各社のトピックス

2025.05.08

三菱UFJ信託銀行

Mitsubishi UFJ Trust and Banking Corporation

MUFG新規事業創出プログラム「Spark X」の初年度受賞案件
三菱UFJ信託銀行の新規事業である外部管理者サービスが2025年度に始動!

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三菱UFJ信託銀行の新規事業であるマンション管理組合向け外部管理者サービス「PROTHIRD」が2025年度からスタートする予定だ。MUFGのグループ横断型新規事業創出プログラム「Spark X」で初年度受賞案件となった新事業の今後の展望とは?

三菱UFJ信託銀行はマンション管理組合向け外部管理者サービス「PROTHIRD(プロサード)」を2025年度からスタートする予定だ。MUFGでは2022年度よりグループ横断型の新規事業創出プログラム「Spark X」で社員のアイデアを事業化する取り組みを行っており、今回の事業は初年度の受賞案件となる。

「Spark X」は、MUFGグループ社員がおもに社会課題解決型の新規事業を考案し、自らが主体的にアイデアの実現に挑戦するというプログラム。これまで1,000件を超える応募があった。そのなかから、複数回の審査を経て最終審査を通過したチームが、事業開発責任者として自ら考案した提案内容の実現に取り組んでいく。初年度の新規事業の発案者である三菱UFJ信託銀行法人マーケット統括部不動産事業室の児山 高広さんはこう語る。

「当初は町内会やPTAなどのコミュニティがコロナ禍でコミュニケーションがとりづらい状況のなか、コミュニティの活性化を目指してプログラムにエントリーしました。しかし、コミュティはなかなかマネタイズができません。似たようなコミュティを探しているうちに、マンション管理組合に注目するようになったのです。役員の成り手は不足していますが、高額なお金を管理しなければならない責任がある。信託銀行は受託型のビジネスモデルであり、親和性が高いのではないかと考えたのです」

児山さんはもともと企業年金の営業支援を担当していたが、受賞後の2023年4月から新規事業実現のための検証を行うために、MUFGデジタル戦略統括部に異動した。その後2024年6月に帰任し、現在の陣容は希望して今の部署に異動した山口 由貴さんと、社内副業で週1回従事している年金カスタマーサービス部の北浦 優さんの3人で実務を行っている。児山さんは新築案件、既存案件の獲得に向け、ディベロッパーや管理会社への営業などに取り組む日々を過ごす。

「私は中途採用で入社していますが、これまでの社会人生活で、新規事業の立ち上げに携わったことはありませんでした。銀行員なので財務分析はできますが、自らPLやBSをつくるのは不慣れです。しかし、Spark Xのプログラムには、新規事業立ち上げのイロハについては研修があり、サポート体制も整っています。今も日々学びながら、奮闘する毎日です」

マンション管理組合役員の成り手不足に対し
三菱UFJ信託銀行が「外部管理者」に就任

PROTHIRDの対象顧客

もともと分譲マンションでは、区分所有法に基づいてマンション管理組合を設置する義務がある。運営方法としては、理事会役員を選出したうえで運営する「理事会方式」が一般的だ。しかし、マンションの価格高騰や共働き世代の増加による新築購買層の環境変化、または既存マンション住民の高齢化など、分譲マンション管理組合理事会役員の担い手不足が大きな課題となっている。そのため、マンション管理組合のあり方も、時代に適応した変化が求められていた。

マンション管理会社による管理者の受託(自社受託)事例も増加しており、総会議案作成などの権限を持つ立場での工事受注など、利益相反の観点からも社会問題化している。国土交通省でも、2024年6月に「外部管理者方式等に関するガイドライン」を公表し、外部管理者への就任には厳格な要件が求められるとし、2026年4月からは法改正される見通しとなっている。理事長に代わる立場である「管理者」は、高額な資金管理を担うため、信用・信頼が不可欠だ。しかし、既存の資格である「マンション管理士」は個人であり信用力が欠けることから活用が進まず、管理会社による組合費の着服案件も頻発している。

PROTHIRDのサービス内容

そこで、新事業の「PROTHIRD」では、三菱UFJ信託銀行がマンション管理組合と「管理者業務委託契約」を締結し、外部管理者に就任。理事会方式とは異なり、理事会を設置しないことから、理事会役員の選出・就任が不要になる。収益源は、管理組合から受領する受託手数料。
「今後は、金融機関ならではの“信用・信頼”を礎としつつ、高い透明性と堅確性を有する中立的な外部管理者として、区分所有者と関係者のライフスタイルと資産を守りながら、分譲マンションの暮らしに新しい付加価値を提供していきたいと考えています」(児山さん)

社会課題の実現に課題もあるが、
問題提起によって業界を活性化させていく

さらに同事業では、事業の提供価値向上を目指して、マンション管理組合におけるDXを推進。具体的にはスマホアプリを活用し、組合関連資料(管理規約・月次収支報告・議事録など)の閲覧や、アンケート・投票機能、お問い合わせ機能などを搭載し、可視化できる仕組みをつくる。

情報の受発信をDX化するPROTHIRDのサービス提供体制

ほかにもMUFGが提供する金融サービスとのコラボレーション、周辺領域での新たなビジネス機会の創出なども検討していく。たとえば、高経年マンションの長寿命化や再生支援、「Spark X」におけるほかの新規事業案とのコラボレーションを想定している。
新事業名は「第三」を表すサードに、「代理=Pro-」「専門家=Professional」「守る=Protect」を掛け合わせた造語。野球のサードは、素早く強い球を受ける瞬発力と体の強さ、ファーストに素早く送球できる強肩と判断力が求められる。
「まさに区分所有者、管理会社の間に立つ、“第三者”としての存在感やパフォーマンスを表しているのです」(児山さん)

ただ、社会課題の解決には、新たなビジネスモデルの拡販・普及への課題もある。国交省の法改正など環境変化による追い風はあるものの、適切な担い手がいないなかで、“信用・信頼”を備えた外部管理者の実現がどこまでひろがるのか。また、解約率が低いストックビジネスであり、不動産事業におけるベース収益に貢献するという実需はあるものの、拡販・普及に一定の時間を要する可能性がある。新築案件は営業しやすいものの、実収入は建物引き渡し後からとなってしまう。一方の既存案件では、総会が年1回開催となることが多いため、契約までに時間を要する可能性がある。

児山さんが言う「ただ、すでに内諾を受けている案件が3件あり、手数料収入は遅くとも2026年から得られるようになります。今後の展望として、5年後には1万戸を目指していきたいと思っています」
MUFGが掲げる“世界が進むチカラになる。”の実現に向けて、本事業を起点に、暮らし×金融×デジタルによる新たな顧客体験の創出を目指していく方針だ。

最後に本事業への意気込みを次のように語る。

「社内副業での参画ではあるものの、このプロジェクトにかける思いをしっかり体現していくようなパフォーマンスを上げていきたい。その結果として人の役に立つ、社会を支えるものにつなげていきたいと思っています」(北浦さん)
「既存の理事会を回っていると人手が足りないという話をよく聞きます。こうした社会課題を解決するためにも、社内体制を整えて、なんとか1号案件をうまくスタートさせたい。区分所有者の方に満足していただけるような仕組みをつくっていきたいと思っています」(山口さん)
「ある意味、社会インフラをつくるような仕事だと思っています。ディベロッパーや管理会社も共感してくれており、こんなプレイヤーが出るとは思わなかったというのが業界の反応です。競合はある程度、出てきてもいい。そうしないと活性化しません。こうした問題提起を行っていくことで業界を活性化させていきたいと思っています」(児山さん)

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

児山 高広  TAKAHIRO KOYAMA

法人マーケット統括部
不動産事業室

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山口 由貴  YUKI YAMAGUCHI

法人マーケット統括部
不動産事業室

インタビュアー写真

北浦 優  YU KITAURA

年金カスタマーサービス部

三菱UFJ信託銀行

東京都千代田区丸の内1-4-5
1927年3月設立。リテール、法人マーケット、受託財産、市場などの部門の資産金融事業、不動産事業、証券代行事業などを展開。拠点数は国内:51(支店48、出張所3)、海外:5(支店4、駐在員事務所1)。従業員数は6,283人(2024年3月末現在)。中途採用比率は年々増加しており、2021年度:28%、2022年度:56%、2023年度:63%となっている。

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