各社のトピックス

2023.07.13

三菱製紙

MITSUBISHI PAPER MILLS

紙がプラを追い抜く時代に! 三菱製紙が優れたバリア性を発揮する包装用コート紙を開発

※外装袋にバリコートが採用された。

パッケージを開けたとたん、カカオ豆特有のレーズンのようなフルーティな香りが立ち上る。ロッテの高級チョコレート『DO Cacao chocolate』のパッケージは、なんとすべて紙でできている。一般的に、バリア性や保香性を考えればアルミ箔やアルミ蒸着袋(プラスチックフィルムにアルミニウム粒子を蒸着させたもの)のパッケージを採用することが多いが、DO Cacaoにはバリューチェーン全体の持続可能性を追求し、水蒸気バリア性と酸素バリア性、紙が持つ生分解性、古紙リサイクル性、ヒートシール適性を備えた、三菱製紙の包装用コート紙barricote®(バリコート®)が採用されたのだ。

また、2023年、ドトールコーヒーが限定販売した焙煎コーヒー「初釜」 のパッケージには、バリコートとプラスチックフィルムを貼り合わせた三菱製紙のbarrisherpa®(バリシェルパ®)が採用された。香りが命ともいえるコーヒーのパッケージには、やはりアルミ蒸着袋が使われることが多いが、バリシェルパによって脱アルミを実現。酸素・水蒸気・香気の透過を防ぎ、コーヒー豆の香りと鮮度を保ちながら、プラスチック使用量を削減した。

バリコート、バリシェルパは2020年から販売開始されている。バリコートは、紙本来の生分解性と古紙リサイクル性を備えた、環境にやさしい包装用コート紙。優れたバリア機能とヒートシール性を有し、食品、 日用・衛生品等の軟包材として用いることができる。バリシェルパ は、強度や耐水性、ヒートシール性に優れた植物由来の生分解性プラスチックフィルムを最小量使いながら、プラスチック使用量を削減し、生分解性とバリア性を両立させている。どちらも廃棄プラスチック削減に貢献できる代替素材となっている。

長きにわたる研究開発をベースに、世界展開を目指す

両商品の強みについて、開発にあたった同社 研究開発本部 商品開発部 兼 機能商品事業部 機能商品営業部の池澤善実さんは次のように語る。

「バリコートは、ドイツにある弊社の子会社、三菱ハイテクペーパー ヨーロッパ GmbH(Mitsubishi HiTec Paper Europe GmbH)が、2015年ごろからR&Dに着手し、2019年には欧州大手食品メーカーに採用された紙包材です。この長きにわたる研究開発と実績がベースにあったうえで、日本の高い要求品質を満たすよう、弊社は開発を続けています。各製紙会社が包装用コート紙に取り組んでいますが、バリコートはプラスチックフィルムレスでありながら、水性コートによって、プラスチックフィルムレベルの酸素バリア性、水蒸気バリア性、ヒートシール性に追いついています。今後も、より環境性の向上などを考え、市場ニーズにマッチしたものをご提案できるよう開発に取り組み続けます」(池澤さん)

課題はコスト面。高い品質を維持しながら、安価なプラスチックにどこまで迫れるか。今後は大量生産をにらみ、「がんばってコストを抑えていきたい」と、同社 紙素材事業部 紙素材営業部の田中俊有さんは言う。

「サステナブルな世の中を目指し、グローバル企業はもちろん、環境意識が高い小さなお店も含めて裾野を広げながら社会全体が変わっていくように、我々製紙会社のみならず関係する業界関係者を含めてみんなで取り組んでいきたいですね」(田中さん)

「弊社だけでなく印刷に関わるコンバーター(加工業者)や包装機メーカーさんをはじめ、包装に関わるバリューチェーン全体で連携しながら取り組み、マーケットに対してご提案していきたい。そのためにも、高い品質の資材をご案内していきます」(池澤さん)

製紙業界、包装業界全体をリードする存在として、世界展開も重視し、今後もドイツの子会社と連携をさらに高めて開発および生産を行っていくつもりだ。そして「こんなものまで紙パッケージで!?」と驚くような、幅広い内容物に対応できるよう商品ラインナップの充実を目指している。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

池澤善実  YOSHIMI IKEZAWA

研究開発本部 商品開発部 兼 機能商品事業部 機能商品営業部

インタビュアー写真

田中俊有  TOSHIARI TANAKA

紙素材事業部 紙素材営業部

三菱製紙株式会社

東京都墨田区両国2-10-14
1898年創業。「機能性不織布関連」、「エレクトロニクス関連」、「医療・ヘルスケア関連」など幅広い分野で、安全かつ快適なサステナブル社会の実現に貢献する製品の開発、販売を行うほか、適切に管理された森林からの木材(FSC®認証材)の調達を進め、「パルプ事業」、「脱プラ製品」の開発や、印刷・情報用紙で培った抄紙・塗工技術を活かして特徴のある「紙製品」の開発を行う。