各社のトピックス

2023.07.06

東京海上日動火災保険

Tokio Marine & Nichido Fire Insurance Co., Ltd.

東京海上日動が自治体のDXを支援!
保険金支払いの知見を生かして新領域に進出

(左:日野町町長 堀江和博さん、右:東京海上日動 小林秀憲さん)

東京海上日動が2023年4月から「自治体向けDX支援サービス」をスタート。まずは滋賀県蒲生郡日野町において導入が開始されている。保険会社が自治体のDX支援、というと意外に感じるかもしれないが、実は、保険金支払いと自治体の窓口業務は親和性が高いのだという。
このサービスを企画した同社損害サービス業務部では、保険金支払いで培った知見やデータ、ネットワークなどを生かすことで、新たな事業領域の拡大に取り組み、社会課題の解決に貢献できないかと、かねてより検討していた。
人手不足という課題を抱え、さらにコロナ禍の給付金対応などによって膨大な作業が生じ、苦労している自治体は少なくない。行政手続きのDXが求められているが、職員だけでDXを進めることは難しい。
東京海上日動は、年間数百万件もの保険金請求を正確に受け付け、約款に基づきスピーディーな保険金支払いやお客様に寄り添った対応を実現している。自治体の窓口業務も、法令や条例に基づいて正確かつスピーディーな対応が求められる。自治体の業務の一部を受託することも考えたが、業務プロセスの変革を支援したほうが価値を発揮できるのでは、と発想を変えた。
このサービスの企画に携わった一人、損害サービス業務部の久田 浩平さんは、日野町と手を組むことになったいきさつを振り返る。

「2021年秋、当時はまだ初めての試みなのでうまくいくか分からない段階でしたが、日野町とご縁があり、町長、副町長に当社の“人の力とデジタルのベストミックス”による安心・快適な事故解決プロセスのコンセプトや考えをお話ししました。そこで『まさに、行政サービスのDXを通じて、住民体験と職員体験を両面から向上していきたいと考えていた』とご返答をいただきました。その後、何度も訪問やリモートでの打ち合わせを重ね、我々自身が苦労して試行錯誤しながら進めてきたDXの取り組みが自治体の窓口業務に生かせるという手応えを掴み、具体的な支援内容が定まったのが2022年春。そこから支援を継続してきて1年、『自治体向けDX支援サービス』の提供開始に至りました」

DXにより品質と生産性の両面を向上してきた経験があるからこそ、寄り添える

1年半をかけて信頼関係を深め、スタートした支援サービス。なかでも、コアとなるのは「伴走型BPR(※1)支援サービス」。すなわち、保険金支払いの知見を生かした業務改善コンサルティングの実施だ。さらに、BPRでデザインした最適な業務フローを実現するために必要なシステムの開発や導入についても、パートナー企業と連携して支援していく。
例えば、従来は出生届を提出する際、住民は約10枚の届け出用紙すべてに住所・氏名・生年月日を書かなければならず、職員はそれぞれの届け出用紙に不備がないか入念にチェックしていた。それが、オンライン判定・申請システムの導入により必要事項は一回入力すれば済むようになり、不備の有無についてもシステムが自動でチェックをする。
(※1 「Business Process Re-engineering」の略称。業務や組織の根本的な見直しを行う取り組みを指す。)

東京海上日動も、かつては書類にミスがないようチェックシートを何枚も作り、日々確認に追われていたという。そうした経験を語ることで、職員と共感し合い、寄り添ったサービスを提供できた。

当初は、従来の業務を抜本的に変えることに対して、自治体職員の抵抗感もあった。そこで、損害サービス業務部の国本 拓樹さんは、「なぜDXに取り組む必要があるのか、職員の皆様にも意義や目的を腹落ちしてもらえるよう、何度も日野町を訪問して想いを共有し、イメージを具体化していくステップを重ねていきました」と語る。

「DXの真の目的は、品質と生産性の両面を向上させることです。単なるデジタル化に留まらず、サービスの向上を通じて住民体験も変えていきたいと考えています。例えば、出生届をオンラインで事前申請できるようにし、申請者の家族構成や届け出内容を事前に把握できるようにすることで、住民が来庁されたら一言目に『おめでとうございます、お二人目のお子さんですよね』と、その方に合った声掛けができるようになる。このように、具体的なビフォーアフターを示すことで、『DXがどういうことか想像できるようになりました』といった感想をいただくこともありました」(国本さん)

また、東京海上日動にとっても、保険金支払いで培った知見が保険とは異なる領域で生かせると確認できたことは大きな価値となった。保険金支払いは、お客様から事故の報告をいただいてから初めてスタートする仕事。営業部門と比べて「受け身の仕事」と言われることも少なくなかったのだという。

「今回、自治体向けDX支援サービスのスタートにあたっては、全国の社員が各地で現在の業務を担いながらさまざまなプロジェクトに参画できる『プロジェクトリクエスト制度』という社内副業制度を使い、多数のメンバーが参加してくれました。彼らは『日々培ってきた強みが自治体の業務支援に役立ち、震えるほど嬉しかった。今後のやりがい、原動力につながりました』と口々に言っていました。今までは当社の契約者に価値をご提供していましたが、これからはその地域に住むすべての方に価値を提供でき、大きな社会貢献ができると感じています」(久田さん)

今後は、サービス提供の対象範囲を拡大しながら、ほかの自治体への展開にも取り組んでいくという。「日野町と一緒に作り上げた型を生かし、現在ほかの自治体にもお声掛けをしています。2023年度中に、10程度の自治体に展開することを目指していきたいと思っています」(国本さん)

東京海上日動の損害サービス業務部が、“第二創業”の気概で取り組む自治体DXの支援。同社がパーパスに掲げる「お客様や地域社会の“いざ”をお守りする」ことの実現に向けて、価値提供する領域は保険という枠組みに留まらないということだろう。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

久田 浩平  KOHEI HISADA

インタビュアー写真

国本 拓樹  HIROKI KUNIMOTO

東京海上日動火災保険株式会社

東京都千代田区大手町2-6-4
1879年創業。お客様の信頼を事業活動の原点におき、「お客様や地域社会の“いざ”をお守りする」というパーパスに基づく発意・挑戦を推進。代理店とともに「安心と安全」の提供を通じて、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献する。