三菱のアート

2025.11.20

静嘉堂@丸の内の企画展、後期展示開催中!

昭和の重文建築で見る
「静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」

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10月4日から開催されている静嘉堂文庫美術館の展覧会「修理後大公開! 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」。12月21日までの会期中、前期・後期で多くの展示品が入れ替わるため、2度は足を運びたい企画展だ。静嘉堂の美術コレクションの核となる岩崎彌之助・小彌太親子が明治から昭和にかけて蒐集した美術品のなかから、すでに国宝や重要文化財として国から指定されているもの、そして将来指定されてもおかしくない逸品をずらりと取り揃えている。また本展では、博覧会やそれに準ずる海外の展覧会に出品協力してきた美術品を多く展示。大阪・関西万博が盛況だった2025年、博覧会への静嘉堂と彌之助・小彌太親子のかかわりにも注目したい。
昭和の建造物として初めて重要文化財に指定された、明治生命館内にある静嘉堂@丸の内で開催されている本展の後期展示の作品を中心に、博覧会等の出品作品を案内する。

日本の美術品と博覧会のマリアージュは1895年の内国勧業博覧会から

1895(明治28)年4月1日から4か月にわたり、京都で「第四回内国勧業博覧会」が開催された。これは平安遷都1100年を記念した事業で、同時期に平安神宮が創建されて市電も開通するなど、観光都市・京都の基礎が誕生した。
博覧会とは、各地の名産、産業、古物奇品などを世界に向けて紹介する産物大会だ。世界に開かれた明治時代の日本は、外国の文化や品々を珍重し、国内でつくられたものを軽んじる傾向にあった。美術品がどんどん海外流出するのを憂いた岩崎親子は、それら日本の宝を国内にとどめることを志として美術品を蒐集。同時代を生きる美術家たちの支援にも積極的で、第四回内国勧業博覧会では東西の日本画家数名にそれぞれ六曲一双屛風を描かせるという目玉企画を資金面でバックアップ。制作された11件のうち、現在8件が静嘉堂の所蔵となっている。

第四回内国勧業博覧会開催前年に没した京都府知事の中井弘の企画を、懇意にしていた彌之助が資金面でバックアップした、東西の日本画家による屛風の競演。そのうちのひとつ、野口幽谷の六曲一双屛風「菊鶏図屛風」は前期に右隻(写真)を、後期に左隻を展示。

1900年パリ万博の日本古美術展覧会には武具で参加

1900(明治33)年に開催されたのが「第五回パリ万国博覧会」。その日本館で開催されたのが古美術展覧会だった。すでにヨーロッパの美術界では浮世絵をきっかけにジャポニスム旋風が起こっていたが、このパリ万博では硯箱や印籠といった漆工芸品や、兜や刀剣、刀装具などの武具が多く出品され、日本古美術の工芸技術の高さを誇示した。彌之助もコレクションから武具計17件を出品している。

石黒是美「花鳥図大小鐔・三所物」
江戸時代・19世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示

刀剣は本体だけでなく、鞘や鐔、そして外装に付ける金具の一種である「三所物」に施された工芸も見どころ。本作は、花鳥を題材として絢爛な作風で知られる石黒派屈指の名工、是美の代表作といわれる。

後期展示では“オール日英博覧会出品作”の展示室も!

1910(明治43)年の「日英博覧会」は二国間のみの博覧会だったが、会場の英国ホワイトシティには社寺建築や日本庭園がつくられるという大規模なもの。日本から33点の国宝を含む古美術品1138点と、同時代の美術品263点が展示された。小彌太はこの博覧会に、浮世絵や琳派など8件の優品を送り出している。11月11日から始まった本展の後期展示では、Gallery1での展示がすべて日英博覧会出品作に変わっている。

菊池容斎「阿房宮図」
江戸時代・19世紀前半 (公財)静嘉堂蔵 後期展示

幕末・明治に活躍した日本画家の菊池容斎は、近代歴史画の先駆者。本品は中国の秦の始皇帝の巨大宮殿が焼け落ちる様が描かれる。楼閣の細密描写や燃え盛る炎の赤など鮮やかな色味も見どころ。日英博覧会出品作で、静嘉堂文庫美術館が推す“未来の国宝”だ。

菱川師宣落款「美人若衆図」
江戸時代・17世紀後半 (公財)静嘉堂蔵 後期展示

“浮世絵の祖”といわれ、東京国立博物館が所蔵する「見返り美人図」で知られている菱川師宣。右手の甲で口元を隠し、左手で着物の褄をとるという師宣美人の定番ポーズをとる本作の女性は、「見返り美人図」の女性と同じく当時流行の髪型で、浮世絵が当世を写すものだということをよく示している。日英博覧会出品作。

静嘉堂@丸の内は、ホワイエを囲むコの字型に展示室が4つ並ぶ。右手のGallery1から順に巡っていくと、最後にGallery3の奥の展示室に行き着く。このGallary4は、展覧会の主旨をちょっとひねったような企画展示であることが多いが、今回の展覧会「静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」の後期展示では、「静嘉堂の国宝―宋元の文物より」と題して出品される国宝全3点が集合。静嘉堂の国宝のトップランナーである茶碗「曜変天目(稲葉天目)」、南宋の宮廷画家・馬遠の作と伝わる「風雨山水図」、そして中国元時代を代表する文人・趙孟頫の書簡が楽しめる。

国宝「曜変天目(稲葉天目)」

南宋時代・12~13世紀 (公財)静嘉堂蔵 通期展示

国宝 伝 馬遠「風雨山水図」

南宋時代・13世紀 (公財)静嘉堂蔵 後期展示

国宝 趙孟頫「与中峰明本尺牘」
元時代・14世紀 (公財)静嘉堂蔵 後期展示

海外に日本美術の素晴らしさを披露することにも熱心だった、彌之助と小彌太。優れた美術品を海外流出や散逸から守り、適切な環境で保管し、公開する機会をつくる――そんな思いで蒐集した美術品の数々を、丸の内の静嘉堂文庫美術館で楽しんでほしい。

美術館データ

静嘉堂文庫

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念

「修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」

[Special Exhibition to Mark the Osaka/Kansai Expo 2025]
Newly Restored Masterpieces:
A Fresh Look at Seikado’s
Important Cultural Properties and,
National Treasures of the Present and Future!


会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内/東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1階)


会期:2025年10月4日(土)~12月21日(日)
前期11月9日(日)まで 後期11月11日(火)から
※前・後期でほぼすべての作品を展示替え
会期中休館日:月曜日(ただし11月24日は開館)、11月25日(火)


開館時間:10時~17時
第4水曜日は20時閉館、12月19日(金)と12月20日(土)は19時閉館、いずれも入館は閉館の30分前まで


入館料:一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
※毎週木曜日はトークフリーデー(気兼ねなく会話をしながら鑑賞できます)


【関連イベント/講演会「絵画修理の現在(いま)」】

日時:11月30日(日)14時~16時
基調講演:綿田稔氏(文化庁主任文化財調査官)
討論:下田純平氏、宇和川史彦氏(ともに株式会社半田九清堂)
司会:吉田恵理(本展担当学芸員)
会場:明治安田ヴィレッジ「明治安田ホール」(東京都千代田区丸の内2-1-1 4階)
参加費:無料(ただし要本展入館券)、要予約 *チケットは完売いたしました


【担当学芸員によるスライドトーク】

日時: 11月22日(土)、12月7日(日)、いずれも11時~と14時30分~の2回
会場:明治安田ヴィレッジ「明治安田ギャラリー」(東京都千代田区丸の内2-1-1 1階)
参加費:無料(ただし要当日入館券)
定員:各回40名


問い合わせ:☏ 050・5541・8600(ハローダイヤル)

ホームページ https://www.seikado.or.jp/

X(旧Twitter) @seikadomuseum

instagram @seikado_bunko_artmuseum

割引クーポン

一般入館料200円割引券

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※2名様まで1回限り有効
※他の割引と併用不可

<会期中の2025年12月21日(日)まで>

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