石を運び入れ、庭造りを行ないました。

関東大震災で焼失してしまったが、かつてはジョサイア・コンドル設計の洋館があった。正装姿の人々が集う、当時の貴重な写真(公益財団法人静嘉堂所蔵)

駒込別邸(六義園)が主に私的に使用されたのに対し、深川別邸は社員の親睦と賓客接待の迎賓館として使用されました。開園当初の名称は「深川親睦園」。それまで賓客の接待といえば料亭を使用するのが一般的でしたが、彌太郎は欧米社会のような社交習慣が良いと考え、親睦園でガーデンパーティを開いたりしたのだそうです。「欧米のような社交の場」といえば鹿鳴館が有名ですが、親睦園の開園はその完成より3年早いできごとでした。

三菱社員を集めての親睦会も開かれましたが、このとき彌太郎が制定したのが「公会式目(こうかいしきもく)」と名付けられた利用規定です。そこには「人に敬を失する勿(なか)れ。自ら咎(とが)を招く勿れ」「放歌狂吟 人の歓を破る勿れ」「人に酒を強ゆる勿れ」などなど、お酒をみんなで楽しく飲むための注意事項が書かれており、そのまま現代の飲酒マナーにも当てはまるのがなんとも面白いですね。こんなルールが作られるとは、当時も酔って羽目を外してしまう人がいたのかもしれません…(笑)。「公会式目」は日本郵船歴史博物館にレプリカが展示されていますので、興味ある方はぜひ見に行ってみましょう。

広い中池を中心とした庭園。左奥、池に浮かぶように建つのが「涼亭」。右手前の大きな飛び石は「磯渡り」。一歩歩くごとに変わる景色を楽しめる。

彌太郎没後、弟の彌之助はここに別邸として洋館と日本館を建てることにして建築に着手します。洋館は三菱とゆかりの深いジョサイア・コンドルが設計しました。これが、コンドルが最初に手がけた民間の邸宅建築だったといわれています。

さらに三代社長久彌の時代には、国賓として来日した英国陸軍元帥キッチナーをもてなすため、池畔に数寄屋造りの小亭「涼亭」も建設されました。

そんな広大な深川別邸ですが、久彌は庭園を公共的施設として保存することを考え、1921(大正10)年に東南隅の約3,000坪を改造して「清澄遊園」として市民に公開しました。さらに残る庭園内部も公開に向け計画を進めていたさなかの1923(大正12)年、関東大震災が発生。洋館と日本館はいずれも焼失という事態となってしまいました。

清澄庭園でもっとも高く大きな築山「富士山」。中池に写る「逆さ富士」の姿とともにじっくり鑑賞したいスポット。

関東大震災の被害は甚大でしたが、庭園の樹木が延焼を食い止め、近隣住民約1万人が猛火の中で難を逃れることができたそうです。庭内の建造物のうち焼けずに残った涼亭は、昭和60年の全面改築工事を経て現在に至り、今は集会所として一般利用が可能な施設となっています。

震災後久彌は復興計画における公園・緑地の重要性の認識に賛同し、損傷の少なかった庭園の東側部分約15,541坪を東京市に寄付しました。その後東京市による補修整備が行われ、1932(昭和7)年に「清澄庭園」として開園、現在は都の名勝に指定されています。

彌太郎社長が全国から集めた名石が並ぶ名勝

「名石の庭」と呼ばれる清澄庭園。橋として架けられているこちらの巨石は仙台石。はるばる宮城から船で運ばれてきた。

こうした歴史を持つ清澄庭園の庭としての特徴はその「石」の多さ。冒頭で触れたとおり、彌太郎が全国各地から運び入れた名石を庭内で見ることができます。かつて深川別邸には近くの隅田川から水が引かれており、彌太郎は自社の汽船を使って石を運んだのだそうです。特に大きな石は2隻の船の中間に吊って運んだとか。実際に庭園を散策すると、驚くほどの巨石にあちこちで出会います。

また清澄庭園は「回遊式林泉庭園」という形式で、六義園同様に園内を周遊して鑑賞するように設計されています。中央には大きな池が広がり、ここへ隅田川の水を引き入れることで潮の満干により景色が変わるという趣でした(現在の池の水は雨水で賄われているそうです)。

緑と水にあふれた庭園には一年を通じて野鳥も数多くやってくる。池に浮かぶ島々は野鳥のオアシス。池には鯉や亀が悠々と泳ぐ。

あちこちに配された石のほか、池の端に飛び飛び置かれた石の「磯渡り」ではひとつ石を進むごとに変わる景色を眺めたり、石で組んだ滝「枯滝」や、広い池にその姿を映す築山「富士山」など見どころ満載。緑と水に満ちた庭園とあって数々の野鳥の姿も見られます。

清澄庭園は近隣に高層建築物がそれほど多くないこともあり、どっぷりとその雅な世界に触れられるところだなと感じました。今回訪問した日も外国人観光客の姿も多く、彌太郎社長がこの風景を見たら、自らが作った庭が今も国際親睦に役立っているぞとにっこり笑ったかもしれませんね。

所在地:東京都江東区清澄二・三丁目

開園時間:午前9時~午後5時(入園は午後4時30分まで)
休園日:年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
入園料:一般150円、65歳以上70円(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)

お問い合わせ:03-3641-5892 清澄庭園サービスセンター
注:本文中の情報等はいずれも2019年6月現在のものです。