
三菱と横浜の「縁」(えん・ゆかり)
横浜で巡り合う人とデータが未来を紡ぐ
-三菱電機-
横浜の各地を訪問し、三菱グループと横浜が織りなす縁(えん/ゆかり)を紹介するこのシリーズ。第5弾は、横浜の地で新たな取り組みを始めている三菱電機を取材しました。三菱電機は社内外の多様な人々が集うオープンな共創空間「Serendie Street Yokohama(セレンディストリート横浜)」を横浜に開設しています。今回は、オープン間もない価値創造の最前線を訪ね、お話を伺いました。
共創がカギ。横浜に生まれた価値創造の拠点
![]() DIC センター長 朝日 宣雄さん
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2025年1月、多くの人や文化が行き交う横浜に、新たなつながりを生み出す拠点「Serendie Street Yokohama」がオープンしました。三菱電機内の事業部と事業部、三菱電機とパートナー、多様な機器やコンポーネントから生み出されるデータとデータなど……。さまざまなつながりを生み出し、ソリューションを開発するイノベーションハブです。
主導するのは、三菱電機の「DXイノベーションセンター(以下DIC)」。通信や交通、ファクトリーオートメーションや家電、宇宙に至るまで多岐にわたる事業を展開する三菱電機だからこそ、他分野との共創にいち早く価値を見出し挑戦してきました。
DIC センター長・朝日 宣雄さんも、三菱電機の既存事業の組み合わせにより新たな価値を創造してきたひとりです。例えば、2007年に展開した「トータルセキュリティソリューション」。それぞれ違う部署が管轄していた監視カメラと入退出管理システム、情報セキュリティシステムをまとめてパッケージングすることで、トータルソリューションを実現しました。
会社全体としても、2022年に三菱電機はモノづくりを起点にそこから生み出されるデータを分析しながらソリューションを提供し続ける「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」になることを宣言。大きく事業変革し、成長を遂げています。「情報」を軸に、設計、部材調達、製造ライン、品質管理、物流、販売それぞれを効率的に統合することを目指しています。
主導するのは、三菱電機の「DXイノベーションセンター(以下DIC)」。通信や交通、ファクトリーオートメーションや家電、宇宙に至るまで多岐にわたる事業を展開する三菱電機だからこそ、他分野との共創にいち早く価値を見出し挑戦してきました。
DIC センター長・朝日 宣雄さんも、三菱電機の既存事業の組み合わせにより新たな価値を創造してきたひとりです。例えば、2007年に展開した「トータルセキュリティソリューション」。それぞれ違う部署が管轄していた監視カメラと入退出管理システム、情報セキュリティシステムをまとめてパッケージングすることで、トータルソリューションを実現しました。
会社全体としても、2022年に三菱電機はモノづくりを起点にそこから生み出されるデータを分析しながらソリューションを提供し続ける「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」になることを宣言。大きく事業変革し、成長を遂げています。「情報」を軸に、設計、部材調達、製造ライン、品質管理、物流、販売それぞれを効率的に統合することを目指しています。
![]() 連携営業など全社的なムーブメントに携わってきた朝日さん
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朝日さんは「以前は、需要に応えるために製品・機器を作り納品することに特化してきました。工場では1つの製品の設計が終わって製造し、出荷したら『さあ次機種開発!』となりがちです。今後は、製品・機器の製造段階、更に納品後に機器の使用状況から生み出されるさまざまなデータの活用にも成長の可能性が充分あると考えています」と話します。
そんな変革への展望を、テクノロジーの進歩が後押しします。「これからの時代、製品・機器を作った後がより大事です。デジタルソリューションでは、ソリューションを生み出した後も繰り返し改善し、新しいソリューションを追加していくことで継続的な収益を生み出していかなければなりませんし、それができる環境が整ってきました。今やネットにも簡単につながり、クラウドに蓄積したデータもAIが簡単に応えてくれる時代。人とデータとが、つながり続けることが容易になってきたのです」
さらに、多岐にわたるデータには修理やメンテナンス、業務効率化に役立つだけでない、新たな価値を創造する可能性が詰まっていると言います。「データの集積・分析はこれまでも一部の製品・機器の修理に役立ってきました。更なる価値創造に向けて現在は、得られたデータを他の事業領域に生かしていく取り組みも始めています。領域をまたいだデータの活用方法として、ビルで得たデータを街全体で共有する未来も見据えています。例えばこれまで三菱電機では、オフィスビルで社員証をかざすとセキュリティゲートが開くとともに目指すフロアへ利用者をスムーズに導くソリューションを提供してきました。それに加えて人の位置をセンサーで捉えて社員の退社時間のデータを集め、分析することにも取り組んでいます。そういった人の動きのデータは、これまでのシステムと連携することでビル内での利便性や安全性を上げるために活用できるだけでなく、周辺の飲食店や商業施設と共有すれば店舗の売上アップにつなげることができるかもしれません。情報をビル内だけでなく、エリア全体で共有することで新たな価値を生み出すことができるのです」
そんな変革への展望を、テクノロジーの進歩が後押しします。「これからの時代、製品・機器を作った後がより大事です。デジタルソリューションでは、ソリューションを生み出した後も繰り返し改善し、新しいソリューションを追加していくことで継続的な収益を生み出していかなければなりませんし、それができる環境が整ってきました。今やネットにも簡単につながり、クラウドに蓄積したデータもAIが簡単に応えてくれる時代。人とデータとが、つながり続けることが容易になってきたのです」
さらに、多岐にわたるデータには修理やメンテナンス、業務効率化に役立つだけでない、新たな価値を創造する可能性が詰まっていると言います。「データの集積・分析はこれまでも一部の製品・機器の修理に役立ってきました。更なる価値創造に向けて現在は、得られたデータを他の事業領域に生かしていく取り組みも始めています。領域をまたいだデータの活用方法として、ビルで得たデータを街全体で共有する未来も見据えています。例えばこれまで三菱電機では、オフィスビルで社員証をかざすとセキュリティゲートが開くとともに目指すフロアへ利用者をスムーズに導くソリューションを提供してきました。それに加えて人の位置をセンサーで捉えて社員の退社時間のデータを集め、分析することにも取り組んでいます。そういった人の動きのデータは、これまでのシステムと連携することでビル内での利便性や安全性を上げるために活用できるだけでなく、周辺の飲食店や商業施設と共有すれば店舗の売上アップにつなげることができるかもしれません。情報をビル内だけでなく、エリア全体で共有することで新たな価値を生み出すことができるのです」
![]() 「モノづくりをやってきた我々が変曲点を迎えたと思わなければいけない」と語る朝日さん
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このような取り組みにおいて外部のパートナーとの共創は不可欠です。「我々は工場やビルだけなく、発電設備や鉄道・自動車、家電にいたるまで色々な分野の製品・機器を製造していますが、そこにはさまざまなノウハウ(技術)があります。自分たちでは『当たり前』のように思っていることも、他の共創パートナーからすると『そんなこともわかるんですか!』と素直な反応が返ってくるように、価値ある知識・情報・技術であることも多い。我々が個別に持っている技術は、他の共創する企業・団体と組み合わせることで更なる価値を生み出すことができるのです。そうした組み合わせによりソリューションを作り、社会やお客様に新しい価値を還元していきたい」と語ります。
その実現のために必要なことはなにか。答えのひとつとして三菱電機が創りだしたのが、デジタル基盤「Serendie(セレンディ)」でした。社内外の異なったデータを集積して活用し、新たな価値(ソリューション)を迅速かつ持続的に共創する、デジタル上の技術基盤です。さらに、イノベーション創出に欠かせない交流を生み出す場、そして構想から実運用を加速するプロジェクト推進の仕組みまでを備えています。
その実現のために必要なことはなにか。答えのひとつとして三菱電機が創りだしたのが、デジタル基盤「Serendie(セレンディ)」でした。社内外の異なったデータを集積して活用し、新たな価値(ソリューション)を迅速かつ持続的に共創する、デジタル上の技術基盤です。さらに、イノベーション創出に欠かせない交流を生み出す場、そして構想から実運用を加速するプロジェクト推進の仕組みまでを備えています。
“巡り合い”を設計しソリューション開発を加速する
![]() 直線の動線は少なく回遊性を高める空間設計
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「Serendie」には三菱電機の製品・機器の製造や使用におけるデータだけでなく、共創パートナー及び第三者のデータが集約されています。共創空間「Serendie Street Yokohama」は、そういったデータを分析しながら、日々三菱電機と共創パートナーが新たなソリューションを共に検討・試行できる、三菱電機の変革を象徴する場として誕生しました。
DICは最初に約330m2の空間でイノベーションハブの運営をスタートしました。そして、異なる立場・分野の人々が交流し合う自由な空気が流れ始めたことを自信に、より多くの人とデータのハブとなるべく2025年1月に約2500 m2に及ぶイノベーション空間「Serendie Street Yokohama」を完成させました。
「Serendie」は、巡り合いがもたらす“ひらめき”を意味する「Serendipity(セレンディピティ)」と「Digital Engineering(デジタル・エンジニアリング)」を組み合わせた造語です。出会いと技術。まさに、開国の地として多様な文化との交流のなかで、さまざまな技術が発展した横浜の地らしい挑戦です。
DICは最初に約330m2の空間でイノベーションハブの運営をスタートしました。そして、異なる立場・分野の人々が交流し合う自由な空気が流れ始めたことを自信に、より多くの人とデータのハブとなるべく2025年1月に約2500 m2に及ぶイノベーション空間「Serendie Street Yokohama」を完成させました。
「Serendie」は、巡り合いがもたらす“ひらめき”を意味する「Serendipity(セレンディピティ)」と「Digital Engineering(デジタル・エンジニアリング)」を組み合わせた造語です。出会いと技術。まさに、開国の地として多様な文化との交流のなかで、さまざまな技術が発展した横浜の地らしい挑戦です。
![]() バーカウンターを備えた個室
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空間内には、偶然の出会いとつながりを促進する工夫が散りばめられています。コーヒースタンドで淹れた飲み物を片手に交流できるエリア「YOKOCHO」に、背の低い壁やガラスで仕切られたセミオープンなプロジェクトルーム「FIELD」。会話が外に開かれているからこそ、立場もプロジェクトの垣根も超えて、新たな価値を創造できるのです。
「人と人とのつながりは待っていてもなかなか起きない」。そんな思いからDICは、積極的に交流を促すために数々のイベントを開催してきました。「API Day」(※API=異なるソフトウェアやプログラム同士をつなぐ仕組み)に、「Data Day」。ときには社外のパートナー企業を招いてイベントを仕掛け、魅力的なセレンディピティを設計してきました。イベントの後には、少人数で懇親とより深い内容のミーティングができるよう、バーカウンターを備えた個室も用意しています。
「人と人とのつながりは待っていてもなかなか起きない」。そんな思いからDICは、積極的に交流を促すために数々のイベントを開催してきました。「API Day」(※API=異なるソフトウェアやプログラム同士をつなぐ仕組み)に、「Data Day」。ときには社外のパートナー企業を招いてイベントを仕掛け、魅力的なセレンディピティを設計してきました。イベントの後には、少人数で懇親とより深い内容のミーティングができるよう、バーカウンターを備えた個室も用意しています。
![]() パートナーの間で刺激を受けた書籍を展示し業務内容に留まらない興味関心領域をシェアする本棚も設置
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また、出会いを実際のサービス・プロダクトにまで育てあげる仕組みも揃っています。議論を整理して記録し、いつでも見返すことができるデジタルツールや、それぞれが持ち寄ったデータを分析するためのツール群。また、三菱電機内の各事業本部が持っているソフトウェアの機能を組み合わせて簡単にデモンストレーションが作れる仕組みまで提供しています。
さらに、形になったアイデアは「Serendie Street Yokohama」内の実証実験空間「GARAGE」で展示可能。訪れた人がポストイットで自由に意見を残せるため、短いサイクルでサービス・プロダクトの精度を上げることができます。
実際に、DICでは数多くのソリューションを提供しています。例えば鉄道向けのデータ分析サービス。三菱電機が車両に取り付けている装置から得たデータや列車運行状況等のデータを組み合わせて分析することで「どの駅でどのくらいの電力が効率化できるか」を細かく弾き出すことができます。その結果から、駅の混雑度や運行ダイヤに応じた適切な鉄道の運用方法を提案するサービスです。まずは1つの鉄道会社と始めたプロジェクトがソリューションとなり、現在では他の鉄道会社との取り組みも始まっています。
また、自動搬送ロボットサービスも展開。シリコンバレー創業のロボティクス企業とタッグを組み、ホテルや工場・倉庫、商業施設等のバックヤードなどで搬送サービスを提供しています。
さらに、形になったアイデアは「Serendie Street Yokohama」内の実証実験空間「GARAGE」で展示可能。訪れた人がポストイットで自由に意見を残せるため、短いサイクルでサービス・プロダクトの精度を上げることができます。
実際に、DICでは数多くのソリューションを提供しています。例えば鉄道向けのデータ分析サービス。三菱電機が車両に取り付けている装置から得たデータや列車運行状況等のデータを組み合わせて分析することで「どの駅でどのくらいの電力が効率化できるか」を細かく弾き出すことができます。その結果から、駅の混雑度や運行ダイヤに応じた適切な鉄道の運用方法を提案するサービスです。まずは1つの鉄道会社と始めたプロジェクトがソリューションとなり、現在では他の鉄道会社との取り組みも始まっています。
また、自動搬送ロボットサービスも展開。シリコンバレー創業のロボティクス企業とタッグを組み、ホテルや工場・倉庫、商業施設等のバックヤードなどで搬送サービスを提供しています。
自由な発想と豊かな人間関係が横浜の魅力
「Serendie Street Yokohama」だけでなく、エリア全体にヒューマンネットワークを作りやすい文化がある横浜。近年は大手メーカーのR&D拠点が増える一方で、市が起業支援に力を入れるなどのバックアップもあり、発想力に強みを持つスタートアップ企業も増えています。規模の大小に関わらず、会社の垣根を超えてともに手を動かし、連携していく文化が根付いている横浜の地で、DICは共創空間を運営しているのです。三菱電機では、社内だけでなく三菱地所が運営を手掛ける「TECH HUB YOKOHAMA」 や横浜市経済局から委託され、三菱地所を代表企業とする共同企業体『横浜未来機構(YOXO/よくぞ)』ともネットワークを築いており、今後はアイデアのあるスタートアップ企業のパートナーとしてソリューションの共創をサポートしていく未来も見据えています。(関連記事)
![]() 海外のパートナー企業からも人気の高い茶室
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![]() 対面でなく横並びで議論できる「CIRCLE」
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未来の社会を描く壮大なプロジェクトはまだ始まったばかりですが、まだ世にないプロトタイプが並び、活発な議論や斬新なアイデアが飛び交う「Serendie Street Yokohama」に足を踏み入れると、この横浜の地から新たなサービスや暮らしのあり方が生まれていくことを期待せずにはいられません。
オープンマインドな人々が集う横浜の土壌で芽生えた感性と、これまで培ってきた技術や知見を糧に、三菱電機は未来を紡いでいきます。
※2025年3月19日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。
オープンマインドな人々が集う横浜の土壌で芽生えた感性と、これまで培ってきた技術や知見を糧に、三菱電機は未来を紡いでいきます。
※2025年3月19日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。