
写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
打ち上げ花火の始まりは江戸時代。悪疫退散のために催された祭りで打ち上げられた花火が最初だといわれる。当時は今のような華やかさはなかったというが、約300年の時を経て、花火は日本が誇る“瞬間芸術”へと昇華。みんなで空を眺め、美しい大輪の花を共に愛でることで生まれる高揚感と一体感は花火大会ならでは。真夏の一大エンターテイメントとして、多くの人に愛されている。
コロナ禍で途絶えていた各地の人気花火大会も、昨年から続々と復活。今年はさらに、日常が戻ってきたことを実感できそうだ。
一流の花火師が競い合う、日本一の技術と伝統を誇る
秋田県『大曲の花火』
全国から選抜された花火業者28社が参加し、河畔を埋めた大観衆を魅了する『大曲の花火』。
大会のオープニングを飾る「ナイアガラ付き大スターマイン」、そして名物「十号割物30連発大スターマイン」など、映像を通して知っている人も多いだろう。
「一生に一度は観たい」と願う人も多く、その知名度は全国だけでなく海外にも轟く。
まさに日本を代表する花火大会だ。

写真提供:大仙市大曲の花火データ(大仙市) クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際
その歴史は古く、1910年(明治43年)に諏訪神社の祭典の余興として開催されたのが始まり。
当時、東北で花火師が一ヶ所に集まって花火の打ち上げをすることは例がなく、画期的な催し物であったという。
正式名称が『全国花火競技大会』というように、現在もれっきとした花火師の競技会であり、優秀作品には内閣総理大臣賞ほか、経済産業大臣賞などが授与される。

写真提供:大仙市大曲の花火データ(大仙市) クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際
最大の特徴は実際に玉を製作した花火師自身の手で打ち上げること。
また、大平山を背景に雄物川の水面にも映えることから、音響、色彩、安全面の3つのポイントで全国一の環境に恵まれていることも、花火師の気合いが入る理由だそう。

写真提供:一般社団法人東北観光推進機構
開催は毎年8月の最終土曜日。場所は河川敷「大曲の花火」公園で行われる。
どこから観るかは悩ましいが、日本三大花火大会のひとつだけに、有料の観覧席を押さえ、最高のポジションから眺めるのがおすすめだ。
『大曲の花火 全国花火競技会』
開催日:2024年8月31日(土)
開催時間:昼花火17時10分〜、夜花火18時50分〜
☎︎ 0187・88・8073(大曲商工会議所)
アクセス:JR大曲駅から観覧会場中心部まで徒歩約30分
春夏秋冬を約10,000発の花火で表現する
滋賀県『2024びわ湖大花火大会』
2025年の開催を控える大阪・関西万博。万博として初めて四方を海に囲まれた会場で開催されるが、琵琶湖の水はその大阪湾にも注がれている。
そんな“関西の水瓶”でもある琵琶湖を舞台に、幻想的な花火が彩るのが毎年8月8日に行われる『びわ湖大花火大会』だ。

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
今年は万博のコンセプトテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を意識し、“いのち”を輝かせる様も臨場感あふれる花火で表現するという。
予告されているプログラムによると、プロローグはまず湖上120mまで勢いよく打ち上がる3号玉。
大輪の花が大会の開始を告げると、花火の筒に張り付けられた大津市内の幼稚園に通う子どもたちのメッセージが花火と共に打ち上がり、鮮やかな色彩と賑やかなBGMでオープニングから盛り上げるという。

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
そして、スターマインをはじめとする約10,000発の花火が「いにしえより変わらぬ近江の四季」を表現。
グランドフィナーレでは、日本最大の湖というロケーションを生かした名物、水中スターマインが登場するなど、想像するだけでワクワクする。

写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
湖面と夜空を同時に彩る大輪の花は、まさに百花繚乱。一夜限りの真夏の夜の夢を存分にまぶたに焼き付けたい。
『2024びわ湖大花火大会』
『2024びわ湖大花火大会』
開催日:2024年8月8日(木)
開催時間:19時30分〜20時30分
☎ 050・5536・3944(びわ湖大花火大会コールセンター)
アクセス:観覧会場中心部までJR大津駅から徒歩約15分、京阪電鉄びわ湖浜大津駅から徒歩約5分
日本で唯一、海峡と県境を超えて共同開催される
山口県・福岡県『関門海峡花火大会』
1985年にスタートし、今年で40回目を迎える『関門海峡花火大会』。
毎年お盆の13日に行われる理由は、帰郷した人も暮らす人も共にこの海峡の街に生まれたこと、生きることの“誇り”を胸に、その真価を地代へと継承していこうという想いからだという。

写真提供:一般社団法人山口県観光連盟
花火は山口県下関市と福岡県北九州市の両岸で合計約15,000発が打ち上がり、関門海峡の夜景と花火が近未来的な絶景を織りなす。
中でも見どころは大きく3つ。
まずは新潟県中越大震災からの復興を祈願して「長岡まつり」で生まれた、フェニックス。
2つ目は会場前120m沖を走るボートの上から投げ込まれた花火が海中で開き、海面に扇状の姿を見せる水中花火。

写真提供:一般社団法人山口県観光連盟
そして花火大会のフィナーレを飾る、直径およそ450mの一尺半玉の巨大花火だ。
今年は40回という節目の記念大会ということもあり、プログラムのテーマは「四重の船団」に決定。市民、地元企業団体、行政、そして主催団体の四者が変わりゆく時代の中でも変わることのない理念の旗のもと、共通の目的地に向かい、力強く前進していく様子を表現する。
西日本最大級の花火大会だけに、その期待はふくらむばかりだ。
『関門海峡花火大会』
開催日:2024年8月13日(火)
開催時間:19時30分〜20時50分(予定)
☎ 083・223・2001(一般財団法人下関21世紀協会)
アクセス:観覧会場中心部までJR下関駅から徒歩約25分、JR門司港駅から徒歩約5分(門司側)
構成・文/一寸木芳枝