
1月に「東京オートサロン2023」で発表してから、2週間ほどですでに約4000台の予約が入り、話題となっている新型軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」。根強いファンが多いミニバン「デリカ」シリーズのエントリーモデルとして5月発売予定だ。
「デリカの名を冠する以上、ひと目見て『デリカだ』と思っていただけるようにしたい。かつ軽自動車の主なユーザー層である若い方や女性にも愛着を持っていただけるクルマにしたい。限られた寸法の中でデザイン面は相当無理をお願いして頑張ってもらいました」と振り返るのは、商品企画を担当した藤井康輔さん。
人気の軽スーパーハイトワゴンならではの、アイポイントの高さ、ワイドな見開き角、スライドドアの広い開口幅、後席のスライド量、収納スペースの広さなど商品性の高さを維持しながら、さらにワンランク上の走行性能を目指してタイヤサイズを大きく、サスペンションの専用チューニングを施した。

「当社岡崎のテストコースにあるクロスカントリー路で何度も試験しました。軽スーパーハイトワゴンという枠組みの中で、タイヤサイズやサスペンションのセッティングを変更し、かつ乗り心地のよさも維持する、そのバランスを取る点がテクニカルの面で苦労したことのひとつです」(藤井さん)
妥協を許さない開発姿勢が実を結び、街の中はもちろん、キャンプやスキーなどレジャーでのちょっとした悪路でも安心感を持って走ることができ、行動範囲を広げられる頼もしい軽自動車になった。
アウトドアウェアを街でまとうような感覚のクルマ

デリカは1968年に初代モデルを発売。1982年には日本初の4WDワンボックスワゴンを追加して、パジェロとともにアウトドアブームの火付け役に。2007年発売の5代目「デリカD:5」は、クロスオーバーSUVとして好評を得ている「アウトランダー」のプラットフォームや電子制御4WDをベースに、堅牢で安全性の高い環状骨格構造を備えたワンボックスタイプのミニバンへ進化した。50年以上にわたって愛される中で、常に時代の先をゆく商品を投入してきている。
デリカミニは、「デリカは大きいから」と躊躇していたファミリー層や若い世代、女性から好評を得ている。アウトドアウェアをタウンユースとして軽やかに着る今の感覚に、かわいらしすぎないデザインやカラーリングがマッチ。標準モデルの「eKスペース」よりも価格設定は高めだが、質に対して納得感を求める世代への訴求につながっている。
「かつては他社よりも安く燃費のいいクルマをつくることを重視していましたが、今は三菱自動車らしさを価値としてご提供し、プレゼンスを発揮すべきと方向性を明確にしています。三菱自動車らしさ――それは、世界ラリー選手権(WRC)やダカールラリーで培った高い技術力と頑丈なものづくり、そして環境を軸とした安全・安心・快適のご提供。それらの三菱らしさは、中期経営計画の方針としても盛り込まれており、2021年12月の『アウトランダー』
(PHEVモデル)発売以降、ようやく商品として形になってきました。他社さんからの乗り換えも増えています」
デリカミニもその三菱自動車らしさを体現した、価値のあるクルマだと藤井氏は胸を張る。
「デリカでご提供したいものは、家族や大切な仲間との大切な時間、そして毎日のワクワク感。軽自動車ということで行動範囲が限られていた方も、デリカミニをきっかけに一歩踏み出して、楽しい時間を過ごしていただけたら嬉しいです」
INTERVIEWEE

藤井康輔 KOSUKE FUJII
商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト(Domestic Vehicle)
三菱自動車工業株式会社
東京都港区芝浦3-1-21
1970年設立。「アウトランダー」「エクリプスクロス」「デリカD:5」などを販売。2009年に世界初の量産型EV(量産型電気自動車)となる『i-MiEV』を発売。モビリティの可能性を追求し、活力ある社会をつくることをビジョンとして掲げる。