「お金や株の話は子どもたちには縁遠いようで、はじめは心の距離を感じたのですが、ワークを通じてだんだん集中し関心が向いてくる様子がよく分かりました。最後には『楽しかった』『これからは新聞を読んでみようと思った』といった意識変容が現場で見てとれました」

と語るのは、三菱UFJ証券ホールディングスの中核事業会社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社広報部部長代理の寺尾　佳奈子さん。同社では、社会貢献活動の一環として、次世代に向けた金融経済教育に取り組んでいる。この活動に込めた思いを、寺尾さんと、広報部 主任の倉持晴苗さんに聞いた。

金融経済教育をスタートさせたのは2014年、中学・高校生向けに株式や証券市場・証券会社の機能・役割の理解を通じて金融リテラシーを高めるプログラムである「『株の力』」の提供を開始した。2019年度からは大学生向けに「株の力for大学生」を提供している。2020年度からは文部科学省が「生きる力　学びの、その先へ」をスローガンに、学習指導要領を順次改定し、2022年度には高等学校でリスク管理や資産形成など投資的観点を含む金融経済教育がスタートした。こうした社会的要請に応え、同社でも2022年度から金融経済教育のプログラムを拡充し、お金に関する知識習得だけでなく、よりよく生きていくことについて主体的に考える力を育む小学生向けのプログラム「お金の力 -VALUE-」を提供。2023年度からは、中学生向けに「お金の力-WILL-」、高校生向けに「お金の力-CHOICE-」の提供を始めた。

「プログラムは、弊社広報部を中心に社員の意見も取り入れ、教育プログラムの開発をする株式会社教育と探求社と共同で開発。実証授業では先生の意見も仰ぎました。5〜6回と少し長めの時間ではありますが、一方的な講義ではなく、すべてアクティブ・ラーニング形式となっています。 小学生向けのプログラムでは、オリジナルカードを使った対話やグループディスカッションなどによって体験的に学びます。中高生向けのプログラム『株の力』では、簡単な起業体験や、チップを用いての投資体験ができ、株式の仕組みや機能について学んだことを新聞広告の形で表現するなど、児童・生徒たちが実際に手を動かしながら考えること、発言することを促す工夫がされています」（倉持さん）

参加した小学生からは「“お金を大切にする”ということは貯めておくことだと思っていたが、よく考えて使うことが大切だと分かった」「友だちと意見交換をして、お金に対する価値観が違うことを知って面白かった」と好評だ。中高生からは「株式はギャンブルみたいなものだと思っていたけれども、社会を支える大事な仕組みだと分かった」、保護者からは「家庭でお金について話すよいきっかけになった」といった感想があった。

講師は学校の要請に応じて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社員を派遣する場合と、学校の先生に支援ツールを提供して指導してもらう場合がある。社内では、金融経済教育の講師実施を課題に組み入れた人材育成研修プログラムを開始しており、部署を問わず全社を巻き込みながら活動を推進している。人材育成研修プログラムは定員を上回る応募があり、さらには個別で「ぜひ講師をしてみたい」という問い合わせもあるという。

「人材育成研修に組み入れたのは、金融経済教育に関わる社員を増やすことのみならず、ふだん接することのない児童・生徒とコミュニケーションを取り、授業を分かりやすく進行する方法を学ぶことで、多様化する社会において実践的なコミュニケーションやファシリテーションのスキル向上をめざすことも目的としています。参加した社員からは好意的な感想も多く、今後もさまざまな社員にこうした経験をしてもらえたら嬉しいです。この3月には、政府が金融教育を進めるため、認可法人『金融経済教育推進機構』の設置に向け、金融サービスの提供に関する法律の改正案を閣議決定するなど社会的にも大きな動きがあります。当社としても政府の動きを注視しつつ、社会全体の金融経済教育に対する機運を盛り上げていきたいと考えています」（寺尾さん）

MUFGのパーパスは、「世界が進むチカラになる。」。三菱グループとしても、三菱みらい育成財団を含め次世代教育には力を入れているところだ。「我々もその一員として、金融経済教育による資産形成を通じて次世代の人生を支えるチカラになれば」と、寺尾さん、倉持さんともに語った。