三菱と横浜の「縁」(えん・ゆかり)

三菱と横浜の「縁」(えん・ゆかり)

次世代型のグリーンな事業共創を横浜から

-三菱UFJ銀行-

横浜の各地を訪問し、三菱グループと横浜が織りなす縁(えん/ゆかり)を紹介するシリーズ。第10弾は、開港によって国際都市となった横浜を金融で支えてきた三菱UFJ銀行です。日本が掲げる2050年のカーボンニュートラル実現に向け、横浜エリアにおいて、企業や自治体などとの協働・事業共創を進めながら、脱炭素化を力強く推進しています。金融の枠を越えた多様な取り組みについて、それぞれの領域で推進に携わる皆さまにお話をお伺いしました。

横浜の文化財から見える銀行史

旧横浜正金銀行本店。世界でも有数の国際金融機関として成長し、近代日本の発展を支えた

横浜のまちを歩くと、日本の金融史に名を残し、三菱UFJ銀行の源流となった銀行の面影を今も見ることができます。その代表格といえるのが馬車道のランドマーク、神奈川県立歴史博物館です。国の重要文化財・史跡に指定されているネオバロック様式のこの建物は、横浜正金銀行本店として1904年に竣工し、戦後は東京銀行横浜支店として歴史を重ねました。

横浜正金銀行は正金(現金)による貿易の円滑化を促すために、福沢諭吉や大隈重信らの支援を受けて1880年に開業。外国為替の専門銀行として国際金融の中心で活躍しました。その業務は、1946年設立の東京銀行に承継されています。

一方、三菱銀行の源は岩崎彌太郎率いる九十九商会にまで遡ります。彌太郎は海運業のサービスとして荷主に資金を融通する「荷為替金融」を始め、1880年に三菱為換店を創設しました。その後、金融業務を拡充し、1919年に三菱銀行が誕生します。1996年に東京銀行と合併し、2006年のUFJ銀行との合併により三菱東京UFJ銀行を設立。2018年に現社名となりました。

現在、横浜市内には13店舗(2025年11月末現在)を展開し、まちの発展や豊かな暮らしを変わらず支えています。この地を舞台に、地域の脱炭素化に貢献する先駆的かつ挑戦的な取り組みが行われています。

みなとみらいから社会の脱炭素化を推進

みなとみらい21地区のMUFGグローバルラーニングセンター

日本は、2050年までにCO2など温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指しています。横浜市も市民や事業者と一丸となって実現するためのスローガン「YOKOHAMA GO GREEN」を策定。みなとみらい21地区は環境省から「脱炭素先行地域※1」に選定され、参画施設と連携して大都市における脱炭素化モデルの構築を推進しています。

2025年4月に同地域の参画施設に加わったのが、人材育成の中核拠点である研修施設、MUFGグローバルラーニングセンター(以下、MUGLC)です。

三菱UFJ銀行をはじめとする三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、2021年に発表した「MUFGカーボンニュートラル宣言」に基づき、脱炭素社会へのスムーズな移行に向けた多様な取り組みや支援を展開しています。MUGLCでは地域の方や企業と連携しながら「開示・可視化」「省エネ・再エネ化」「省資源・資源循環」「社員の環境意識醸成」の各領域における取り組みを包括的に実践しています。

その中から先駆的な試みを、総務部企画グループ カーボンニュートラルチーム・鍬塚翔子さんにMUGLCにて伺いました。

総務部企画グループ カーボンニュートラルチーム・鍬塚翔子さん。ご自身も横浜に住み、まちの変化を体感してきたという

「社会全体に対するカーボンニュートラルの後押しとして、MUGLCの食堂では廃食用油を回収し、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の原料へと資源循環させています。さまざまな領域でCO2削減に取り組む必要がある中、SAFは従来の航空燃料に比べてCO2排出量を約80%削減でき、飛行機におけるCO2削減の切り札として世界中で期待が高まっています。ここ横浜市も、MUFGと同様に、揚げ物(Fry)油を燃料にして空を飛ぶ(Fly)という『Fry to Fly Project』に参加しています。

三菱UFJ銀行のこの取り組みへの参画は、グリーンローン※2をご提供したバイオ燃料の研究・開発を手がけるお客さまを通じて始まりました。寮・社員食堂が国内に239か所あり、廃食用油を年間で約2万2,000リットル回収できる見込です。これは羽田・大阪を飛行機で5往復できる燃料に相当します」

MUGLCのキッチンからも1年で約150〜160リットルを提供しているといいます。2025年からは調理排水に含まれる浮上油脂のバイオ燃料化も開始しているそうです。

廃食用油などを原料とするSAFは、航空分野の脱炭素化の切り札

※1 2050年カーボンニュートラルに向けて、2030年度までに「民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロ」などの要件を地域特性に応じて実現する地域
※2 環境貢献事業に関する融資

次世代型の太陽光発電を実証実験

フィルム型ペロブスカイト太陽電池。政府の第7次エネルギー基本計画で2040年までに20GWの導入目標が掲げられた

脱炭素化への取り組みは屋上でも。こちらではフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証試験が行われています。この電池は厚みがわずか約1mmと薄く、従来の太陽光パネルと比べて約1/10という軽さが特長です。建物の壁面や耐荷重の低い屋根にも設置でき、次世代型の太陽電池として注目されています。

「太陽光は日本の再生可能エネルギー普及を支える重要な電源です。発電設備の設置場所が限られる日本において、ペロブスカイトの特長を生かせば、再生可能エネルギーの導入量を拡大する有力な選択肢になり得ます。MUGLCでは屋上の防水シート面に設置した場合の耐久性・耐候性を検証しています。生まれた電力は携帯電話の充電などに活用しています」

フィルム型ペロブスカイト太陽電池からの給電装置。ポスターも掲示され、利用者の啓発に一役かっている

給電するポータブルバッテリーは食堂の一角に。実験の結果を身近に感じられます。

この実証実験に横浜市も大きな関心を寄せています。港町の景観に溶け込んだ太陽光発電が市内の公共施設に実装されるかも、と夢がふくらみます。

このほか、MUGLC館内の冷暖房にはCO2排出をオフセットした熱エネルギーを使っています。国の「J-クレジット」と呼ばれる認証制度を利用して、エネルギーの使用に伴うCO2排出を、別の場所で実現した排出削減量や吸収量などによって埋め合わせる仕組みです。温室効果ガス排出削減量の拡大につながると期待されています。

ペットボトルをペットボトルに再生する水平リサイクル「ボトルtoボトル」のポスターが随所に

みなとみらい21地区が地域一体となって取り組むペットボトルの水平リサイクル活動などにも加わっているMUGLC。脱炭素化の取り組みを集めた理由を伺うと「研修で訪れる社員一人ひとりが取り組みを身近に感じ、お客さまの脱炭素支援や、お客さまとのパートナーシップを通じた環境負荷低減の取り組みや事業共創に役立ててもらいたい」とのこと。みなとみらいのカーボンニュートラルを実現するために、横浜市や地域の施設とも手を携えて取り組みを進めています。

「グループ・グローバルのネットワークを活かして企業・社会をつなぐことで、カーボンニュートラル社会の実現や循環型経済の促進をはじめとした社会課題解決に、金融機関として貢献していきます。お客さまや自治体との協働や事業共創を通じて、世界が進むチカラになりたいと考えています」

横浜で世界初の洋上データセンター実現へ

営業本部運輸セクター部次長・山口陽平さん。全国の企業と協働してプロジェクトを前に進める

ところで、横浜市で排出されるCO2のうち約4割が臨海部由来です。発電や石油精製などの事業者が多いことや、停泊中の船舶からも排出があるためです。そこで横浜市は、脱炭素化に配慮した港湾機能などを通じて「カーボンニュートラルポート」の形成を目指しています。2025年3月には「横浜港港湾脱炭素化推進計画」をスタートさせました。

その一環として、横浜市と三菱UFJ銀行などは「洋上風力発電によるグリーン電力を横浜市臨海部を起点として供給する方法の検討に関する覚書」を締結しました。浮体式の洋上風力発電施設でつくった電気を電力需要の増加が見込まれる臨海部へ供給する構想です。横浜港に停泊する豪華客船への給電など、グリーンな電力の地産地消が期待できます。三菱UFJ銀行は事業に関する資金調達の手法や、臨海部における産業の地域共創について検討します。

海運業や港湾事業の発展に力を尽くしてきた営業本部運輸セクター部次長・山口陽平さんは、銀行独自のネットワークを通じて協業企業の座組みを構築しているとのこと。

「私たちは既存の産業にご融資するだけではありません。志のあるお客さまとともにリスクも覚悟しながら新しい事業を創出していく『事業共創投資』にも注力して、新たな産業づくりや雇用創出に積極的に関わっていきます」と力強く語っていました。

100%再生可能エネルギーで稼働する洋上浮体型グリーンデータセンター(イメージ図)

そして日本郵船株式会社と協業し産業の地域共創を前へ進めるため、再生可能エネルギーを100%活用する洋上データセンターの実証実験に関する覚書を、横浜市と交わしました。横浜港の大さん橋ふ頭の先端に設置されているミニフロート(浮体式係留施設)を活用して、太陽光発電で稼働する世界初の「洋上浮体型グリーンデータセンター」の実用化に向けた検証を行います。

「DXの進展に伴ってデータセンターの需要が急激に高まっています。増設も想定した広大な敷地と増大する電力消費に対応するための系統電力の拡張が必要ですが、送電ロスを減らし、需要と供給をマッチさせるために大消費地に近い立地も求められます。そう考えると横浜の港湾部を拠点とするメリットは大きい。災害時の利用も含め、将来の重要なソリューションに育つと捉えています」と、山口さん。

これまで日本の沿岸部であまり活用されることのなかった浮体型プラットフォームを活用した施設が実用化されれば、海上での農業や、廃船からの鉄リサイクルといったサーキュラーエコノミーの舞台になる可能性もあるとか。

「横浜の小・中学生や高校生の社会科見学を誘致できる観光資源にもと考えています。将来の日本を引っぱっていく子どもたちに実際に見て体感していただける魅力的なインフラにしたい。そんな夢物語に、経済性をしっかりと担保しながら貢献できたらうれしいです」


※発生から輸送、分配までシステム化された電力

「GREEN×EXPO 2027」を起点とした魅力向上にチームで挑む

横浜支店長・豊川隆さん。発祥の地・横浜を盛り上げるために唯一無二の魅力を共創したいと語る

横浜の社会課題に対して、最前線で解決に挑んでいる横浜支店にもお話をお伺いしました。支店長の豊川隆さんは、より機敏な対応を可能にするプロジェクトチーム(PT)での活動に力を入れています。

「お客さまに寄り添うため、お客さまへの理解を深めることや課題認識、仮説検証に多くの時間をかけ、部署を越えてアイデアを出し合っています。メンバーは指名しても交換してもいい。ドラフト会議のようにみんなに決めてもらいます。異動があっても多様な取り組みを持続できます」

例えば、横浜Domain PTでは、『Fry to Fly Project』のために横浜の約184万世帯から廃食用油を集める活動などを検討しています。横浜市とも持続可能な回収システムについて議論を始めました。「食×物流×化学」といった多分野を融合する企業連携と、市民の意識醸成まで含めた取り組みが、廃食用油で飛行機を飛ばすという壮大なプロジェクトの加速につながります。

「PTのメンバーにはMUFGのリソースを全部使って構わないし、解決策は銀行商品じゃなくてもいいよと伝えています。0から1をつくれる人材を育てる場にもなっていますね」

取材当日に稼働開始した新オフィスの一角に各PTの皆さんが集まった。事業承継・DX・スタートアップなど多方面から横浜の活性化に貢献している

大きなテーマに、もちろん2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)も入っています。

「2025年11月4日に開催500日前を迎えました。交通、宿泊、臨海エリアとの接続、支店のお客さまと園芸博とのエンゲージメントなど、盛り上げていくための課題はさまざまです。横浜支店がハブとなり、市内の4店舗と川崎支店、元住吉支店を加えた6拠点でお客さまの事業機会創出やビジネスマッチングなどに取り組んでいます」

またMUFGが2021年に立ち上げたオープンイノベーション拠点MUIC Kansaiとも連携し、関東初の支部組織となる『MUIC Yokohama』を2025年10月に立ち上げました。社会課題を起点にビジネスアイデアの実証実験を進めるMUFGの新たな取り組みです。横浜支店のメンバーも参画し、地域活性化に向けたチャレンジを始めています。

「GREEN×EXPO 2027を起点にビジネスやソリューションの種をまき、それが花開いて横浜がより魅力あふれる唯一無二のまちに発展すれば、ひとつの成功だと思っています。花が咲くのはすぐでなくてもいい。私たちの源流の地・横浜へ、5年後、10年後を見据えた手厚い支援を提供するつもりです」

「世界が進むチカラになる。」をパーパス(存在意義)と定めている三菱UFJフィナンシャル・グループ。その一翼を担う三菱UFJ銀行は、カーボンニュートラル実現という高い目標に向かって、グループ一体によるスケールの大きな取り組みを推進しています。同時に、地域の課題や地元企業の悩みにも真摯に向き合っています。多様なパートナーシップを強化しながら社会課題解決やイノベーションに貢献する活動が、横浜にしっかりと根づいていました。

※2025年12月19日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。