三菱と横浜の「縁」(えん・ゆかり)

三菱と横浜の「縁」(えん・ゆかり)

「横浜赤レンガ倉庫」をにぎわいの結節点に

-三菱商事-

横浜の各地を訪問し、三菱グループと横浜が織りなす縁(えん/ゆかり)を紹介するシリーズ。第11弾は三菱商事です。横浜のシンボルといえる歴史的建造物であり、みなとみらいや中華街などの主要な観光拠点をつなぐハブとしても機能している「横浜赤レンガ倉庫」の運営を三菱商事グループが担っています。横浜のコンテンツと連携したにぎわいづくりについてお話を伺いました。

貿易の活況から生まれた横浜のシンボル

横浜赤レンガ倉庫。右から1号館、2号館。中央がイベント広場

横浜赤レンガ倉庫は、明治末期〜大正初期に横浜港の保税倉庫として建設された歴史的建造物です。現在は波止場の面影を残したまま、約70の個性的な店舗を擁する文化・商業施設として生まれ変わり、2002年のオープン以来、累計1億3,000万人以上が来館した横浜屈指の観光スポットです。建物とイベント広場、赤レンガパークを三菱商事グループの株式会社横浜赤レンガが管理・運営しています。

横浜赤レンガ倉庫の歴史をひもとくと、開港間もない頃まで遡ります。当時の横浜港は大型船舶が着岸できず、1899年にようやく接岸式の「新港埠頭」の建設が始まりました。その一環で、輸入された物資を一時的に保管するレンガ造りの倉庫が建てられたのです。

1911年に2号館が、1913年に1号館が竣工します。横浜税関新港埠頭倉庫と呼ばれ、葉タバコや羊毛、化学機械、食料品などを扱っていました。

同じ頃、三菱商事の母体となった三菱合資会社も世界各国に支店を置き、本格的な貿易に乗り出していました。そして事業の独立に伴い、岩崎久彌、岩崎小彌太らが設立発起人となって1918年に旧三菱商事※1が発足しました。複数の専門部署を設けて、石炭、金属、機械、水産物・農産物、繊維、肥料はじめ、日本の近代化に欠かせない品目を幅広く取り扱いました。横浜支店は生糸や綿糸布の輸出などに携わっていたそうです。

バルコニーにも当時のスプリンクラーや波型鉄板の天井など貴重な史料が

戦後、旧三菱商事はGHQの指令により解散を余儀なくされました。その後1954年に旧商事の流れをくむ4社※2が大合同して、総合商社・三菱商事が新たな歩みをスタートしました。

1989年に倉庫としての用途を廃止した後、休眠していた横浜赤レンガ倉庫の敷地・建物は、1992年に横浜市が国から取得。その後、約9年間に及ぶ保存・活用工事を経て、2002年に文化・商業施設としてよみがえりました。さらに港のにぎわいづくりに貢献するため、商業施設運営に多くの知見・経験を有する三菱商事グループが2013年から事業を担っています。


※1 現在の三菱商事とは法人格が異なることから、本記事では「旧三菱商事」と記載しています。
※2 旧三菱商事の解散により誕生した会社は百数十社に及びましたが、合併を繰り返し、4社の合同となりました。

にぎわいを創造するまちづくりの資源

株式会社横浜赤レンガの代表取締役社長、岩崎 求起さん

110年以上にわたって横浜港のシンボルでありつづけた赤レンガ倉庫は「ハマの赤レンガ」と呼ばれ、多くの市民に愛されてきました。

「保存・活用工事をする際にも、市役所の皆さんをはじめ、横浜青年会議所に所属されていた先輩方など地元の方々が相当尽力されたそうです。今でも外壁の落書きを消した思い出などを誇らしく語ってくださる方が多数いらっしゃいます」と語るのは、現場で運営を担当する株式会社横浜赤レンガの代表取締役社長、岩崎 求起さん。同社の設立にも、キリンビールや三菱地所など横浜にゆかりのある三菱グループの企業が複数携わりました。

「おかげさまで当社は横浜商工会議所の議員企業に選出していただき、名だたる地元企業様が集まる観光・サービス部会での議論にも参加しています。横浜のブランド価値を向上させ、地域の活性化を支援する横浜赤レンガ倉庫の取り組みに対して期待の高さを痛感しています」。

2号館のバルコニーからの眺め。みなとみらいの夜景が美しい

横浜市も開港以来の歴史的資産を再評価し、まちづくりの資源と位置づけて「港のにぎわいと文化を創造する空間」へと、保全・活用を推進してきました。

「事業を託された当社は、港のにぎわいと文化を創出し、エリアの回遊性を促すことをミッションに掲げました。ここはみなとみらいや山下公園、中華街などの中間点に位置していますから、年間14件以上の主催イベントを通じて人の流れをつくり、体験や交流の場を提供しています。非日常的なロケーションの中でワクワクやドキドキを喚起し、また横浜へ行きたいと思っていただけるよう、お客さまの期待値を上回るような仕掛けづくりを実行しています」。

季節の主催イベントはいずれも横浜の風物詩です。大人気の「Christmas Market in 横浜赤レンガ倉庫」は、本場ドイツに社員を派遣して直接雰囲気を学び、現地の世界観を再現しています。2025年には、過去最大となる高さ約12mの本物のモミの木に2万球超のLEDを施して巨大なクリスマスツリーを出現させ、人々を魅了しました。さらに横浜が誇る国内最大級のイルミネーションイベント「夜にあらわれる光の横浜〈ヨルノヨ2025〉」と連携し、イベント開催以来初となる新エリア「Christmas Gate」も誕生しました。

取材にご協力いただいた経営企画部の渡邊 陽子さん(右)と、荒川 美咲さん。横浜赤レンガ倉庫のファンでもある
Christmas Market。ヒュッテ(木の小屋)や会場の装飾などをドイツから取り寄せるといったこだわりが随所に

DeNA社とも連携協定を締結

まちを回遊したくなる施策として、周辺エリアの企業・団体との連携にも積極的です。

「一例を挙げると、毎年2〜3月に開催する『Yokohama Strawberry Festival』では、横浜赤レンガ倉庫とみなとみらいの商業施設・ラグジュアリーホテルなどで多彩ないちごのメニューを展開し、いちご巡りのデジタルスタンプラリーを実施しました。さらに中華街の伝統イベント『横浜春節祭』や、横浜アンパンマンこどもミュージアムとの連携も仕掛けています」。

みなとみらいがいちご色に染まったYokohama Strawberry Festival
ビールの祭典、横浜オクトーバーフェスト。ドイツの楽団が会場を盛り上げる
FLOWER GARDENでは約1,200㎡の敷地に約2万株の花が咲きほこる

関内駅周辺と横浜赤レンガ倉庫の回遊性の向上と、にぎわいのあるまちづくりの実現を目指して、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)とも連携協定を締結。愛犬家に向けたイベント「赤レンガでわんさんぽ」では横浜公園をサテライト会場に設定し、関内のシンボルとなっている横浜スタジアムと横浜赤レンガ倉庫を結ぶ道のりを愛犬と楽しく散策できるコンテンツを用意するなど、ともに横浜を盛り上げました。

そして約2万株の花が咲きほこる春の一大イベント「FLOWER GARDEN」には、2027年国際園芸博覧会協会の後援を得ました。色とりどりの花畑の中にGREEN×EXPO 2027の公式マスコットキャラクター「トゥンクトゥンク」のかわいいパネルが登場しました。

「最終日には会場のお花をお客さまに無料配布するのですが、一緒にGREEN×EXPO 2027のチラシをお渡しました」と振り返る岩崎さんの胸元にも、トゥンクトゥンクのピンバッチが。

2号館に設置された、GREEN×EXPO 2027開催までのカウントダウンボード

「館内ではGREEN×EXPO 2027のサイネージ広告を高頻度で流し、2号館には開催までのカウントダウンボードを設置しています。ここは国内外からお客さまが訪れる場所ですから、PRする絶好の場と捉えています。SNSでの発信なども含め、私たちも機運醸成に向けてしっかりとサポートしていきますよ」。

脱炭素先行地域でサステナビリティも強化

啓発プログラムではリサイクルに関するクイズやペットボトルの分別体験など、楽しく学べるコンテンツを実施

ところで、横浜のみなとみらい21地区は環境省が選定した「脱炭素先行地域」であり、横浜赤レンガ倉庫はその参画施設です。義務感ではなく、楽しみながら前向きに取り組める独自のサステナビリティコンセプトを設けています。ちょっと楽しい、ちょっと面白い、ちょっとかっこいい、無理をしない「笑う、サステナブル」です。

たとえばイベントでは、従来の軽油を使用した場合よりCO2を約8.5%削減できるGTL燃料※1を発電機に利用。「Fry to Fly Project※2」にも参加し、飲食店から排出される廃食用油をSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の原料として役立てています。

「横浜赤レンガ倉庫で使用する電力の約2割相当は横浜市内で発電された再生可能エネルギーでまかなっています。CO2排出量を年間で約440トン削減できると見込んでいます。市内の高校生を対象に結成された『YOKOHAMA未来デザイン部』の皆さんに取り組みを取材していただいたり、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる『ボトルtoボトル』水平リサイクルの啓発プログラムを小学生に提供したりと、地域との協働も進めています。サステナブルな活動を通じて、横浜赤レンガ倉庫により深い愛着を持っていただけたらうれしいです」。


※1 天然ガスを液体化させた軽油代替燃料
※2 家庭や店舗などで排出される廃食用油から航空燃料のSAFを製造し、その燃料で航空機を飛ばすプロジェクト。従来の航空燃料に比べてCO2排出量を約80%削減できます。

これからも横浜の価値を高める起点に

ライトアップされたバルコニーにて。岩崎さんはノリタケ社とコラボしたプレミアムマグカップの開発など、三菱商事の人脈を活かした取り組みも多いという

岩崎さんによると、お客さまにワクワクやドキドキを届けるために、社員に向けて4つの言葉に対する意識づけを徹底しているといいます。

「まずは『挑戦』。前例にとらわれず新しいことに挑むことを奨励する組織風土を育んでいます。多様な挑戦ができるよう『研鑽』も怠らず、社員の知識や能力向上に努めています。そして『連携』です。多くの方と信頼関係を結び、協力しあえる環境をつくります。最後が『感謝』。横浜赤レンガ倉庫で働くすべての関係者に礼を尽くし、自然と「ありがとう」を表現できる温かな組織を目指します。これらの言葉に基づいて一人ひとりの目標を設定してもらっています」。

日没とともにライトアップされ、赤レンガの建物がひときわ映える

こうして、唯一無二の空間となって感動や喜びを提供している横浜赤レンガ倉庫。110年以上培ってきた歴史観を守りつつ、横浜らしい文化の創出と、市民が憩い・にぎわう空間を目指した横浜市の想いを大切にしています。その実現のためにも、主催イベントのアップデートや、個性あふれる店舗構成などを通して「あそこへ行けば楽しいことに出会えそう」という多くの期待に応え、さらなる魅力向上へと邁進しています。横浜赤レンガ倉庫のブランド価値を高めることは横浜の価値を高めること。そうした信念のもと、まちの回遊性とにぎわいを創造しています。

※2026年1月20日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。