特集

2024.12.19

「映画・動画」特集

年末年始に世界のエンタメを堪能できるおすすめドラマ&映画5選
人間ドラマからAI、クライムアクション、感動、笑いまで網羅!

今年の締めくくりに、新しい年の始まりに視野を広げることができるワールドワイドな作品があります。ハリウッドが生んだ一級品の人間ドラマを見るのもおすすめ。AI社会で起こる欧州ミステリーの世界にも触れることもできます。実話をもとにした韓国発のクライムアクションは時間を忘れて夢中に。インド青年の感動物語からは活力をもらえるはず。そして、北欧メタルバンドの珍道中は笑い飛ばせること間違いなし。エンタメ尽くし5作品をご紹介します。

■【アメリカ】骨肉の後継者争いを壮大に描く傑作ドラマ『メディア王~華麗なる一族~』

世界のメディア界を牛耳る一家の後継者争いを見応えたっぷりに描いた作品が『メディア王 〜華麗なる一族〜』です。一代で巨大メディア帝国を築き上げ、メディア王の称号を手にした父親ローガン・ロイの相続をめぐって、3人の息子と1人の娘4人が血肉の争いを繰り広げていく話が展開されます。世界的メディア王、ルパート・マードックをモデルにしたといわれ、1946年生まれの大御所俳優ブライアン・コックスがローガン・ロイを演じています。欲望むき出しの演技を繰り広げる実力派俳優達も揃っています。
成功者一族ひとりひとりの一癖も二癖もある言動に惹きつけられ、気づけば彼ら彼女らの一挙一動が見逃せなくなるでしょう。結局、一体誰が一家の長を継ぐのか。そのたった1つの答えを求めて最終章(第4シーズン)まで見る価値があります。これまで世界のエンターテインメント界最高峰と称される米エミー賞で最も価値のある作品賞を受賞するなど、毎シーズンにわたって高い評価を受けてきた実力派作品でもあるのです。

勢いのあるストーリー展開や役者達の演技力に加えて、この作品をおすすめする理由をもう1つ挙げるとすると、それは皮肉たっぷりな作品のテーマ性です。絶大な権力と名声、そして巨万の富を有した代償か、何かが欠けて足りない一家を滑稽にみせることに成功しています。オーラを放つ一家でさえ抗えない人間の本質に一貫して迫ることで、説得力のある作品を生み出しているのです。マードックの物語を映像化するケースが後を尽きないことからも裏付けることができます。世界一のエンターテイメント大国、アメリカが生んだ傑作ドラマのクオリティを余すことなく楽しめます。

メディア王~華麗なる一族~
© 2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
U-NEXTにて見放題で独占配信

■【ドイツ】AIモニタリング社会で起こるミステリードラマ『コンコルディア』

カメラと AI に生活のすべてをモニタリングされた『コンコルディア』と呼ぶ町が物語の舞台。AIによるモニタリングとデータ収集に基づいて設立された町ですが、その目的は自由で公正で人間らしい社会を保証すること。理想郷のような町づくりが行われている近未来社会を描いています。ところが、設立20周年を迎えた頃、コンコルディア本部の従業員オルヴァーが殺されるという町で初めての危機が襲います。この殺人事件をきっかけに、町だけでなくコンコルディアの理念そのものに一筋の闇を残し、さらにAIシステムがハッキングされる災厄にも見舞われます。不穏な空気感が増すなかで、登場人物の心理戦が展開されていくのが見どころです。

不安要素を取り除こうと奮闘する人物の1人がロンドンから派遣された危機管理専門家のシア。アイルランド出身の国際派女優ルース・ブラッドリーが演じています。またコンコルディア内部の捜査主任イザベルもキーパーソンの1人です。世界的ヒット作『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズを代表作に持つスウェーデンとガーナの血を持つナンナ・ブロンデルの演技力に魅せられます。そして、コンコルディアのAIを作った天才A・J・オオバ役に中島 健人が日本人唯一の役者として起用されています。国際色に溢れたキャスティングです。本作は「ゲーム・オブ・スローンズ」など数々のエミー賞受賞歴を誇る名プロデューサー、フランク・ドルジャーが制作を手がけ、ドイツの公共放送局 ZDF 、中東のメディア企業 MBC 、フランス国営放送局グループ France Televisions 、さらに日本のHulu Japan が参画した超大型の国際ドラマとして注目の一作です。

Huluオリジナル『コンコルディア/Concordia』
Hulu Japan日本独占配信 (全6話)©Hulu Japan

■【韓国】実話に戻づく迫力満点クライムアクションドラマ『ナルコの神』

実話に着想を得た物語『ナルコの神』は迫力満点のクライムアクション。麻薬王を検挙する政府の極秘ミッションに、民間人事業家が参加するという一見、信じられないようなストーリーが展開されます。韓国で昼は車の整備工場、夜はカラオケバーを営んでいた男が友人に誘われた儲け話に乗っかり、南米の国スリナムに渡ったのが運命の分岐点。大規模な麻薬密売組織を仕切る牧師と出会うと、ストーリーがさらに急展開していきます。コカイン輸送に巻き込まれることになり、秘密情報機関と協力し、麻薬王の検挙に向けて動き始めていくのです。

麻薬密売組織を仕切る牧師のモデルは、1990年代末〜2000年代初頭にかけてスリナムを拠点に暗躍した麻薬王チョ・ボンヘンです。大統領からも庇護を受けていたといわれるほど、現地で影響力を持つ人物でした。2009年に逮捕され、送還された韓国の獄中で最後を過ごしたといわれています。一方、この麻薬王の逮捕に一役買ったのが民間人でした。それがまさに本作の主人公です。国家情報院から協力を求められ、民間人ながら極秘作戦に参加したとされています。
そんな実話をもとに、いぶし銀の韓国俳優達が緊張感あふれるノワール・アクションを披露しています。主人公のカンをハ・ジョンウ、麻薬王をファン・ジョンミン、国家情報院の捜査官をパク・ヘスが演じ、韓国ドラマ好きにも納得の豪華なキャスティングです。全世界配信されるNetflix 韓国発オリジナルとして制作され、82ヵ国でシリーズTOP10入りを果たす好成績を残す名作なのです。

Netflix 世界独占配信中/Netflix © 2022

■【インド】踊らずにはいられない青年の成長ドキュメント映画『コール・ミー・ダンサー』

インドのムンバイで生まれた青年がひたむきに努力し、人生をダンスに捧げる姿に思わず心が洗われるはず。バンクーバー国際映画祭観客賞など数々の受賞歴を誇るドキュメンタリー映画『コール・ミー・ダンサー』は異色作であると同時に王道作です。物語の主人公マニーシュは、18歳のときにボリウッド映画のアクロバティックな動きに魅了され、自己流で驚異的なテクニックと柔軟性を身につけていきます。そんな彼をさらに虜にしたのが実はクラシックバレエでした。
ただし、18歳からクラシックバレエのレッスンを受けるという明らかに遅いスタートです。年下の天才ダンサーがライバルとしても現れ、ハードルは山積み。そもそもインドではダンスは富裕層の趣味でもあります。タクシー運転手の息子であるマニーシュにとって、ダンスで食べていく選択肢は厳しさを伴います。それでも「プロのダンサーとして世界で活躍したい」「僕をダンサーと呼んで(=コール・ミー・ダンサー)」という思いを募らせ、自らダンス人生を切り拓いていくのです。

イスラエル系アメリカ人のダンス教師イェフダとの出会いもドラマチックです。彼の才能に気づいたイェフダとの師弟愛で、技術を受け継ぎ、若き才能に託す2人の関係は、ダンスという枠を超えて、『べスト・キッド』などの名作を彷彿とさせます。
監督・プロデューサーを務めたレスリー・シャンパインは自身も元バレエダンサーで、かつてイェフダのレッスンを受けた経験もある映像作家という運命的な作品でもあります。マニーシュの人生を誠実に見つめた1つの感動作が生まれています。

原題:CALLMEDANCER/2023年/米/87分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:藤井美佳配給:東映ビデオ©2023ShampainePictures,LLC.Allrightsreserved.
11月29日より新宿シネマカリテほか全国公開

■【フィンランド】笑い飛ばす爽快さ、ヘビメタ青春映画『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』

12年間ライブすらしたことがないフィンランドのド田舎メタルコピーバンドが初にしてまさかの史上最高のオリジナル楽曲を生み出し、ノルウェー最大のメタルフェスに参加すべく奮闘する珍道中を描いた物語が予想外の大ヒット。SNSを中心に大きな話題にも。映画ファンからも映画業界からもノーマークだったはずが、登場人物のキャラクター性と爆発力のあるストーリーで『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』は知る人ぞ知る一作になったのです。

そんな伝説の映画が日本初公開から5年の歳月を経て、よりパワーアップして帰ってきます。主人公たちのバンド「インペイルド・レクタム」の面々がライブの直後に逮捕、拘束される前作のラストシーンの続きとして、刑務所シーンから始まります。獄中ドイツのメタルフェスへの出演オファーを受けるも準備不足と投獄を理由に辞退せざるを得ない情けなさはご愛敬。ただし、ギタリストの実家であるトナカイ粉砕場が経済トラブルで乗っ取り危機に瀕しているという緊急事態に陥り、彼らは脱獄を決意します。出演料で実家を救うべくふたたび史上最高のオリジナル新曲を引っ提げメタルフェスを目指す彼ら。
今回もお約束のように危機一髪のハプニングが色々と起きます。笑わずにはいられません。劇中音楽は前作に続きミカ・ラマサーリ(MORS SUBITA/ETERNAL TEARS OF SORROW/WOLFHEART)が担当。さらにスウェーデンのオカルトロックバンド「YEAR OF THE GOAT」も参戦します。劇中で日本から「BABYMETAL」も出演するなど話題は尽きません。笑いで1年を締めくくるのに持ってこいの作品です。

『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』
2024 年|フィンランド映画|96 分|カラー|スコープ|DCP|原題:HEAVIER TRIP
字幕翻訳:堀田雅子|字幕監修:増田勇一|後援:フィンランド大使館
© 2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food
2024年12月20日(金)よりシネマート新宿ほかにて屈辱のロードショー!

ライタープロフィール

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長谷川朋子(はせがわ・ともこ)
1975年生まれ。コラムニスト、ジャーナリスト。東洋経済、朝日新聞などで作品レビュー多数執筆。得意分野はコンテンツビジネス国際展開事情。著書に「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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