職場の仲間たちと
チャヤナン・ブーニャパーマです。知人からは、タイ語で空を意味する「ファ」というニックネームで呼ばれています。タイでは本名と同じくらいニックネームが重要なものであり、それが、家族にとって特別なものに由来することも珍しくありません。タイ空軍に所属していた父は、空への愛と敬意を込めて「ファ」というニックネームを選んでくれました。父の人生において空は常に身近な存在だったのです。ニックネームを介した空との繋がりは、物事を大局で捉える視点にいつも私を立ち返らせてくれました。そしてそれは、私の人格形成やキャリアの追求に影響を与えた哲学でもあります。
家族と
2023年4月に三菱ケミカル(タイランド)に入社し、タイ、ベトナム、インド、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどアジア太平洋地域におけるコミュニケーションリーダーを務めています。
一方、環境保護活動の道のりを歩み始めた時期は、この仕事を担当するはるか以前に遡ります。海への愛と海洋保護に目覚めるきっかけとなったスキューバダイビングを通して、海中の生態系の美しさともろさに初めて気づかされたのです。
2017年から2019年にかけて、タイの最も美しい数々のダイビングスポットを巡り、ジンベエザメ、バショウカジキ、マンタなど、眼を見張るような海洋生物に遭遇しました。ダイビングをするなかで環境問題の緊急性を肌で感じた私は、サステナブルな慣行や国連の持続可能な開発目標(SDGs)について勉強を始めました。そして、東南アジアで暮らす一員として、マイクロプラスチックやサンゴの白化など、この地域による海洋汚染や、それが海洋生物に与える深刻な影響を重く受け止めるようになりました。ダイビングをするたびに、こうした課題に取り組み、私達の海を守りたいという思いを強くしていったのです。
白化してしまったサンゴ礁
警鐘として、とくに強く印象に残っているダイビングがあります。2018年に海洋研究者とタオ島で海水温のデータを収集した際には22°Cだった水温が、2024年には26°Cにまで上昇していたのです。ダイバーにとっては水温が高い方が快適ではありますが、この水温上昇によってもたらされる生態学的影響は深刻です。かつては生き生きとしていた珊瑚礁が白化し、抜け殻のようになった状態を目の当たりにした私は心を痛め、環境保護に向けて有意義な貢献をしたいという決意を新たにしました。
三菱ケミカルグループで私が担う役割は、当社の持続可能なソリューションの提供に向けた取り組みを推進し、その一翼を担うことです。化学産業には環境問題に貢献できる大きなポテンシャルがあると思いますので、情報発信を通して環境に配慮した当社の取り組みへの認知向上を図るとともに、サステナビリティを当社の考え方として浸透させることに全力を注いでいます。
変化は一人一人の気づきから始まるという信念に基づき、環境にやさしい化学物質の使用を中心とする責任ある選択を人々に促し、鼓舞できるようなメッセージを創り出すことが私の目標です。
タイ国王陛下の難破船が沈む、タイ チャーン島でのダイビング
私の仕事は究極的には、企業の責任の枠を超えたものだと考えています。原動力は極めて個人的なものであり、未来の世代のために地球を守りたいという思いです。ダイビングへの情熱とコミュニケーション担当者としての役割を通して、誰もが前向きな変化を生み出す力を持っていることに気づいてもらえるよう働きかけていきたい。皆が力を合わせれば、持続可能性の追求が当たり前に行われ、自然の美しさや私達の地球が守られ、それを享受できるような世界をつくることができると信じています。