各社のトピックス

2023.08.24

三菱ガス化学

MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY

三菱ガス化学 新潟工場が水素ステーションと燃料電池フォークリフトを導入、CO2排出削減をリード

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、各社さまざまな方法でCO2排出削減に取り組むなか、三菱ガス化学新潟工場では2022年10月から、水素ステーションと、水素を使った燃料電池フォークリフト(以下、FCフォークリフト)7台の運用を開始した。また同時に、トヨタ自動車の水素を使った燃料電池自動車2台を社用車として使用している。

水素ステーションは、PDC Machines合同会社の燃料電池フォークリフト用水素発生充填設備「シンプルフューエル」で、水を電気分解して水素を製造する。新潟工場は2022年4月から非化石証書を購入しており、水素製造には実質再生可能エネルギーを活用している。

稼働中のCO2排出ゼロ、短時間での燃料補給が可能なFCフォークリフトは、工場内の入出荷作業に利用。2022年度においては、FCフォークリフトはのべ387時間稼働し、従来のディーゼル式に比べておおよそ1.5トンの温室効果ガス排出量削減。早くも実績を上げている。

業界を牽引し、水素利用のすそ野を広げていきたい

新潟工場ではこの水素ステーションとFCフォークリフト、燃料電池自動車を導入することで水素価値の浸透と実証を図り、水素利用のすそ野を広げていきたいと考えている。新潟工場SX推進室 和栗 快生さんと神戸 康聡さんは次のように語る。

「新潟県内には、当工場のほか新潟県庁の近くに水素ステーションがありますが、インフラという意味では大都市に比べてまだ普及していません。水素ステーションは水素を高い圧力で保有するため、『危険なのではないか』というイメージを持たれる方々もいらっしゃいます。安全対策が施されているので、きちんと取り扱えば問題ないという認知が広がれば、もっと普及していくのではないかと考えています」(和栗さん)

「燃料電池車は物流において使用するにはまだ課題があるとされています。例えば燃料電池トラックが製品を他社に納入しに行った際、納入先の企業に水素ステーションがなければ航続距離の問題で戻ってくることが難しい。各企業に水素ステーションができて水素を充填できるようになれば、CO2排出を大幅に削減できるのではないかと思っています」(神戸さん)

「2013年比38%削減」を目指し多岐にわたる取り組みを実施

三菱ガス化学では、「2023年度GHG排出量を2013年比38%削減する」という高い目標を掲げ、新潟工場をカーボンニュートラルの社会実装に向けた取り組みの中核地点と位置づけている。前述した水素ステーションおよびFCフォークリフトの導入以外にも、新潟工場では次の取り組みを実施している。

1.省エネ
化学品製造時に使用するエネルギーの削減を進める。

2.購入電力の実質再エネルギー化
2022年4月以降、工場で購入する電力に相当する非化石証書を購入することにより、購入電力の100%を実質再生可能エネルギーとする。

3.環境循環型メタノールの製造
CO2や廃プラスチックなどの廃棄物からメタノールを生産し、それをまたプラスチック原料や燃料、発電用途に活用。そこで生じたCO2や廃プラスチックを再びメタノールの原料とする「環境循環型メタノール構想 Carbopath™」の実証実験を2021年8月から行っている。

4.CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、二酸化炭素回収・利用・貯留)の推進
前述のCO2を活用した環境循環型メタノールの製造のほか、工場で発生するCO2をガス田に圧入することでCO2の地下貯留や利用につなげる検討を行う。

「新潟工場としても2050年に向け、多岐にわたったさまざまな施策を立てました。すぐにでも実行できることから取り組んでいかなければ、カーボンニュートラル達成はとても難しい」(和栗さん)

各社が悩んでいる今こそ連携し、助け合いたい

新潟県においても、「新潟カーボンニュートラル拠点化・水素利活用協議会」を開催し、三菱ガス化学も参画。自治体、県内外の企業と水素の利活用や地域インフラ整備について意見を交わしている。

「協議会に参加した率直な感想としては、自治体も企業も苦戦しているという印象を受けました。『できることが限られている』と悩む大規模排出事業者もいらっしゃるようです。我々もエネルギー多消費型産業ですので、試行錯誤していることが皆さんに伝わっていると思います」(神戸さん)

それでも、三菱ガス化学は立ち向かう。「社会と分かち合える価値の創造」をミッションとし、サステナブルな社会の発展に貢献するために。

「三菱グループにおいても、業種の垣根を越えて連携し、それぞれの企業の得意分野を重ね合わせることで、2050年に向けた取り組みを進めていけたら」(和栗さん)

「互いに情報交換して刺激し合い、助け合うなかでいい解決策が見いだせると思います。1社だけでなく三菱グループ全体で取り組んでいく機運が高まっていけばいいですね」(神戸さん)

一朝一夕に達成することは困難なカーボンニュートラル。今、手を取り合うことが求められている。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

和栗 快生  YOSHIO WAGURI

新潟工場SX推進室

インタビュアー写真

神戸 康聡   YASUAKI KANBE

新潟工場SX推進室(CN推進グループ)

三菱ガス化学株式会社

東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル
1951年創立。メタノール、過酸化水素、高機能エンジニアリングプラスチックス化学品・素材製品のほか、発泡プラスチック、脱酸素剤エージレス®といった機能製品まで幅広く多様な事業を展開。化学にもとづく幅広い価値の創造を通じて、社会の発展と調和に貢献することを目指す。