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2023.08.03

日本郵船

NIPPON YUSEN (NYK Line)

岩崎彌太郎が遺した言葉に立ち戻り、未来へつなぐ!日本郵船の新中期経営計画

「岩崎 彌太郎の言葉として伝えられる一節に『我ら一艘の船を浮かべれば、世に一層の便をもたらし、その利は全人民の頭上に落つる理なり』というものがあります。この言葉は、事業を通じて社会や暮らしを支え、世の中すべての人に利益をもたらし、社会に貢献することが当社の存在意義であり使命であることを教えてくれると考えており、その言葉をもとにした『Bringing value to life.』を、グループのミッションとして制定しています。このミッションは現在においても、あるいは2030年の未来においても変わらないと考えています」

そう語るのは、日本郵船 の安達 幸宏さん。日本郵船グループは、2030年に向けた新たなビジョンを策定した中期経営計画「Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -」を、2023年3月に発表した。人口・グローバル化・テクノロジー・環境といったメガトレンドを分析し、2050年の世界と事業環境を予測。そのうえで、日本郵船の“ありたい姿”=ビジョンを見据え、その実現に向けた2023年4月から27年3月までの4年間の行動計画が、この中期経営計画となっている。

具体的には、ESGを中核に据えた成長戦略を推進しつつ、脱炭素への取り組みにおいては、2050年のネットゼロという最終ゴールに向けて計画的に加速させていく。さらに、これらの戦略を支える人的資本の充実と、コーポレート基盤の強化を目指す。

世界各地のエキスパートが持つ知見も取り入れ、2年をかけて策定

企業を取り巻く環境も大きく変わり、先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代と言われている。そんななか、この中期経営計画は2年に及ぶ議論を積み重ねて作成された。夏には「夏合宿」と称して集中的に議論を行う場をセットした。

「社内外の叡智を集めてまとめ上げたものになっています。とくに、脱炭素化が当社事業に与える影響については、議論が先行して進んでいる欧州の社外エキスパートとのオンライン・セッション等を通じてエネルギー・製鉄・自動車・電力産業など当社にとって関係の深い業界の将来動向を予見し、戦略の策定に反映させています」(安達さん)

なかでも腐心したのは、冒頭で語ったミッション、そして、ビジョンの再定義。世界が大きく変わろうとするなかで、新しいことに挑戦し、様々な変革を進めるにあたって、それに対する社員の解釈を揃えることが重要と考えた。

そこで多様な解釈のなかから重要と考えるものを選定し、2030年に向けたビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」として、新たに言語化した。この言語化にあたっては、マネジメントを中心に議論を行ったが、「少数精鋭であっても議論をまとめるのに非常に苦労し、3〜4ヶ月を費やすことになった」と振り返る。

多様な人材が活躍する日本郵船グループであるがゆえに、中期経営計画に示されたストーリーに腹落ちしてもらい社員の解釈の足並みを揃えることが重要と考えている。特に、ミッション・ビジョン・バリューについては、マネジメントや若手・中堅社員も含めたメンバーでタスクフォースを立ち上げ、いかに理解、納得してもらい浸透させていくかを議論しているところだ。

「原点である岩崎 彌太郎の言葉をさらに深掘りし、腹落ち感を高める施策を立案している最中です」(安達さん)

今後30年、脱炭素化の大きな目標に向けて前進するために

コロナ禍において、世界中で消費者の支出がサービスからモノへ流れ、物流需要が一気に高まった。日本郵船としても、コロナ禍における暮らしを支えることで総合物流会社として社会的使命を果たし、社会に欠かせないインフラとして世の中の認識を高めることができたと実感している。

今後30年は、脱炭素化が事業に大きなインパクトを与えることは間違いない。脱炭素化によって、モノの作り方が変わり、それに伴って運ぶモノも変わり、運び方も変わる。一部の既存産業が衰退し新規産業が興ることでバリューチェーンも変わり、収益源も変わるだろう。この大きな変化の波をいかにして乗り越えてゆくか。

「中期経営計画は大まかな方向性です。この方向性に沿って、各事業において具体的な施策の策定と社員への働きかけを行っていきます。当社単独では成し得ることができない大きな目標も掲げており、社会への働きかけも同時に行い、スピーディーに試行錯誤のサイクルを回しながら、ありたい姿を目指して進んでいきます」(安達さん)

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

安達 幸宏  YUKIHIRO ADACHI

定期船グループ付、近海郵船株式会社出向(2023年3月まで企画グループにて中期経営計画に携わる)

日本郵船株式会社

東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビル
1885年創業。貿易量の99%以上を担う「海運」を中心に、ライナー&ロジスティクス事業、不定期専用船事業、客船事業を中核事業とし、グリーンビジネスなど新規成長事業を通して脱炭素など地球規模の社会課題の解決にも積極的に挑み、総合物流企業の枠を超えて活動の幅を広げる。