各社のトピックス

2023.10.19

三菱UFJ信託銀行

MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

日本初! 三菱UFJ信託銀行がシェアサイクル事業と協業し、電動自転車の動産信託に着手

三菱UFJ信託銀行が動産信託に乗り出す。対象動産として扱うのは、シェアサイクル用のGPS付電動アシスト自転車だ。シェアサイクル事業「チャリチャリ」を全国主要都市で展開するneuet(ニュート)との協業により、シェアサイクルに使用する自転車数百台を受託し、「自転車ファンド信託受益権」として金融商品化する。投資信託のように値動きするものではなく固定金額だが、3年間保有していれば自転車の賃料による収益が分配される。
今回は、投資家を三菱UFJ信託銀行が出資する合同会社とした。トラックレコードを蓄積し、将来的な外部販売に向けた検討を進める。


「四方よしの事業共創」を目指し、カーボンニュートラルに貢献

出発点となったのは、「信託機能によって、カーボンニュートラルに貢献したいという思いでした」と、今回の事業全体を統括する法人マーケット統括部 事業企画室 新規事業G 調査役の岡田 拓磨さんは次のように語る。

シェアサイクルは電車や車と比べてCO2の排出量が少ない。全国展開されており、特に首都圏では認知度が高く利用実績がある。ラストワンマイルの移動手段として成長が見込める事業であると着目した。

「シェアサイクルを金融商品化することでGX(グリーントランスフォーメーション)領域に投資を呼び込み、脱炭素の仕組みを支えることができ、また地域のインフラを支えることができるのではないかと考えました。この商品によって、社会・取引企業・投資家・当社間の金融循環による“四方よしの事業共創”を目指しています」(岡田さん)


時代の変化に対応、動産信託化のニーズが顕在化

とはいえ、三菱UFJ信託銀行にとって動産信託は新しい試みだ。「弊社ではかつて鉄道設備やパソコンなどを対象に動産信託商品を扱っていましたが、管理が難しいため休止していました」と語るのは、新商品の開発・管理を担う法人マーケット統括部 資産金融事業室 商品開発G 調査役の柴田 正道さん。

「時代が変わり、今は消費者がモノを所有せずに借りたりシェアしたりするシェアリングエコノミーが広がっています。一方でサービス提供事業者は動産を持つ必要があります。資金調達のニーズが増え、動産信託化のニーズが顕在化するようになりました。対象動産はどこにあるか常に把握する必要がありますが、シェアサイクルはGPSを搭載しており、いつどこにあるかが事業者によって把握できる。ニーズの増加とテクノロジーの進化の掛け算によって、動産信託を再開してみようとチャレンジを始めました」(柴田さん)

だが、新しい試みだけに苦難もある。

「法律上の課題、会計上の課題など多数のチェック項目があります。外部専門家と社内の専門部隊と我々が喧々諤々検討し、一時は商品化断念の危機もありましたが、ようやくリリースにこぎつけることができそうです」(柴田さん)


地域の課題に向き合い、信託銀行としての社会的役割を果たす

「自転車信託スキーム」の全体像

2023年9月末から社内で投資を開始して運用をテストし、2024年4月から機関投資家に販売していく予定。スキーム検討や契約書作成に携わった資産金融部 受託商品グループ 上級調査役の走坂 俊樹さんは、今後の展望について次のように語る。

「将来的には個人投資家への販売も見据えています。また、当初は、福岡と熊本での展開を考えていますが、いずれは全国へと範囲を広げ、必要があれば他の業者さんとの協業も広げていきたいと思っています。そのためにはお客様に満足していただくためにも、十分な検証、評価、格付けの取得などが必要だと考えています」(走坂さん)

既存の金融商品の枠組みにとらわれないこうした新しい試みには、次のような思いがある。

「今回、電動自転車の金融商品化ということで第一歩を踏み出すことになりますが、電動自転車に限らず、お客様の大切な資産を受託という形でお預かりして、それを適切な目的や用途に沿って利用させていただいたり、適切に管理をして評価をしたりしていくこと。それが信託銀行が社会的に求められている役割であると考えています。信託業務を通して安心・豊かな社会を創り出すことを、我々はパーパスとして掲げています。今後も地域の社会課題に向き合い、金融の面から支えていきたい」(岡田さん)

自分が投資している自転車が、街中を走っている。そんな日がもうすぐ来るかもしれない。



INTERVIEWEE

インタビュアー写真

岡田 拓磨  TAKUMA OKADA

法人マーケット統括部 事業企画室 新規事業G 調査役

インタビュアー写真

柴田 正道  MASAMICHI SHIBATA

法人マーケット統括部 資産金融事業室 商品開発G 調査役

インタビュアー写真

走坂 俊樹  TOSHIKI HASHIRISAKA

資産金融部 受託商品グループ 上級調査役

三菱UFJ信託銀行株式会社

東京都千代田区丸の内1-4-5
1927年設立。「安心・豊かな社会」を創り出すというコーポレートメッセージを掲げ、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」の一翼を担う企業として、新しい信託銀行ビジネスの創造にチャレンジする。個人、法人の課題やニーズを把握・分析する「コンサルティング」、信託ならではの高い専門性の発揮と、幅広い業務を活かして、問題解決の付加価値の高い「コンサルティング&ソリューション」を提供。