三菱のスポーツ

2024.05.16

明治安田

「三菱ボート」の誇りを胸に
水上を駆け抜けるクルーを応援しよう!!

三菱のブランドを掲げ、スポーツにいそしむアスリート達を紹介する本連載。今回は埼玉県戸田市戸田ボートコースで活動する明治安田生命ボート部。日本のボート界を代表する名門の挑戦をレポートする。

メインイメージ

日本ボート界をけん引する名門クラブ

明治安田生命ボート部は、昭和36年4月(1961年)創部。同社のボート経験者が、有志を募って始めた週末ボート同好会を前身として誕生した。創部にあたって掲げた使命は「強いチームとなること」「社内におけるモラルアップに貢献すること」。活動を続けて60年余り、歴代スタッフと選手の努力により、今や男女ともに数々の日本一を達成し、日本ボート界に強烈な存在感を示す名門クラブのひとつだ。

入り口には数々の栄誉を勝ち取った記録が多く残されている

明治安田生命ボート部を語るうえで欠かせないのは、三菱グループのボート愛好家でつくる「三菱ボートクラブ」への貢献。現在、三菱ボートクラブの会長を同社の根岸 秋男取締役会長が務めており、さらに2024年度はボート部部長の村上 司氏が、理事長に就任している。
今年で50周年を迎える三菱ボートクラブは、昨年10月、新型コロナウイルス拡大のために中断していた伝統ある「全(オール)三菱レガッタ」を4年ぶりに開催。当日はボートを愛する450名ものメンバーが埼玉県戸田市戸田ボートコースに結集し、ボート競技の素晴らしさを改めて実感したという。

埼玉県戸田市戸田ボートコースにある同クラブの艇庫を尋ねると、ボート部は午前の練習中。選手達の操るボートが広い水面を滑るように走る姿は、遠目では優雅にさえ見える。

迎えてくれたのはコーチを務める上田 佳奈子さん。「3月末の『お花見レガッタ』を皮切りに、今シーズンが始まります。その後『中日本レガッタ』を経て、5月25日~26日に『全日本社会人ローイング選手権大会』(埼玉県戸田市戸田ボートコース)、いわゆる実業団日本一を争うレースで、優勝することを一つの目標にしています」。
6月20日〜23日には、年間で最も大切な試合「全日本ローイング選手権大会」(東京都江東区・海の森水上競技場)と、シーズン開始からレースが目白押し。そしてオリンピックイヤーの今年、2名の女子選手がパリ五輪出場の可能性を残している。クラブとして期するものの多いシーズンだ。

速くボートを走らせる秘訣は「PDCA」!

ここからは注目選手のインタビュー。男子勢は、主将の久保 如竹(ゆきたけ)選手と、橋本 太一選手に、今シーズンの目標やボート競技の魅力について伺った。

インタビュアー写真

主将
久保 如竹  YUKITAKE KUBO

2020年入社
出身校:保谷高校 中央大学
身長:183cm
2023年の主な戦績:
全日本ローイング選手権大会6位(エイト)
全日本社会人ローイング選手権大会 優勝(舵手なしフォア)

インタビュアー写真

橋本 太一  TAICHI HASHIMOTO

2021年入社
出身校:土佐高校 立教大学
身長:176cm
2023年の主な戦績:
全日本ローイング選手権大会6位(エイト)
全日本社会人ローイング選手権大会 優勝(舵手なしフォア)    

――今はちょうど合宿中ですね?

久保:3月末に、シーズンの開幕を告げる「お花見レガッタ」が埼玉県戸田市戸田ボートコースで開催されるので、そこに向けて1週間の合宿を組んでいます。シーズン中は月1、2回大会があるので、その前には必ず合宿がありますね。


――開幕を前に今シーズンの目標を教えてください。

久保:最大の目標は、6月に開催される全日本ローイング選手権大会の「男子エイト」で優勝することですね。漕ぐ選手8人+舵を取る選手1人の9人乗りで競うものですが、それがボート競技の花形種目になります。女子は、4人乗りの「クォドルプル」で全日本ローイング選手権大会3連覇中なのですが、男子は10年優勝から遠ざかっているので、今年こそは何としても勝ちたいですね。


橋本:今年は日本のB代表に選出されたので、国際大会に派遣されたら明治安田のブランド力を上げるため、しっかり結果を残すというのがまず一つです。最大の目標は久保さんと同じ、全日本ローイング選手権大会優勝です。僕自身、昨年かなりくやしい思いをしたので「今年こそは」という気持ちが強いです。


――くやしい思いをされたというのは?

橋本:久保さんと出場したエイトで、レース後半にオールを抜き損ねて、ボートで言う「腹を切る」というミスをしてしまいました。その結果船は大きく失速し、僕は水に落ちました。とくにエイトはスピードが出るため、操作を誤ると凄い力でハンドルに押され、船上に踏みとどまれないんです。自分の中で課題だったことがミスオールにつながってしまい、昨シーズンは苦しみましたが、粘り強く試行錯誤して改善してきたので、6月は自信を持って挑みたい。


――ボート競技には、とても難しい技術が必要に見えます。

久保:そうですね。初めて見た方は驚かれますが、競技用ボートは非常に幅が狭くて細いため、バランスを取りながら普通にオールを漕ぐだけでも難しいです。たとえばエイトなら、8人の選手がオールを1本ずつ持ち、右側と左側を4人ずつで漕ぎますが、身長も体重も体の動きも違うため、息をそろえてスピードを出していくのは至難の業と言っていいですね。


――文字通り全員が一つにならなければ進まないのですね。

久保:だからこそ、修正に修正を重ねて試行錯誤しながら練習を重ねていくうちに息が合い、全員が一つになって「走った」と感じるときがあり、それが本当に気持ちいいと言うか快感ですね。一体感が生まれた瞬間がこの競技の一番楽しいところ。醍醐味だと思います。

橋本:動きをシンクロさせなければいけないので、2人より4人、8人と人数が増えるほど難しくなりますが、そのなかで動きと呼吸が合ったときのスピード感は格別ですね。レースでは2,000mを漕ぎますが、ゴール後の疲労感はトライアスロン並みと言われます。でもそのキツさを1人ではなく、仲間と共に分かち合い、がんばって乗り越えていくというところにも楽しさを感じます。


――明治安田生命ボート部の強みは何だと思われますか?

久保:「PDCAサイクルを回せる」ところでしょうか。ビジネス用語ですがボートにも当てはまります。例えば、全日本ローイング選手権大会優勝という目標に向かって練習メニューを考え、実行し、分析して課題を見つけ、さらに実行するというサイクルを回す場合、上から言われてではなく、選手一人一人が考えて実行できる。自分の感覚を言語化して共有し、ほかの人の意見にも耳を傾けながら、全員が主体的にサイクルを回す力を身につけているところが、ほかのチームにはない強みなのかなと思います。


橋本:僕達は練習前後に必ずミーティングをして、今日は何を意識して何を目標に取り組むか、練習後は何が変わったかを必ず共有します。一緒に船を進めるためには、お互いの気持ちや考え方を知ることが欠かせません。


――これからボート競技を観戦する人のために、見所を教えてください。

久保:この埼玉県戸田市戸田ボートコースでレースがあるときは、スタートから1,800m付近で観る方が多いと思います。レース終盤で各艇力が残っていない状況からさらに力を絞り切り、死力を尽くしてラストスパートをかけます。その極限状態の選手達の、鬼気迫る表情に注目してもらいたいですね(笑)。そのときはたくさん応援してください。


――この記事の読者の皆さんに、メッセージをお願いします。

久保:今年こそは全日本ローイング選手権大会で男女優勝を達成するべく、一丸となってがんばっていますので、応援よろしくお願いします。また、この機会に明治安田生命だけでなく、三菱グループのボートにも興味を持って欲しいと思います。今年の「全(オール)三菱レガッタ」は10月27日に予定されているので、三菱グループの方には1人でも多く足を運んでいただき、ボートの魅力に触れてください!

大切なのは「楽しむこと」「できる準備はすべてすること」

女子からは、パリ五輪出場権獲得に挑む主将の木野田 沙帆子選手と、廣内 映美選手が質問に答えてくれた。

インタビュアー写真

主将
木野田 沙帆子  SAHOKO KINOTA

2018年入社
出身校:青森高校 早稲田大学
身長:163cm
2023年の主な戦績:
全日本ローイング選手権大会 優勝(クォドルプル)
アジア競技大会 準優勝(舵手なしフォア・エイト)

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廣内 映美  EMI HIROUCHI

2019年入社
出身校:関西大学第一高校 大阪市立大学
身長:167cm
2023年の主な戦績:
全日本ローイング選手権大会 優勝(クォドルプル)
アジア競技大会 準優勝(エイト)

――おふたりの今シーズンの大きな目標の一つがパリ五輪だそうですね。

廣内:私は「軽量級ダブルスカル」という種目で、4月に行われるアジア・オセアニア大陸予選に出場して1位になり、かつ日本クルーのなかで上位2クルーに入ればパリ五輪への出場が叶います。五輪への挑戦は最初で最後になるかもしれないので、大きな目標としています。

※廣内選手は、取材後アジア・オセアニア大陸予選で1位となり、軽量級ダブルスカルのパリ五輪2024代表に内定しました。


木野田:私は「フォア」という種目で出場を目指しています。4月25日の国内評価レースで標準タイムが出れば世界最終予選に派遣され、上位2カ国に入ると出場が決まります。過去に世界最終予選で権利を獲得したことがない種目ですが、最後まで挑戦したいですね。クラブの目標としては、全日本ローイング選手権大会で「クォドルプル」の四連覇をぜひ達成したいです。


――ボート競技を続けるうえで大切にしていることはありますか?

木野田:私は楽しむことを第一にしています。スピードにも気持ちにも日々波はありますが、とくに落ち込んだときは、真っ先に「それをしていて楽しい?」と自分に問いかけ、どうしたら楽しくできるかに考えを巡らせることを常に意識しています。また、私は競技者のなかでは身長が低い方なので、それをカバーするために、「長く強く押す」ことを課題として取り組んでいます。


――ボート競技では体格差も大きい?

木野田:背が高いとリーチも長いので、自然とオールが水中にある時間も長くなり、長く漕げるのですが、背の低い私はその分をスタミナやパワーで補っていくことが必要です。それと、水中をできるだけ長く押す技術を磨くことは、体格に関係なく大切ですね。


廣内:私は目標から逆算することを念頭に置いています。日常生活でも、いい練習のための睡眠や、減量しながらパフォーマンスを上げるため食事に気を使います。練習でも体調に関わらずその日のベストは出しきります。その積み重ねが、スタートラインに立ったときに、「あとはやるだけ」という自信につながるからです。半面、神経質で頑固なところが課題で、つい「これボートに必要なのかな?」と損得感情で考えたり(笑)。もっといろいろなことを吸収し、支えてくださる方の声も聞きながら成長したいです。


――競技を続けてきて良かったと思うことは?

木野田:人に出会えたことです。高校から社会人まで、ボートを通じてすごく気の合う仲間に出会えたのは一つの財産です。あとは、単純に相当苦しいことを毎日していて(笑)それが報われるのが唯一レースなので、レースで勝ったときの達成感が本当に大きい。私にとっては、ボートと同じぐらいの熱量を注げる競技はほかにないと思っています。


廣内:直近でいうと、3年連続で日本代表に選ばれたときや、全日本ローイング選手権大会で連覇したときに会社の人達やチームメイトがとても喜んでくれたのを見て「この人達に支えられて、のびのびとボートをやらせてもらっているんだな」と感じたことです。明治安田生命ボート部のバックグラウンドも含めて大きな力を感じましたし、それを受けてスタートラインに立てたことを誇りに思いました。


――ボート競技の見どころを教えてください。

木野田:ボートは「究極のチームスポーツ」と言われ、選手のシンクロ率が高いほどスピードが出ます。トップクルーは一糸乱れぬ動きで1分間に45〜50回転も漕ぐので、ものすごい熱量と共に「美しさ」も伝わる競技ではないかなと。だから「どの船のシンクロ率が高いか」という目線で見てもらうのもいいと思います。


廣内:やはりレースで、タイムスポーツでもあるので、ゴール間際の白熱した競り合いは興奮すると思います。面白いレースだったら本当に数センチの差で勝負が決まるときもあります。そこにも注目してください。


木野田:あとは自分でボートに乗るのも面白いですよ。私達の艇庫の並びには三菱の艇庫があって、一般向けに設計された4人乗りボートの試乗ができます。三菱グループの社員の皆様もぜひ乗りに来て、ボートの楽しさを知ってください!


実りある2024年シーズンを目指して

明治安田生命ボート部が常に掲げている大きな目標は3つある。
「まずは全日本ローイング選手権大会での男女優勝。2つ目が秋の国体での優勝。そして、日本代表選手をコンスタントに輩出していくこと。この3つを軸に取り組んでいます。パリ五輪への派遣が決まれば、当クラブとして2012年のロンドン五輪以来となるので、ぜひチャンスを掴んでほしいですね」と上田コーチ。
大きな目標に向かって本格始動した、明治安田生命ボート部の2024年シーズン。皆さんもぜひ埼玉県戸田市戸田ボートコースに足を運んで、彼らの熱くひたむきな戦いをサポートして欲しい。

〈明治安田生命ボート部公式ホームページ〉

明治安田生命ボート部 (meijiyasuda-boat.jp)

〈2024年シーズン主な大会日程〉
5月19日~21日 オリンピック・パラリンピック最終予選(スイス・ルツェルン)
5月25日~26日 全日本社会人ローイング選手権大会(埼玉県戸田市戸田ボートコース)
6月20日~23日 全日本ローイング選手権大会(東京都江東区海の森水上競技場)
7月27日~8月4日 オリンピック(フランス・パリ)
9月7日~8日 オックスフォード盾レガッタ(埼玉県戸田市戸田ボートコース)
9月14日~17日 国民スポーツ大会ローイング競技(佐賀県佐賀市富士しゃくなげ水上競技場)
10月27日 全三菱レガッタ(埼玉県戸田市戸田ボートコース)

文/鈴木恵美子
写真/谷本結利

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