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2023.10.05

三菱商事

MITSUBISHI CORPORATION

三菱商事が銚子市と連携、「水揚げ量日本一」の豊かな環境にEX・DXを掛け合わせまちづくりに挑む

三菱商事は、千葉県銚子市と連携協定を締結し、エネルギー・ トランスフォーメーション(EX)およびデジタル・トランスフォーメーション(DX)の 一体推進による地域創生に取り組んでいる。


銚子市では、豊かな自然環境を活かした持続可能なまちづくりを目指し、「銚子市総合計画」をはじめ「銚子市ゼロカーボンビジョン」や「銚子市DX推進計画」などを制定。2021年12月には、日本では初となる大規模の洋上風力発電の公募入札において、「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」とともに「千葉県銚子市沖」が募集され、三菱商事を中心とする三菱商事コンソーシアムが選定された。


三菱商事は2022年5月に発表した「中期経営戦略 2024」において「MC Shared Value(共創価値)の創出」を掲げており、カーボンニュートラル新産業の創出や、人々が集う魅力あるコミュニティの構築など、地域創生に向けた具体策を各地で推進している。こうしたつながりから、ともに地域の課題解決、発展に向けて連携・協力することに合意した。


銚子支店を設立、地域に寄り添いヒト・モノ・カネをつくり出す

取り組みにあたっては、六つの連携項目、すなわち「デジタル技術の活用による地域の活性化および安全・安心なまちづくりに関すること」「エネルギー、モビリティ、インフラ等へのデジタル技術等の活用による市民サービスの向上に関すること」「市民サービスの向上に向けたデータ連携基盤の構築に関すること」「再生可能エネルギーの活用によるゼロカーボンシティの推進に関すること」「デジタル技術等の活用を含む教育・文化の振興に関すること」「観光その他地域産業の活性化に関すること」を定めた。


東京から出張ベースで関わる、あるいはグループ会社にまかせるという形ではなく、三菱商事自ら地域に寄り添いながら、正面から課題に向き合うため、2022年11月に銚子支店を設立。銚子支店長の白井 宏治さんは、取り組みの具体例について次のように語る。


「取り組みのひとつに、『地域産品の六次産業化』があります。六次産業化とは、農業者や漁業者がもともとの生産物だけでなく、製造・加工・販売などにも取り組み、生産物の価値を高めて所得の向上や経営の多角化を図ることを言います。銚子は農業や水産業が盛んでとても豊かな土地なのですが、野菜や魚はすぐに大消費地に運んでしまい、地域に付加価値が生まれにくい状況でした。銚子内に付加価値を生み出し、地域に利益が生まれるようにしていく。そうすることで産業が生まれ、働く場が増え、ヒト・モノ・カネをつくり出す流れを促進できます。例えば漁業では銚子漁港は12年連続水揚げ量日本一となっています。水揚げされたイワシやサバを地元ならではのおいしい食べ方や加工方法を産業化していく取り組みを考えています」(白井さん)


農業においては、キャベツや大根は国の指定生産地域に選ばれているが、規格外品は収穫されずにそのまま廃棄や堆肥としていた。そこで規格外キャベツを材料として活かそうと、農家と餃子製造会社が手を組み、『アフロきゃべつ餃子』を考案。三菱商事やグループ会社のローソンが販売強化をサポートし、銚子市内のローソンでも取り扱っている。ローソンでは他にも、買い物難民の解消を目的に、弁当など日持ちしない食品を極力減らし、冷凍食品などを中心にした省人化店舗を出店予定だ。


さらに、LINEで観光スポットなどの情報を提供するサービス『観光パスポート』を、8月に行われた『銚子みなとまつり』で試験的に導入。外国人観光客も含め「銚子に行ってみたい」と思ってもらえるような情報発信に努める。


また、洋上風力のみならず、太陽光、陸上風力などにも取り組み、再生可能エネルギーの地産地消を追求していく。三菱商事は、2013年から欧州の洋上風力発電事業に参画しているという実績を持つ。


「洋上風力は30年という長期にわたって海域を占用して行う事業であり、サプライチェーン・関連産業の裾野を広げて工事・運転の業務を支えていただける地元企業を増やすことが安定的な事業運営につながると考えています。地域や漁業との共存共栄の理念のもと、洋上風力発電機メーカーや海洋土木・陸上工事会社と地場企業のマッチングイベント等を開催し、建設資機材等の調達や運転・保守管理業務において、事業期間にわたり、可能な限り地元企業の参画を目指す方針です。当該地域に設置される基金に出捐(しゅつえん)し、自治体や関係漁業者との協議を通じ、透明性ある形で、地域・漁業との協調・共生策を検討・実行していきます」(白井さん)



地元の経営者達とともに将来へつなげていく

創業以来、世の中の変化を捉え、社会課題やニーズに向き合い、新たな事業を継続的につくり上げることで、経済発展や生活の向上に取り組んできた三菱商事。


「弊社は長年海外に軸をおいて事業に取り組んできましたが、足元の日本が元気なくなれば我々も存立の危機に陥る。地域のさまざまな課題に我々の多様なビジネスを応用することで、日本を元気にしていきたい。地域の人々からは『DXは難しい』『新しいことは無理』といった声を聞いたこともありますが、『何のために取り組むのか』という目的をしっかりお伝えすることで解消し、今は少しずつ『新しいことにチャレンジしてみよう』という雰囲気が醸成されてきたように思います」(白井さん)


現在の銚子市の人口は約5万5千人だが年間1,000人単位で減少しているという。こうした状況でのビジネスは難度が高いことは事実だ。


「ひとつひとつの案件はサイズとしては大きくはありませんが、銚子に閉ざすのではなく周辺地域を含めて一つの経済圏と捉えて盛り上げていきたいですね。地域の方々からは『よくぞ銚子に支店を作ってくれた』とおっしゃっていただけてやり甲斐を感じます。我々が一方的に働きかけるのではなく、次世代を担う地元の経営者の方々と一緒に何ができるのかを考える。そこで生まれるニューウェーブがこのまちの将来につながっていくはず。とても意義深い取り組みだと思っています」(白井さん)


銚子で暮らす白井さん。地域の課題を解決しながら、地域とともに成長していくことを目指し、日々地域の人々と対話を重ねている。




INTERVIEWEE

インタビュアー写真

白井 宏治  KOJI SHIRAI

銚子支店長

三菱商事株式会社

東京都千代田区丸の内2-3-1
1954年創立。天然ガス、総合素材、化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループに産業DX部門、次世代エネルギー部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域として多角的なビジネスを展開している。