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2023.06.01

三菱みらい育成財団

「教育が変われば、社会が変わる」が発刊。将来を見据えた三菱みらい育成財団が目指す教育改革とは?

「教育が変われば、社会が変わる 三菱グループの教育財団が本気で教育に取り組んで見えてきたこと」が出版された。
三菱グループの創業150周年記念事業の一環で2019年に設立された「一般財団法人 三菱みらい育成財団」のこれまでの活動をまとめた一冊だ。本の推薦文は、建築家隈研吾氏、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏、株式会社DeNA代表取締役会長の南場智子氏、株式会社メルカリCEO山田進太郎氏といった、日本の異才が名を連ねる。

以下、「三菱みらい育成財団」について、簡単にご紹介しよう。

三菱が社会貢献としてやるべきこと
1870年に岩崎彌太郎が海運事業の経営に着手してから2020年で150年となるにあたり、三菱グループでは、2017年から記念事業の企画がスタートしていた。
記念事業の目的は、三菱グループの根本理念「三綱領」の一つ、「所期奉公」だ。
現在の日本経済の問題点として、イノベーションが生まれない、新しい科学技術の研究で世界をリードできていないなどがあるが、これらから見えてきた日本の課題は「少子高齢化とそれに伴う国力の低下」、「社会的格差の広がり」、「地方の衰退」の三つ。
それではこの三つを一気に解決する方法があるのか。それが「教育」だった。

コンセプトは「心のエンジンを駆動する」
2019年から事務局メンバーは、効果的な助成はどうしたらよいのか、ヒアリングを行った。ヒアリング先は、教員、学者、メディアなどの教育関係者約60人。今後の課題、三菱グループが行う助成はどうあるべきか、という観点から進められた。紹介で話を聞くこともあるが、問い合わせ窓口を通して一からコンタクトを取ることも多く、そのときの様子について「新人の営業担当のようだった」と、当時の事務局は振り返る。
こうした活動を通して、事務局は助成すべき対象を15〜20歳と定め、そしてコンセプトは「心のエンジンを駆動する」とした。
「心のエンジンを駆動する」とは、多様な個性と無限の可能性があるその世代に対し、個性を引き出し、何のために学ぶのかを自ら問い、能動的に行動できるようにする、ということだ。
なお、財団の活動期間は10年。「10年で学校や事業者が自走できる仕組みをつくる」ことに重きを置いたから、というのがその理由。

財団の運用で見えてきたこと
2020年度に最初の助成を行ってから2023年度で4年目を迎える。財団の「アニュアルレポート2021」(https://www.mmfe.or.jp/book2021/#target/page_no=1)によると、2022年度の応募総数やその金額などは以下のとおり。

参考:『財団のアニュアルレポート2021』

当初三つだったカテゴリーは、その後のフォローアップでのヒアリングなどから、五つに増やした。
4年目を迎えて、初年度に助成を始めた学校・団体への助成は一旦終了となったが、23年度に新設された助成終了団体の「リエントリー制度」に基づき、カテゴリー1の高等学校等の6割程度、カテゴリー2,3の大学、教育事業者のほとんどはリエントリーを申請してきている。

実際の、各学校、団体の活動の事例については、最初にご紹介した本をご参照いただきたい。また、WEBサイトでも、アニュアルレポートや事業報告などの形で情報が公開されている。

今後の財団運営について事務局では、それぞれの学校は事情が異なるとして、状況に合わせて助成制度やその運用を修正していくことも視野に入れているという。

AIの進化、感染症や戦禍の脅威など、近年にない変化で世界は新たな局面を迎えている。これからの日本を動かす子どもたちには、さまざまなチャレンジをしてほしい、そして自分で考えた価値観で未来を切り拓いてほしい。つまりそうした子どもたちを育てるために変わらなくてはいけないのは大人の方なのだ。

「三菱みらい育成財団」の概要(抜粋)

名称:一般財団法人 三菱みらい育成財団

目的:未来を担う子ども・若者の育成を目指す教育機関等への助成、およびその成果を広く社会に波及させるための事業を行い、未来に向かう子ども・若者を応援するとともに、それを通じ社会の未来を育むことに寄与する。

所在地:東京都千代田区丸の内2丁目3-1 丸の内仲通りビル
URL:https://www.mmfe.or.jp/

助成カテゴリー:
カテゴリー1:高等学校等が学校現場で実施する「心のエンジンを駆動させるプログラム」。助成対象は高等学校等(プログラム参加者は高校生等)。
カテゴリー2:教育事業者等が行う、より先進的、特徴的、効果的な「心のエンジンを駆動させるプログラム」。助成対象はNPO・株式会社ほか、教育事業者、大学等(プログラム参加者は高校生等)。
カテゴリー3:卓越した能力を持つ人材を早期に発掘・育成する「先端・異能発掘・育成プログラム」。助成対象は大学、研究機関、NPO・株式会社ほか、教育事業者等(プログラム参加者は高校生等)。
カテゴリー4:大学・NPO等で行う、「21世紀型 教養教育プログラム」。助成対象は大学、NPO・株式会社ほか、教育事業者等(プログラム参加者は大学1・2年生相当)。
カテゴリー5:「主体的・協働的な学習(心のエンジンを駆動させる学習)を実践できる教員養成・指導者育成プログラム」。助成対象は、大学、NPO・株式会社ほか、教育事業者等(プログラム参加者は高校教員・指導者)