多彩に活動!みつびし最旬トピックス

多彩に活動!
みつびし最旬トピックス

「明日がさらに輝くように」、この音楽で後押ししたい。

-音楽家、村松崇継さんが語る 三菱未来館「JOURNEY TO LIFE」の世界-

タグを選択すると同じカテゴリの他の記事が探せます。

2025年の大阪・関西万博に三菱グループが出展中の三菱未来館。その中核をなす映像『JOURNEY TO LIFE』では、いのちの誕生から未来への希望までを壮大なスケールで描きます。

時に楽しく、時にスリリングにこの物語を彩る音楽を担当したのは、映画やテレビドラマの音楽でも知られる作曲家・村松崇継さんです。「明日がさらに輝くように生きてほしい」――そんな想いも込められています。

このたび、三菱未来館での感動を詰め込んだオリジナル・サウンドトラック「JOURNEY TO LIFE」が7月23日に発売されることになりました。そこで今回、どのようにして楽曲が生まれたのか、そして万博という舞台に託した音楽家の想いなど、村松さんにじっくりと伺いました。

――まずは、三菱未来館の楽曲制作に関わることになったいきさつから。

監督の加藤友之さんとプロデューサーの長谷川千佐子さんからご連絡をいただいたのがきっかけです。もともと、お二人は私が以前音楽を担当したNHKドラマ『氷壁』をご覧になっていて、劇中で流れた「彼方の光」という楽曲をとても気に入ってくださっていたそうです。「いつか村松さんとお仕事でご一緒したい」と、以前からお考えだったようです。

三菱未来館のプロジェクトを検討する中で、この企画のコンセプトには村松さんの音楽がピッタリなのでは、ということで、お声がけいただきました。

――万博という舞台に、どのような印象をお持ちでしたか?

私自身、小さい頃から万博が大好きで、つくば万博や愛・地球博にも、家族で行っていました。つくばのときは実家のある浜松から車で、家族みんなで行ったのを覚えています。愛・地球博も全部観てまわりました。

そんな経験もあり、いつか自分も万博に携われたらいいなという思いは、以前からありました。なので、今回このお話をいただいたときは本当に嬉しくて、すぐ母に連絡しました。父は亡くなっているので仏壇に報告しました。本当に名誉なことで、光栄に思っています。

――加藤さんと長谷川さんに インタビュー した際に、村松さんは「映像をご覧になった段階で音楽が降ってくる」とおっしゃっていました!

ミーティングで、初期段階の映像を見せていただきましたが、その時点で自分の中では曲のイメージができあがりつつありました。私は映像を見ると、自然と頭に曲が降ってくるので、そのときも「これだな」という音がすっと湧いてきたんです。うまく言葉にはできないのですが、「いのちの息吹」あるいは「生命の誕生」をイメージするような音楽でした。

――そこから具体的に音に落とし込むわけですね?

私は譜面から作るというよりも、湧き上がった音を譜面に落とし込んでいくタイプです。今回は頭に降りてきた音楽を、まずパソコンに打ち込みました。どの楽器がどこで鳴っているか、までをイメージできているので、楽器の編成なども含めて、すべて自分でパソコンに打ち込みます。いわゆる「プロトタイプ」を作る段階ですね。各楽器を一つひとつ重ねていきながら、大まかな構成を組み立て、それをさらに細かく構築して、最終的には譜面に起こします。今回はパソコンから奏でた音楽をデモ音源として加藤さんに聴いていただきました。

――そのとき、加藤監督の反応はいかがでしたか?

それが「素晴らしいです」としか言われなくて(笑)。細かい調整はありましたが、曲に対するNGは一切ありませんでした。最初に聴いた段階で、「この世界観にぴったりだ」「これはもう決まりだ」と思ってくださったのではないでしょうか。

メインショーで映し出される「数億年」の一コマ

――さまざまな楽曲がある中で、特に印象深い曲は?

サウンドトラックの5曲目にある「いのちの祝祭」ですね。これは生命の誕生から始まり、生物の進化を経て人類が誕生するまでを描いたシーンの楽曲です。数億年分の“いのち”の変遷を、わずか1分の映像で表現しているのですが、その進化のスピード感や躍動感を、場面構成も考えながら音楽で表現しなければなりません。

加藤さんからは「祝祭」というテーマをいただいていたのですが、それをどのように音楽で表現するか、いろいろ考えました。ただ、この曲で大切にしたかったのは、国籍や民族を問わず、世界中の人々が「祝祭」を感じられること。たとえば、日本のお祭りの音楽になってしまうと、日本的なイメージが強すぎてしまいます。なので、アフリカの打楽器やアジアの民族楽器、和太鼓などをいろいろな地域の楽器を取り入れながら、あえて国籍感を出さずに世界共通の「祝祭感」を出す工夫をしました。

コーラスも、多民族的なニュアンスが出るよう工夫しました。ヨーロッパともアジアとも決めつけられないような中間的な響きの声を使い、どこの国の音かがはっきりしない。けれども、聴いた人が自然と「祝祭」を感じられるように・・・。

――そういった普遍的な音作りというのは、やはり万博という場を意識して?

はい。万博には本当に世界中からさまざまな人が来られますし、宗教や文化的背景も多様です。その中で、誰もが入り込みやすい音楽にしたいと思いました。

人気キャラクター、ナナ・ビビと共に

――「 JOURNEY TO LIFE メインテーマについて。この曲に込めた思いとは?

メインテーマは、映像の最後のパートで流れます。ここでは、地球上で生命が誕生し、進化してきたというストーリーの集大成として、「この生命の歴史を見た上で、私たちはこれからどう生きていきのか?」という問いかけを行っています。

その問いに対して、優しく背中を押すような音楽でありたいと思いました。どんな国籍や世代の人が聴いても共感できて、作品の世界観に自然と入り込めるように。「JOURNEY TO LIFE」を観た方が、三菱未来館を出た後「明日がさらに輝くように」生きられるよう、その後押しを音楽で表現したかったのです。

このメインテーマ、制作に大変時間がかかりました! と言いたいところなのですが(笑)、実は制作のごく初期の段階で、最初にふっと浮かんできた曲でした。まさに「降ってきた」感覚でした。運命的なものを感じたというか、「これは神様が自分にくれた曲なのだ」と思えるくらい自然に出てきたメロディーでした。

イギリスのボーイ・ソプラノユニット「LIBERA」
(C) Libera Records

――そして、その曲を歌うのが LIBERA

最後に流れるのはメインテーマを基に作られた「Hymn to Life ~いのちの讃歌~ featuring LIBERA 『JOURNEY TO LIFE』version」です。
LIBERAは声変わり前の男の子たちで構成されたボーイズボーカルグループです。彼らの声は、本当にはかなくて尊い響きがあります。声変わりするとグループから卒業するので、活動期間も限られています。まさに、生命の一瞬のきらめきのような存在です。

今回の歌い手についてはさまざまな意見がありました。集客力や話題性を考えると有名アーティストを起用するという案もありました。でもこの『JOURNEY TO LIFE』という作品のメッセージ性を最も強く届けられるのは、LIBERAしかいないと思ったのです。

彼らの声には、宗教や国籍の壁を越える力がある。実際、世界中にファンがいて、どの国の人でも自然と受け入れられる。彼らがもつ“尊さ”こそが、このテーマにぴったりだと感じました。

レコーディングの一コマ。左から長谷川さん、村松さん、加藤さん (村松崇継 オフィシャルインスタグラム より)

――レコーディング時、加藤監督や長谷川さんの反応は?

一番感動されていたのは長谷川さんでした。録音を聴いたとき、ずっと涙を流されていたのを覚えています。加藤監督も言葉にならないほど感動されていて、「これは正解」とおっしゃってくださいました。

LIBERAのパートはイギリスで録音し、日本でミックスするという形だったのですが、歌声が乗ったときに「ああ、これで間違いなかった」と確信しました。三菱グループというワールドワイドな企業グループが掲げているピースフルなメッセージとも、この作品の音楽は非常に相性が良いと感じました。

迫力ある大画面のスクリーン。天井に向かって湾曲している

――音響の最終チェックで、映像と音楽が流れる様子は、いかがでしたか?

本当にすごかったです。まず、あのスクリーンがすごい。これまで見たことのないスクリーンで、映像の世界に吸い込まれるような没入感に驚きました。「あの映像に負けない音作りをしなければ」と。

私は映画音楽を普段から手がけていますが、あの映像との組み合わせは別次元でした。音響担当の方とも「これは、思い切りやってしまおう」と話し合い、全力で取り組みました。

現場では、チェックのためだけでなく、その後も何度も観てしまいました。4回以上は観たと思います。違う席に座って、どこでどう聴こえるのかを確かめながら、自分自身も楽しんでいました。

サウンドトラックのジャケット写真

――そして、「JOURNEY TO LIFE」のサウンドトラックがついに発売されます。

1970年大阪万博の三菱未来館でも、偉大な作曲家の先生が音楽を手がけてこられた歴史もあり、自分が三菱未来館の音楽を担当できたことは、本当にありがたく、名誉なことだと感じています。

この『JOURNEY TO LIFE』という作品が音楽としても後世に残るように、形にして届けたい。そういった思いもありましたので、発売が決まったと聞いたときは嬉しかったです。

――三菱未来館を訪れる前、あるいは訪れた後に聴くなど、楽しみ方は色々ですね。

そうですね。先にサウンドトラックで音楽の世界に触れてから未来館を訪れるのも良いですし、逆に観覧後にあの感動を思い出しながら自宅で聴くのも良いと思います。どちらでも、きっと作品の余韻に浸れるはずです。

ぜひCDでも音楽体験を

――最後に、これから三菱未来館に訪れる方々や、サウンドトラックを手にする方々に向けて、メッセージを。

三菱未来館の体験は、本当に特別なものです。私自身、最前列と最後列の両方で観覧しましたが、前の席で観ると、映像と音楽の没入感が桁違いでした。音楽に包まれる感覚というのはすごい! 映画館ともまた違って、身体ごと作品の中に入っていくような印象でした。万博会場、そしてCDを通じてより多くの方がこの音楽に触れ、三菱未来館、そして『JOURNEY TO LIFE』の魅力がより多くの人に届くことを願っています。

※2025年7月9日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。