各社のトピックス

2024.05.23

三菱商事

Mitsubishi Corporation

三菱商事が三菱自動車工業等のグループ企業と協業し、
電動車のスマート充電サービスの実証事業を開始

※アプリの画面はイメージとなります。

三菱商事は、三菱自動車工業(以下、三菱自動車)、MCリテールエナジー、Kaluza Ltd.(カルーザ、以下、Kaluza)と協業し、国内初となる、電動車(EV)のコネクティッド技術を活用したスマート充電サービスの商用化に向けた実証事業を開始した。このスマート充電サービスは、三菱自動車の「アウトランダー」(PHEVモデル)を保有するユーザーを対象に、電力市場価格等が安い時間帯に充電を自動で実施し、充電制御を最適化するサービス。

「EVをお持ちの方はご家庭で充電をする機会が多いと思います。このサービスでは、アプリをスマートフォンにインストールいただき、いつまでに充電すればいいかのみをご指定いただければ、Kaluzaが提供するEV充電制御プラットフォームから三菱自動車のコネクティッドシステムを通じて、遠隔で車両を制御することで、電力の安価な時間帯に充電される仕組みのため、充電コストを節約することができます」と語るのは、実証に携わる、電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 次長の中野 晃太さん。

三菱商事は、CO2削減と社会全体のエネルギーコスト低減を目指し、2019年に英国の電力小売事業者OVO Group(オボ・グループ)に出資。KaluzaはOVOのグループ企業だ。当時からKaluzaの開発は始まっており、日本でも展開することを視野に入れていたという。また、電力小売の全面自由化に先立ち2015年に新電力MCリテールエナジーを設立。同社は経済産業省公募のEVダイナミックプライシング実証を3ヵ年に亘りリードした他、業界に先駆けたEV向けプランを開発する等、先駆的な取り組みを積み重ねてきた。そしてEVダイナミックプライシング実証の流れを汲む今回のスマート充電サービスは2024年度中頃までに実証実験を終え、2024年度後半には商用化を予定している。

需給バランスの安定化が急務に、4社が同じ課題意識のもと集結

三菱商事、三菱自動車、MCリテールエナジー、Kaluzaが協業することになったのは、4社ともEVの普及を見据えるなかで、充電の時間が夕方など同じタイミングに起こるという共通の課題意識を持っていたことがきっかけとなった。電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 課長の城戸 健太さんは語る。

「近年、発電側では再エネの導入量が増え、比較的不安定な電源の供給量も増えてきていることに加え、需要側でもEVの普及によりユーザーの充電時間が重なると需要が一気に跳ね上がる可能性があるなど、需給バランスをとることが難しい時代になってきています。電力の需給バランスがくずれると大規模停電などにもつながる可能性があるため、需給バランスの安定化に向けた取り組みが今後ますます求められます。こうした状況のなかで、EVの充電の最適化は重要な課題となっていました。ただし、充電を最適化するために、お客さまが自ら充電器のプラグイン・アウトを行い、充電時間をずらすのは手間がかかります。一般的には、充電の制御を遠隔や自動で行うには、通信機能が付いたスマート充電器などを購入しなければなりません。ですが、このスマート充電サービスをご利用いただければ、お客さまは充電完了時間を指定し充電器をプラグインするだけで、手間なくスマート充電器の購入コストもかからず、お得に電気を使えるというメリットがあります」(城戸さん)

三菱自動車はコネクティッドシステム技術の提供、MCリテールエナジーはEV向けの電力プランの開発、Kaluzaはプラットフォーム技術の提供、三菱商事はプロジェクトのコーディネートとそれぞれの役割を担い、開発にあたった。

「三菱自動車では、世界初の量産EV、PHEVの発売を開始した当初から電動車を活用したエネルギーマネジメントの分野に取り組んできました。今回の実証では、コネクティッド機能を通じて取得する車両データを活用して充電を最適化し、お客様の充電コスト低減とCO2排出量低減に貢献することを目指しています。“With Partners”の方針のもと、パートナー企業と連携した新たなビジネス開発に今後も取り組んでまいります。」(三菱自動車・執行役員 モビリティビジネス本部長・岩本 和明さん)

「今回の実証はこれまでのMCリテールエナジーの知見・経験が最大限に活きるものだと認識しております。MCリテールエナジーは、経済産業省公募の『ダイナミックプライシングによるEVの充電シフト実証事業』を主幹事として3ヵ年に亘り推進した知見、および他社に先駆けたEV向けメニューの開発力を活かし、これまでにない充電技術を活用してお手軽に電気料金を低減する新たな充電体験、新しい価値を提供して参ります」(MCリテールエナジー 代表取締役社長・田中 浩平さん)

「革新的なパートナーと協業し、日本における先駆者としてEVスマート充電のサービスを展開できることをうれしく思います。EVの普及が進むにつれて、“スマート充電”は一層重要性を増しています。Kaluzaは日本のパートナーと協力し、魅力的なEVサービスを提供し、ネットゼロ社会の実現に貢献します」(Kaluza CEO・Melissa Gander(メリッサ・ガンダー)さん)

今後はパートナリング拡大を目指し、必要不可欠なサービスに

コーディネート業務に携わった、電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 課長の井岡 祐文さんは、各社の強みを発揮してもらえるよう、円滑なコミュニケーションを心がけた。

「プロジェクトの推進にあたっては、技術メンバーとビジネス開発メンバーを各社からアサインし、定例の会議を密に行い、各社の目線を合わせることに注力しました。英国企業のKaluzaは、走りながらニーズを聞き開発を推し進めるアジャイルな手法をとっており、日系企業との文化の違い含め、学ぶところが多々ありました。結果として異業種の横断的なパートナリングにより各社の技術が結集し、これまでにない利便性、環境性、経済性の高い顧客体験を生み出すことができたと思います」(井岡さん)

三菱グループが先陣を切って挑み、商用化開始目前となったこのスマート充電サービス。中野さんは「いずれこのようなスマート充電サービスは、車両装備のように、EVとしてなくてはならない位置づけになるのではないか」とみている。そのうえで、今後の展開について次のように述べる。

「三菱商事の電力事業は、発電から販売まで発販一体のバリューチェーン構築を目指しています。三菱商事が蓄積してきた知見やパートナーとの関係を存分に発揮し、新たな価値を創造していきたい。このサービスはその一端を担うものだと考えています。Kaluzaは、すでに2023年からOVOとともに英国でスマート充電サービスを提供しており、これまで770万ポンド以上相当(約15億円)の電気代を節約。403トンもの二酸化炭素排出量削減に寄与しています。日本でも同様のお客さまの利便性向上と、コストおよびCO2排出削減に貢献できると見ています。今後、自動車会社、電力の小売事業者などパートナリングを広げ、サービスを拡大し、カーボンニュートラル社会実現へ貢献していきたいと考えています」(中野さん)

INTERVIEWEE

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中野 晃太  KOTA NAKANO

電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 次長

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城戸 健太  KENTA KIDO

電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 課長

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鳥山 廣樹  HIROKI TORIYAMA

電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 課長

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井岡 祐文  MASAFUMI IOKA

電力ソリューショングループ ユーティリティーリテイル本部 電力サービス部 課長

三菱商事株式会社

東京都千代田区丸の内2-3-1
1954年創立。地球環境エネルギー、マテリアルソリューション、金属資源、社会インフラ、モビリティ、食品産業、S.L.C.、電力ソリューションの8グループ体制で、幅広い産業を事業領域として多角的なビジネスを展開している。

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