各社のトピックス

2023.06.15

三菱プレシジョン

MITSUBISHI PRECISION CO., LTD.

三菱プレシジョン、自動運転の安全性検証をシミュレーション技術で実現

現実空間を仮想空間上に再現し、自動運転の安全性を検証する

現在、世界中の自動車メーカーや関係者が自動運転の高度化に向けた開発にしのぎを削り、日本国内でも各地で自動運転を利用した公共交通サービスの実現に向け、準備が進められている。そのようななかで最重要課題と捉えられているのが、自動運転の安全性の確保だ。安全に運行するにはあらゆるケースを想定した安全性検証が必要だが、衝突や逆光など再現が難しい場面が無数にある。実際に車を走らせて検証していては、途方もない時間とコストがかかってしまう。その解決策となっているのが仮想空間。バーチャルであれば、さまざまなシーンを自在に設定し、何度でも再現して検証できる。

2018年度から2022年度まで、内閣府主導のもと「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」の「仮想空間での自動走行評価環境整備手法の開発」が産学官共同で進められてきた。三菱プレシジョンはこのSIPに参画し、仮想空間における安全性評価環境プラットフォーム「DIVP®(Driving Intelligence Validation Platform)」の構築に取り組んできた。

三菱プレシジョンでは、DIVP®において、3Dアセット(乗用車・大型車両などの車両や人物など)やシナリオ(どこに車両や人物を配置しどんな動きをするかといった設定)を作成し管理できる、仮想空間走行環境モデル作成プログラム「SDMG®(Space Designed Model Generator)」を担当した。開発にあたった開発企画部の竹田和司さんは、苦労を次のように語る。

SDMGの操作画面:道路、信号、建物といった交通環境モデルを自在に配置

「交通環境モデルを自在に作成し、多様なシーンの再現を可能にすることで検証にかかる時間やコストの削減に大きく貢献できると考えています。ただし、厳しい安全性評価基準をクリアするためには、実現象と仮想空間のシミュレーションの一致性を高める必要があります。そこで車1台まるごとレーダーで計測し、誤差数ミリレベルまで一致させてモデル化しました。また、テストコースについても、3次元レーザー計測機とデジタルカメラによる移動計測車両、MMS(モービルマッピングシステム)を走行させてデータを取り、精緻なモデルを作成しました。より正確に計測するため、MMSの計測に適した天候を見計らって走行し、品質を確保するため非常に重いデータを扱いながら作成する点に苦労しました」

オールジャパンで安全性評価基盤構築を継続

苦労の甲斐があり、極限まで一致性の高いプログラムが完成、SDMG®を製品化。2022年、ITサービス企業BIPROGY(ビプロジー)株式会社が設立した新会社「V-Drive Technologies(ブイドライブテクノロジーズ)株式会社」と業務提携し、DIVP®製品のひとつとして販売を開始するという大きな成果を得た。

「SIPとして非常によい取り組みができ、なおかつDIVP®の事業化までたどり着きました。今後、DIVP®は2023年からも3年間、経産省のプロジェクトとして継続し、オールジャパンで自動運転の安全性評価基盤構築を推進していきます。現在、自動運転は限定されたエリア内で無人の自動運転が可能なレベル4の実用を目指しています。今後も安全性検証は必要です。さらに高度な安全性評価基盤構築に向けて、日々の開発を続けています」

コロナや社会情勢の変化の影響により、改めて人やモノが自由に移動できることの喜びや大切さを実感した人も多いのではないだろうか。三菱プレシジョンは、移動する社会を限りない創造力で支えていきたいと考えている。

DIVP®:内閣府主導のもと、産学官が一体となって、カメラ、レーダー、LiDAR という3つのセンサをシミュレーションし、自動運転システムの評価を行うために開発したプラットフォーム。
これは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られた成果を(一部)活用している。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

竹田和司  KAZUSHI TAKEDA

開発企画部 次世代技術開発グループ グループマネージャー

三菱プレシジョン株式会社

東京都港区港南1-6-41 芝浦クリスタル品川8階
フライトシミュレータと航法装置の設計・製造会社として1962年に発足。現在では、シミュレーションシステム、航空・宇宙機器、パーキングシステムの3事業を中心に、安心・安全・快適な未来社会実現のため、社会インフラのアップデートに貢献している。