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将軍家・大名家ゆかりの名品茶道具で「眼福」のひとときを
-静嘉堂@丸の内「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展(9/10~)-
大名物《唐物瓢簞茶入 稲葉瓢簞》 次第とともに
稲葉瓢簞:南宋~元時代(13~14世紀) |
東京・丸の内の静嘉堂@丸の内で、三菱第2代社長岩崎彌之助・4代社長小彌太の親子二代が収集した茶道具の名品が一堂に会する展覧会「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」が、9/10(火)より開催されます。著名な茶人たちの眼にかなった茶道具の由緒歴史を尋ね、姿・形の美しさを間近で鑑賞し、「眼福」のひとときを味わう展覧会です。
静嘉堂が所蔵する、約1,400件にのぼる茶道具コレクションの中から名品が並ぶ今回の展覧会の、3つの見どころをご紹介します。
①名碗が勢ぞろい!
彌之助は早い時期から茶道具の収集を始め、息子の小彌太は自身も茶の湯に親しむなど茶道、茶道具への造詣を深めました。そんな親子のコレクションの中にあってなお「名碗」と称される逸品が集結します。
重要文化財《油滴天目》 南宋時代(12~13世紀)
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《赤樂 茶碗 銘 ソノハラ 》 江戸時代(17世紀)
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中国からもたらされた「唐物」の天目茶碗や高麗茶碗、日本で千利休が創始したとされる京都の樂焼(らくやき)茶碗といった中から、一点一点が名品・優品と呼べる茶碗を、展示室1室(Gallery 1)内で鑑賞できます。それぞれに異なる形や色合いの茶碗を見比べて違いを楽しんだり、丸みや表面の凸凹から手に取った感じを想像したり、名品たちと語らう時間を楽しめます。
②かの武将たちも手にした茶入も集結!
右:大名物《唐物茄子茶入 付藻茄子》、
左:大名物《唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》 ともに南宋~元時代(13~14世紀) |
濃茶を入れて点前(てまえ)に用いる陶製の小壺は「茶入(ちゃいれ)」と呼ばれ、茶席の“格”を決め、道具の取り合わせの要ともなる、大変重要な道具です。Gallery 2ではこの茶入に焦点を当て、静嘉堂所蔵の“大名物”(おおめいぶつ=利休時代以前の名品)茶入7点、“中興名物”(ちゅうこうめいぶつ=江戸後期以降の日本製の名品)茶入5点すべてが展示されます。
特に大名物の「付藻茄子(つくもなす)」と「松本茄子」の2点は、彌之助が茶道具の中で最初に購入した作品とされ、まだ若かった彌之助は会社から年末の給与を前借りして購入したという逸話も残ります。二つの茶入はともに織田信長・豊臣秀吉・徳川家康という戦国時代の三英傑が手にしたという伝来をもつ品ですから、戦後ファンにも必見の名品といえます。
③茶道具界では珍しい“名物棚”、「猿曳棚」4点が初そろい踏み!
「猿曳棚(本歌)」 地袋板絵:伝 狩野元信
室町時代(16世紀) |
Gallery 3では静嘉堂の茶道具コレクションの根幹をなす、江戸時代の大名家ゆかりの作品を展示。仙台藩主伊達家を筆頭に、加賀藩主前田家、淀藩主稲葉家、丸亀藩主京極家、出雲藩主松平家、福知山藩主朽木家、姫路藩主酒井家、佐倉藩主堀田家等、多くの大名家に伝来した道具類や、豪商・茶人所持の名品が揃います。
特に今回注目となるのが「猿曳棚(さるひきだな)」です。引き戸に猿まわしの絵が描かれたこの棚は、伊達家茶道頭の清水家に大切に伝えられていたものですが、同時に引き戸の絵を狩野派の絵師に描かせた“写し”も複数制作されました。静嘉堂では本歌(オリジナル)に加え3点の写しを所蔵しており、合計4点すべてが展示されます。“名物棚”の伝承のさまを鑑賞できるとともに、今回初公開となる1点は狩野派に連なる日本画家・橋本雅邦が描いた可能性があるというのも注目のポイントです。
Gallery 4では「淀藩主 稲葉家から岩崎家へ」として、小彌太が購入した国宝《曜変天目(稲葉天目)》をはじめ、彌之助が買い求めた《唐物瓢箪茶入 稲葉瓢箪》など、伝来の名宝が展示されます。特に自身も茶の湯をたしなんだ小彌太にとって、茶がいかに心の休息に結びついていたかを感じられる逸品が並びます。
国宝《曜変天目(稲葉天目)》
南宋時代(12~13世紀) |
重要美術品《御所丸茶碗 黒刷毛》
朝鮮時代(17世紀) |
【参考画像】小彌太が自作の俳句とともに《黒刷毛》を写生した色紙も展示予定
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茶道具の鑑賞は各作品の姿・形とともに、その由緒や伝来などを知りながら見るといっそうに楽しめます。趣深い茶道具の世界を、静嘉堂@丸の内で鑑賞し、心の一服と「眼福」のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋
■会期:2024年9月10日(火)~11月4日(月・振休)※会期中一部展示替えあり
■開館時間:10:00~17:00 (毎週土曜日は午後6時まで、第3水曜日は午後8時まで)
■入館料:一般1500円、大高生1000円、障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む)700円、中学生以下無料
※写真はいずれも静嘉堂文庫美術館提供。
※2024年8月8日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。