各社のトピックス

2023.09.14

アストモスエネルギー

ASTOMOS ENERGY CORPORATION

アストモスエネルギーが供給
「カーボンニュートラルLPガス」が「災害に強い」といわれる理由

2019年の台風被害で長時間の停電が発生した千葉県いすみ市は、防災・BCP(事業継続計画)の取り組み「強靭ないすみ市計画」を推進している。その一環として、地域内で電力を供給するマイクログリッドを2023年3月に竣工した。このマイクログリッドに設置されたのが、アストモスエネルギーが供給するカーボンニュートラルLPガスを燃料とする発電機だ。災害に強いといわれるLPガスの今後の展望について、同社グリーン戦略室の岡本 敬義さんと、国内事業本部販売部の日野 洸輔さんが解説する。

千葉県いすみ市が採用、LPガスは災害時の「最後の砦」

【画像提供:株式会社関電工】

小規模な発電システム、マイクログリッドの主要な電源システムは、地域にある太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーとすることが主流となっているが、自然条件に依存している再生可能エネルギーの電力は変動しやすく、大規模停電時に瞬時に電力を安定供給することが難しい。そこで、災害時でも長時間安定して電力の需給調整を行うことができる発電機が必要となる。

いすみ市ではLPガスを2.9トン貯蔵できるガスバルクを備え、72時間連続稼働できるLPガス発電機を備えた。停電時には、まずこのLPガス発電機を起動し、それから順次、太陽光発電と蓄電池を立ち上げて電力を安定して供給していく。

なぜLPガスによる発電機なのか。LPガスはガソリンや軽油などと比べて「災害に強い燃料」であることが強みとなっている。その理由について岡本さんは次のように説明する。

「LPガスは長期保存しても劣化がほとんどなく、ボンベにLPガスを充填することで持ち運びが容易な分散型エネルギーとして取り扱い可能となります。かつ安定した需給調整力を生み出します。いすみ市の場合もBCP対策の強化という点が、LPガスが選択された理由の一つとなっています」(岡本さん)

気候変動に伴い災害が激甚化・頻発化するなか、マイクログリッドの構築は今後ますます推進されていくとみられている。

「地域に密着したエネルギー供給システムという特性を最大限発揮するためには、住民の方々のニーズや課題を掘り起こしながら、その地域に適したマイクログリッドを構築していくことが求められます。そこに、日本全国に供給網が行き届いており、交通や物流が途絶えても燃料供給が可能なLPガスが大きく寄与できるものと、我々は考えています。そうしたことから、エネルギー基本計画でもLPガスは災害時におけるエネルギー供給の『最後の砦』と位置付けられています」(岡本さん)

世界初! 2030年の低炭素化に向けてカーボンニュートラルLPガスを購入

いすみ市では、LPガス発電機の燃料として、カーボンニュートラルLPガス(CNLPG)を使用している。CNLPGは、LPガスの採掘から最終消費まで、輸送を含めたバリューチェーンにおいて発生するCO2を全てオフセット(相殺)しているLPガスのことを指す。これによってLPガスの使用によるCO2排出は実質的にゼロとなる。このCNLPGは、2021年にアストモスエネルギーが世界で初めてVLGC(大型LPG運搬船)規模で購入し、国内での販売を手掛けた。以降、需要は高まり続けていると、日野さんは言う。

もともとLPガスは、石油や天然ガス等の化石エネルギーのなかでもCO2の排出量が極めて少ない為、燃焼時の排出ガスがクリーンで環境性が高く、省エネ、省コストのエネルギーです。そこで、2050年の脱炭素化に向けた、2030年の低炭素時代へのエネルギートランジション期の取り組みとして、我々で何ができるのかを考え、いち早くCNLPGの輸入に取り組みました。LPガスのユーザーは、CNLPGを導入していただくことで、現在お使いの設備を変更することなくCO2排出量の削減に取り組むことができます。燃料油のユーザーはCNLPGへの転換によって、省エネ、省コストに加えてCO2の排出量削減することが可能です」(日野さん)

アストモスエネルギーでは、CNLPGは前述したエネルギートランジションに対応するものと位置づけている。

「当社を含め、LPガス業界においては一丸となってグリーンLPガスの製造の技術開発に乗り出しています。グリーンLPガスとは、牛の糞尿や生ゴミなど今まで捨てていたものや工場の排気ガスなどをもとに発生するCO2と水素を利用して作るLPガスのことであり、生産から消費の過程でCO2排出ゼロを達成することを目指しています。 こうすることで上述の通り、既存の設備を変更することなくカーボンニュートラル化を図ることが可能となります。グリーンLPガスの合成方法は複数ございまして、将来的な大型化と低廉化に向けて研究を進めている段階であり、実用化にはまだ時間がかかると考えています。2030年にはCNLPGを活用しながら、徐々にグリーンLPガスを増やしていくことを目標にして、一方で低炭素・脱炭素にかなう他の商材も増やしながら、お客さまにご提供していくことを考えています」(岡本さん)

「LPガス業界が目指す方向は、ゼロ・エミッションではなく、カーボンニュートラルです。グリーン化を図る一方で、一部で残るであろう化石由来のガスをCO2回収技術などと組み合わせて、使い続ける手段も必ず必要になってくると考えています。今後、アストモスエネルギーは、CN-LPGの普及と合わせて、新規環境ビジネスや新技術の確立を通じて、カーボンニュートラル社会のニーズに応えるべく取り組んで参ります。」 (日野さん)

災害時に加えても脱炭素に向けてもLPガスに大きな期待が寄せられている。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

岡本 敬義  TAKAYOSHI OKAMOTO

グリーン戦略室

インタビュアー写真

日野 洸輔  KOSUKE HINO

国内事業本部 販売部

アストモスエネルギー株式会社

東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー24階
1962年創業の三菱液化瓦斯を前身として2006年設立。全国約5,000万世帯の半数が利用するLPガスを、世界のさまざまな地域から調達する世界最大級のLPガス取り扱い事業者。国内販売シェアの約24%を占め、輸入から販売まで一貫した供給・販売体制のもと工業用・家庭用用途でLPガスをお届けする。