三菱の歴史

2024.04.25

漫画「千年くすのき」彌太郎編

第8話 消耗戦

千年くすのき プロフィール

原作:成田 誠一(なりた・せいいち)
『マンスリーみつびし』冊子時代に連載していた歴史エッセイ『千年くすのき』著者。本連載はこのコラムの漫画化。

漫画原作:星井 博文(ほしい・ひろぶみ)
漫画原作者、漫画家。『まんがでわかる 伝え方が9割』(ダイヤモンド社)など経済から歴史ものまで著書多数。「なんでもマンガにしちゃう男」

@hoshiihirofumi(X、旧twitter)


漫画作画:上川 敦志(かみかわ・あつし)
漫画家。小学館「少年サンデー」などで活躍。同社の学習まんがシリーズでも著書多数。『小学館版 学習まんが人物館 スティーブ・ジョブズ』(小学館)など。実は女性。


題字:藤田 紅子(ふじた・こうし)
書道家。毎日書道会審査会員、南不乗発会、現日会副会長、高知現日会長、安芸全国書展審査会員。安芸全国高校生書展審査員。

彌太郎が、社員の憩いの場&迎賓のために造園!
「名石」が見所の清澄庭園へ行ってみよう

激しい海運競争に最終的に勝ち抜いた岩崎彌太郎。日本初のボーナスを支給したともいわれているが、社員の憩いの場&貴賓接待のために大名屋敷群を購入、庭園として造成し開園したのだからスケールが大きい。こんな社員思いの太っ腹な社長、いいなぁ・・・と思わず遠い目。

東京は江東区、清澄白河駅からすぐの場所にある『清澄庭園』。

都会のオアシスのようなこの場所は、江戸時代は豪商、紀伊國屋文左衛門の屋敷跡といわれており、下総国藩主の下屋敷だったこの地一帯約3万坪を彌太郎が買いとったのが1878年。2年後の1880年、回遊式林泉庭園として整備し『深川親睦園』を開園。二代目の彌之助は兄の遺志を継いで本格改修などを行いました。
関東大震災や東京大空襲の折には、都民の避難所として多くの命を救ったとも伝えられています。
そして彌太郎の息子、三代目の久彌の英断により、1924年に半分を東京市に寄付、『清澄庭園』として1932年に開園、1977年に残りの土地も寄付、1979年に東京都の名勝に指定されました。

清澄庭園の見どころのひとつが、石。彌太郎の好みで集められた全国の庭石が随所に配されて独特の景観をつくりだしています。石マニア(?)ならずとも、名石に注目して巡るととても面白いユニークな庭園だと思います。
それでは石巡り、行ってみよう!

こちらは「磯渡り」の飛石。一般的には水面を渡る飛石は「沢渡り」と呼ぶが、清澄庭園の場合、池の水際を渡っており、大ぶりの護岸石や玉石を敷きつめた周囲の様子は、荒磯を思わせるところから「磯渡り」と呼ばれているそうです。
この並びはとくに「大磯渡り」と呼ばれる力強い配石。大ぶりの紀州青石を大きくずらしてアクセントをつけているが、これは彌太郎自らが指導し施工したといわれています。こだわりの配置というわけですね。実際に歩いて渡れますが池に落ちないよう注意。

石を滝に見立てた「枯滝の石組」。約3mの見事な紀州青石を鏡石として立てて、前後左右に同じ青石を据えて滝組とし、手前には伊予青石を大小据えて水受石としている。大泉水の池の入り口から正面にあたる場所にあって、非常に迫力のあるものでした。庭園全体の構成のうえで、守護石として意図されたのではといわれているそうです。どの角度から見てもほれぼれするほど美しい。

佐渡赤玉石。佐渡ではすでに掘り尽くされ採掘不能となっており現在では大変貴重なものなのだとか。清澄庭園のこちらは、とくに色彩の優れた希有な名石とのこと。赤いのはわずかに含まれる鉄分の色なんだそう。力強いオーラにあふれていて思わず拝みたくなります。

伊豆川奈石。しゃくれたような大きなくぼみは、川奈石の特徴。松の根元によく据えられているそうで、伊豆の川奈といえば海に近い場所なのか、波を思わせる鋭角で、なんだかかっこいい!

生駒石。きめ細かい石肌が持ち味。裏側に矢の跡が残っているそうで歴史を感じさせる石のひとつです。

真鶴石。水門を目隠しするための景石だそう。表面のぼつぼつした細かい斑点が特徴。獅子をはじめ、いろんな生き物にも見える個性的なフォルムが面白い。

武州三波青石。松と池の眺めのバランスは見事なもの。三波青石は実は三色あり、青緑、青白黄三色、チョコレート色があるとのことで、もうマニアックすぎてよく分からない・・・笑。これはチョコレート色の石だそうです。

紀州青石。青緑色と白い筋が特徴だそう。しっかりした石の層が出た貴重な名石とのこと。美しいですね。

橋だってもちろん石!こちらは仙台石で、稲井石または井内石ともいう。粘板岩の石橋で幅も厚みもあるので安心して渡れます。

庭園のいわれや歴史の説明も石!大きさや形は江戸城の石垣石だそう。本小松の大材が安定して据えられています。

亀?すっぽん?が甲羅干しするのも石の上。その石も名石だと思うよ亀くん。

石の庭園、といっても過言ではない名石の数々、この何倍もあります。鉱物や石に興味のある方もそうでもない方も楽しめる貴重な場所だと思います。
彌太郎社長が社員と来賓のために手に入れてから今年で146年。今も人々を癒やす憩いの場として存在し続けています。

清澄庭園

東京都江東区清澄3-3-9
午前9時~午後5時(入園は午後4時30分まで)休園日/年末年始

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