東京・平和島に複合型撮影施設「平和島ステージ」を2022年10月に開設した株式会社ニコンクリエイツ。
ボリュメトリックビデオ、バーチャルプロダクションの両サービスを提供できるのが最大の特徴だ。
ボリュメトリックビデオは、実在の“人物等の3D情報”と“動きの3D情報”を同時に取得し、デジタルデータに変換して再現する技術。
ニコンクリエイツのボリュメトリックビデオ撮影システム“POLYMOTION STAGE”は、100台を超える高性能カメラで被写体を360度で撮影。このデータを基に「動きのある」高品質な3D映像データを生成。人物の動作や表情はもちろん、服の微細な変化まで、卓越したリアリティで再現ができる。
また、ニコンクリエイツのバーチャルプロダクション「In Camera VFX」は、大型LEDディスプレイに3D背景の映像を表示し、その前に立つ演者やオブジェクトを撮影する技術。背景映像はカメラの向きやレンズの画角に合わせてリアルタイムに変化させることができるため、屋外でロケーションをしているかのような自然な映像撮影が可能だ。
ボリュメトリックビデオ、バーチャルプロダクションともに最新鋭の撮影機器、技術を駆使した制作が可能な施設となっている。

ニコンクリエイツ代表取締役 兼 社長執行役員の平野和弘さんは次のように語る。

「3月には、劇団を主宰するディスグーニーズ株式会社と業務提携し、仮想空間上に劇場を作り、ボリュメトリックビデオで撮影した高品質な3D映像データによる演劇やライブなどをVRで上演するプロジェクトが始まりました。単にリアルの劇場の代替ではなく、仮想空間ならではの、これまでにできなかった演劇表現が可能になるのではないかと注目されています」（平野さん）

「平和島ステージ」は、こうしたエンターテインメント会社をはじめ、映像制作会社、広告代理店のみならず、メーカーや教育関係、スポーツ関係といった、一見映像制作とは関連がないように思われるさまざまな業界からも問い合わせや撮影依頼を受けているという。映像ソリューショングループの詫摩裕輔さんは次のように語る。

「教育関係の例としては、スポーツのトレーニング用コンテンツがあります。選手のボリュメトリックビデオを撮影、3D映像データによってあらゆる角度から選手の姿勢などを確認し、それをトレーニングに活かすことができます。我々のボリュメトリックビデオは細かい部分も高品質に再現できるのが特徴です」（詫摩さん）

現在、ボリュメトリックビデオ、バーチャルプロダクションともに、技術的にもコンテンツの市場としても欧米が先行している。日本ではこの技術の経験を積んだクリエイターがまだ少なく、どのような新しい表現を生み出すことができるか、社内だけではなく外部のクリエイターとともに画策している状況だ。

「今後、こうした新しい手法を取り入れた映像制作の市場はどんどん広がっていくと思います。我々もしっかり貢献できるよう、技術においてもオペレーションにおいても力を蓄えていきたい」（詫摩さん）

市場活性化にあたっては、新しいクリエイターの養成にも着目している。

「既に映像制作に携わっている方によるご提案はもちろん、私個人としては、小さい頃からスマホなどで映像表現に慣れ親しんできた若い世代と一緒に、これまでにない映像制作ができることを期待しています。そのために、例えば高校生や大学生に施設を開放して一緒に映像制作することを試みてもいいかもしれません。実際にいくつかの学校と一緒にワークショップを行う企画も始動しています」（平野さん）

前述したように、今後は広告、エンターテインメント業界だけでなく、さまざまな業界で商品やサービスの訴求、社員教育などに3D映像が採用され、映像の効果的な活用は企業活動の大きなカギとなるだろう。

「ニコンクリエイツと聞くと、ニコングループ向けの制作会社だと思われがちですが、我々はさまざまな業界のお仕事を受け付けています。ご興味がありましたらお気軽に弊社ホームページからご連絡ください」（詫摩さん）

「映像制作の現場では、ロケ地への移動や美術セットの制作、廃棄などによるCO₂排出量の増加が指摘されています。バーチャルプロダクションではスタジオ内でさまざまなシーンの撮影ができるので、コスト削減・省電力・廃棄物低減にも貢献でき、カーボンニュートラルの観点においても、すでに海外では注目されています。今後、さまざまな企業、クリエイターと一緒に、これまでにない映像表現ができることを期待しています」（平野さん）